馬の文献:管骨骨折(Cervantes et al. 1992)
文献 - 2016年03月24日 (木)

「サラブレッド競走馬における第三中手骨の背側皮質骨折に対する外科治療:1985~1989年の53症例」
Cervantes C, Madison JB, Ackerman N, Reed WO. Surgical treatment of dorsal cortical fractures of the third metacarpal bone in thoroughbred racehorses: 53 cases (1985-1989). J Am Vet Med Assoc. 1992; 200(12): 1997-2000.
この症例論文では、馬の第三中手骨(Third metacarpal bone)の背側皮質骨折(dorsal cortical fracture)に対する、外科的療法(=骨穿刺術:Osteostixis)による治療効果を評価するため、1985~1989年にかけて第三中手骨の背側皮質骨折を呈した53頭のサラブレッド競走馬における、医療記録(Medical records)の解析が行われました。
結果としては、53頭の患馬のうち、競走復帰を果たしたのは47頭(レース復帰率:89%)、手術から出走までの平均休養期間は七ヶ月で、これらの馬のうち70%(33/47頭)は、骨折前よりもレベルの高いレースへと出走していました。また、平均出走数は骨折前の11回から手術後の16回に増加しており、平均獲得賞金(出走当たり)も骨折前の6500ドルから手術後の5700ドルというように有意には減少していませんでした。このため、サラブレッド競走馬の第三中手骨における背側皮質骨折に対しては、骨穿刺術を介しての外科的療法によって、十分な骨折治癒と良好な予後が期待され、レース復帰および競走能力の維持&向上を果たす馬の割合も、比較的に高いことが示唆されました。
馬の管骨の背側皮質骨折においては、骨髄腔(Medullar cavity)まで達する骨穿刺術を施すことで、骨髄組織から骨折部位へと骨芽細胞(Osteoblasts)や成長因子(Growth factor)が供給されて骨折治癒が促進され、また、ドリル孔を介して骨髄組織から増殖してきた海綿骨(Cancellous bone)によって骨折箇所の安定化(Immobilization)が期待できることが報告されています。他の文献では、骨折箇所の螺子固定術(Lag screw fixation)も行われていますが、この場合には、インプラント除去のための二度目の手術費を要し、また、挿入された螺子に起因して跛行を呈する場合もあることが知られています。一方、注射針の鋭端を用いて、皮質骨折部位の周辺を穿刺する手法も試みられていますが、骨髄腔に達する穿刺法ではないため、上述のようなドリル孔による骨穿刺術の利点はあまり期待できないと考えられるため、その効能に関しては賛否両論があります。
この研究では、術後合併症(Post-operative complication)が認められたのは19%(10/53頭)の症例で、このうち二頭は、ドリル穿孔箇所における致死性管骨骨折(Catastrophic cannon bone fracture)を呈しており、この発生時期は、手術後の26週間目(術後の三回目の出走)および28週間目(術後の四回目の出走)であったことが報告されています。このため、馬の管骨の背側皮質骨折に対して骨穿刺術が応用された場合には、術後の6~8ヶ月目に再検査を行って、十分な骨治癒が達成されていることや、管骨の骨密度(Bone density)が回復していることを確認して、適切な競走復帰時期を慎重に判断することが重要であると考察されています。
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