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馬の文献:管骨骨折(Specht et al. 1990)

「第三中手骨の不完全皮質骨折に対する骨穿刺術:11頭の馬の治療成績」
Specht TE, Colahan PT. Osteostixis for incomplete cortical fracture of the third metacarpal bone. Results in 11 horses. Vet Surg. 1990; 19(1): 34-40.

この症例論文では、馬の第三中手骨(Third metacarpal bone)の不完全皮質骨折(Incomplete cortical fracture)に対する外科的療法による治療効果を評価するため、1984~1986年にかけて第三中手骨の不完全皮質骨折を呈した11頭の患馬(全頭が2~3歳齢のサラブレッド競走馬)における、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

この研究では、直径2.7mmまたは3.5mmのドリルを用いての骨穿刺術(Osteostixis)が選択され、骨折病変の大きさに応じて8~14mm間隔で四箇所~八箇所のドリル穿孔が行われました。このように、皮質面から骨髄腔(Medullar cavity)に達するドリル孔を設けることで、骨髄組織から骨折部位へと骨芽細胞(Osteoblasts)や成長因子(Growth factor)が豊富に供給され、骨折の治癒促進につながると考えられています。

結果としては、11頭の患馬のうち、競走に復帰したのは9頭で(レース復帰率:82%)、平均して手術から九ヶ月半で競走復帰したことが報告されています。また、手術後の平均出走期間は29ヶ月で、平均出走回数は26回にのぼりました。このため、馬の第三中手骨における不完全皮質骨折では、骨穿刺術によって十分な骨折治癒と良好な予後が期待され、競走復帰を果たす馬の割合も比較的に高いことが示唆されました。この研究で、レース復帰できなかった馬のうち一頭は、骨内に残存したドリルビットの破片による合併症(Complication)を起こしており、この一頭を除いて、外科手技的なミスが無かった馬を見ると、レース復帰率は90%(9/10頭)になることが示されました。

この研究では、11頭の患馬の全頭において、背側管部の隆起(いわゆる“ソエ”の外観)および隆起部位の圧痛(Pain on palpation)が認められ、レントゲン検査では側方撮影像(Latero-medial view)または背内掌外方撮影像(Dorsomedial-to-palmarlateral view)によって、不完全皮質骨折の確定診断(Definitive diagnosis)が下されました。

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