馬の文献：基節骨骨折（Brunisholz et al. 2015）
文献 - 2016年03月18日 (金)
「競走に使われていない馬における基節骨不完全骨折のX線的およびCT画像的構造」
Brunisholz HP, Hagen R, Furst AE, Kuemmerle JM. Radiographic and Computed Tomographic Configuration of Incomplete Proximal Fractures of the Proximal Phalanx in Horses Not Used for Racing. Vet Surg. 2015; 44(7): 809-815.
この症例研究では、乗用馬の基節骨（Proximal phalanx: First phalanx: Pastern bone）の骨折の病態を解明するため、2008～2013年にかけて、競走に使われていない24頭の馬に発症した基節骨の不完全骨折（Incomplete fractures）の、X線的構造（Radiographic configuration）およびCT画像的構造（Computed tomographic configuration）の解析が行われました。
結果としては、基節骨の不完全骨折のうち、92%は正中矢状面（Mid-sagittal plane）に生じて、近位遠位方向の長さは平均13mmであり、背掌側または背底側の両皮質骨に達する骨折（Bicortical fracture）ではない場合が多かったことが示されました。また、54%の症例においては、軟骨下骨に二つの明瞭な骨折線が平行に走る所見（Distinct fracture pattern with 2 subchondral lines running parallel）が認められました。このため、非競走馬の基節骨に生じる不完全骨折では、その構造に有意な多様性（Significant variation）が見られることが分かり、CT検査等の診断手法によって、三次元的に骨折構造を把握することが重要であると考えられました。
この研究では、基節骨の不完全骨折のうち、前肢の骨折のほうが後肢に比べて、より背側に生じる傾向にあり、非常に特異的なデータであると言えます。このような違いが見られた要因については、明確には結論付けられていませんが、24頭の症例馬の殆どは障害飛越（Show jumping）または馬場馬術（Dressage）に用いられていた事から、側方方向への動きや軸性捻転（Collateral motion and axial rotation）の度合いが、前肢と後肢では異なり、その事が、骨折の形状に差異をもたらしたと考察されています。
この研究では、基節骨の不完全骨折のうち、X線検査にて骨折の診断が下されたのは26%のケースにとどまっていました。しかし、65%の症例においては、不明瞭な軟骨下骨の透過像（Ill-defined subchondral lucencies）が、矢状溝（Sagittal groove）の箇所に見られました。このため、基節骨の不完全骨折におけるX線検査では、骨折線の発見が困難な症例が多いものの、前駆徴候（Prodromal signs）を確認できる場合はあると考察されています。
この研究では、基節骨不完全骨折を呈した24頭の非競走馬の平均年齢は9.5歳であり、跛行の経過の長さは8.7週に及んでいました。また、前肢の骨折は全体の59%であり、競走馬の基節骨不完全骨折においては、75～81%を前肢が占めるのに比較して（Smith et al. EVJ. 2013;46:81, Holcombe et al. JAVMA. 1995;206:1195）、やや低い傾向にありました。
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この症例研究では、乗用馬の基節骨（Proximal phalanx: First phalanx: Pastern bone）の骨折の病態を解明するため、2008～2013年にかけて、競走に使われていない24頭の馬に発症した基節骨の不完全骨折（Incomplete fractures）の、X線的構造（Radiographic configuration）およびCT画像的構造（Computed tomographic configuration）の解析が行われました。
結果としては、基節骨の不完全骨折のうち、92%は正中矢状面（Mid-sagittal plane）に生じて、近位遠位方向の長さは平均13mmであり、背掌側または背底側の両皮質骨に達する骨折（Bicortical fracture）ではない場合が多かったことが示されました。また、54%の症例においては、軟骨下骨に二つの明瞭な骨折線が平行に走る所見（Distinct fracture pattern with 2 subchondral lines running parallel）が認められました。このため、非競走馬の基節骨に生じる不完全骨折では、その構造に有意な多様性（Significant variation）が見られることが分かり、CT検査等の診断手法によって、三次元的に骨折構造を把握することが重要であると考えられました。
この研究では、基節骨の不完全骨折のうち、前肢の骨折のほうが後肢に比べて、より背側に生じる傾向にあり、非常に特異的なデータであると言えます。このような違いが見られた要因については、明確には結論付けられていませんが、24頭の症例馬の殆どは障害飛越（Show jumping）または馬場馬術（Dressage）に用いられていた事から、側方方向への動きや軸性捻転（Collateral motion and axial rotation）の度合いが、前肢と後肢では異なり、その事が、骨折の形状に差異をもたらしたと考察されています。
この研究では、基節骨の不完全骨折のうち、X線検査にて骨折の診断が下されたのは26%のケースにとどまっていました。しかし、65%の症例においては、不明瞭な軟骨下骨の透過像（Ill-defined subchondral lucencies）が、矢状溝（Sagittal groove）の箇所に見られました。このため、基節骨の不完全骨折におけるX線検査では、骨折線の発見が困難な症例が多いものの、前駆徴候（Prodromal signs）を確認できる場合はあると考察されています。
この研究では、基節骨不完全骨折を呈した24頭の非競走馬の平均年齢は9.5歳であり、跛行の経過の長さは8.7週に及んでいました。また、前肢の骨折は全体の59%であり、競走馬の基節骨不完全骨折においては、75～81%を前肢が占めるのに比較して（Smith et al. EVJ. 2013;46:81, Holcombe et al. JAVMA. 1995;206:1195）、やや低い傾向にありました。
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