馬の文献:管骨骨折(Richardson. 1984)
文献 - 2016年03月21日 (月)
「馬における第三中足骨の内側顆状突起骨折」
Richardson DW. Medial condylar fractures of the third metatarsal bone in horses. J Am Vet Med Assoc. 1984; 185(7): 761-765.
この症例論文では、馬の第三中足骨(Third metatarsal bone)の内側顆状突起骨折(Medial condylar fracture)に対する外科的療法による治療効果を評価するため、1973~1983年にかけて第三中足骨の内側顆状突起骨折を呈した15頭の患馬の、医療記録(Medical records)の解析が行われました。
結果としては、15頭の第三中足骨の内側顆状突起骨折の患馬のうち、螺子固定術(Lag-screw fixation)が応用された12頭における生存率は58%(7/12頭)であったのに対して、保存性療法(Conservative treatment)が応用された3頭における生存率は67%(2/3頭)であったことが報告されています。しかし、螺子固定術後に安楽死(Euthanasia)となった5頭では、麻酔覚醒時(During anesthesia recovery)または術後四日以内に第三中足骨の完全骨折を続発しており、これらの症例には通常の圧迫バンテージ、ロバート・ジョーンズ・バンテージ、または遠位肢ギプス(Short-limb cast)が使用されていました。このため、馬の第三中足骨の内側顆状突起骨折に対しては、螺子固定術によって骨折治癒の改善が期待できるものの、不完全骨折から完全骨折へと移行して、予後不良となる危険性があることが示唆されました。そして、術後の合併症(Post-operative complication)を予防するため、罹患後肢に対する全肢ギプス(Full-limb cast)の使用や、吊起帯(Sling)およびプールを用いての麻酔覚醒を応用することが、強く推奨されています。
この研究では、螺子固定術後に管骨の完全骨折を呈した患馬を見ると、近位管骨部でのY字形骨折を生じており、術前レントゲン像上で認められた箇所よりも近位側に骨折線が伸展していた可能性があると推測されています。このため、施術に際しては、(1)螺旋状に走っている骨折線の長さをレントゲン検査で見誤る危険があることを考慮しながら、手術の是非または術式を判断すること、(2)CT検査などのより感度の高い画像診断法を併用すること、(3)レントゲン上で見られた骨折線上端よりも近位側の管骨に対して、数本の螺子を念のために挿入しておくこと、などの方針が重要になってくると考察されています。また、今後の研究では、不完全骨折から完全骨折への移行は、麻酔覚醒時に起こる可能性があることを考慮して、起立位手術(Standing surgery)を介しての螺子固定術の実施を検討する必要があると考えられます。
この研究では、螺子固定術後に生存した7頭の患馬のうち、5頭が競走復帰を果たしました(レース復帰率:71%)。このため、馬の第三中足骨の内側顆状突起骨折では、外科的療法によって十分な骨折治癒が達成された場合には、比較的に良好な予後と競走能力の回復が期待できることが示唆されました。
一般的に、馬の管骨における内側顆状突起骨折は、外側顆状突起骨折(Lateral condylar fracture)とはまったく異なった病態を呈することが知られており、この研究の症例郡でも、前肢の管骨(第三中手骨)よりも後肢の管骨(第三中足骨)に好発すること、骨折線が皮質面へと抜けず骨幹部(Mid-diaphyseal region)へと長軸性に走行していたこと、非変位性の不完全骨折(Non-displaced incomplete fracture)を起こしていたこと、などの特徴が報告されています。
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結果としては、15頭の第三中足骨の内側顆状突起骨折の患馬のうち、螺子固定術(Lag-screw fixation)が応用された12頭における生存率は58%(7/12頭)であったのに対して、保存性療法(Conservative treatment)が応用された3頭における生存率は67%(2/3頭)であったことが報告されています。しかし、螺子固定術後に安楽死(Euthanasia)となった5頭では、麻酔覚醒時(During anesthesia recovery)または術後四日以内に第三中足骨の完全骨折を続発しており、これらの症例には通常の圧迫バンテージ、ロバート・ジョーンズ・バンテージ、または遠位肢ギプス(Short-limb cast)が使用されていました。このため、馬の第三中足骨の内側顆状突起骨折に対しては、螺子固定術によって骨折治癒の改善が期待できるものの、不完全骨折から完全骨折へと移行して、予後不良となる危険性があることが示唆されました。そして、術後の合併症(Post-operative complication)を予防するため、罹患後肢に対する全肢ギプス(Full-limb cast)の使用や、吊起帯(Sling)およびプールを用いての麻酔覚醒を応用することが、強く推奨されています。
この研究では、螺子固定術後に管骨の完全骨折を呈した患馬を見ると、近位管骨部でのY字形骨折を生じており、術前レントゲン像上で認められた箇所よりも近位側に骨折線が伸展していた可能性があると推測されています。このため、施術に際しては、(1)螺旋状に走っている骨折線の長さをレントゲン検査で見誤る危険があることを考慮しながら、手術の是非または術式を判断すること、(2)CT検査などのより感度の高い画像診断法を併用すること、(3)レントゲン上で見られた骨折線上端よりも近位側の管骨に対して、数本の螺子を念のために挿入しておくこと、などの方針が重要になってくると考察されています。また、今後の研究では、不完全骨折から完全骨折への移行は、麻酔覚醒時に起こる可能性があることを考慮して、起立位手術(Standing surgery)を介しての螺子固定術の実施を検討する必要があると考えられます。
この研究では、螺子固定術後に生存した7頭の患馬のうち、5頭が競走復帰を果たしました(レース復帰率:71%)。このため、馬の第三中足骨の内側顆状突起骨折では、外科的療法によって十分な骨折治癒が達成された場合には、比較的に良好な予後と競走能力の回復が期待できることが示唆されました。
一般的に、馬の管骨における内側顆状突起骨折は、外側顆状突起骨折(Lateral condylar fracture)とはまったく異なった病態を呈することが知られており、この研究の症例郡でも、前肢の管骨(第三中手骨)よりも後肢の管骨(第三中足骨)に好発すること、骨折線が皮質面へと抜けず骨幹部(Mid-diaphyseal region)へと長軸性に走行していたこと、非変位性の不完全骨折(Non-displaced incomplete fracture)を起こしていたこと、などの特徴が報告されています。
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