馬の文献:管骨骨折(Kawcak et al. 1995)
文献 - 2016年03月25日 (金)
「五頭の馬の遠位掌側第三中手骨における不完全骨折の診断と治療」
Kawcak CE, Bramlage LR, Embertson RM. Diagnosis and management of incomplete fracture of the distal palmar aspect of the third metacarpal bone in five horses. J Am Vet Med Assoc. 1995; 206(3): 335-337.
この症例論文では、馬の遠位掌側第三中手骨(Distal palmar aspect of the third metacarpal bone)における不完全骨折(Incomplete fracture)の診断法および予後を評価するため、遠位掌側第三中手骨の不完全骨折を呈した五頭の患馬における、医療記録(Medical records)の解析が行われました。
この研究では、五頭の患馬のうち四頭において、通常のレントゲン像では骨折線が発見できず、関節屈曲状態での背掌側撮影像(Dorsopalmar view on flexed fetlock joint)、もしくは、125度の角度での近位背側・遠位背側撮影像(125-degree dorsoproximal-dorsodistal view)を介して、不完全骨折の診断が下されました。また、五頭中の二頭では、核シンティグラフィー(Nuclear scintigraphy)も併用されました。このため、馬の遠位掌側第三中手骨における不完全骨折が疑われる症例においては、通常のレントゲン検査によって骨折線が探知できない場合がありうることを考慮して、特異的な撮影法や他の映像診断法(Diagnostic imaging)を併用することで、慎重に骨折診断に努めることが重要であると考察されています。
この研究では、五頭の症例の全頭に対して、二ヶ月にわたる馬房休養(Stall rest)の後、数ヶ月にわたる曳き馬(Hand-walking)またはパドック放牧によって、徐々に運動強度を上げていく保存性療法(Conservative treatment)が応用され、全頭が調教および競走への復帰を果たしたことが報告されています。このため、馬の遠位掌側第三中手骨における不完全骨折に対しては、保存性療法によって十分な骨折治癒と良好な予後が期待され、競走復帰を果たす馬の割合が高いことが示唆されました。この際には、初期の馬房休養を最低でも60日間は続けることが推奨されています。
この研究では、五頭の症例のうち一頭において、低四点神経麻酔(Low 4-point nerve block)によって顕著な跛行の改善(“60%”の跛行改善)が認められました。しかし、遠位肢を無痛化(Distal limb analgesia)することで、不完全骨折が完全骨折(Complete fracture)へと悪化する危険性もあります。このため、患馬が競走馬で、急性発現性(Acute onset)の中程度~重度跛行(Moderate to marked lameness)を呈した場合のように、不完全骨折が疑われる症例に対して診断麻酔(Diagnostic anesthesia)を用いることは推奨されない、という警鐘が鳴らされています。
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Kawcak CE, Bramlage LR, Embertson RM. Diagnosis and management of incomplete fracture of the distal palmar aspect of the third metacarpal bone in five horses. J Am Vet Med Assoc. 1995; 206(3): 335-337.
この症例論文では、馬の遠位掌側第三中手骨(Distal palmar aspect of the third metacarpal bone)における不完全骨折(Incomplete fracture)の診断法および予後を評価するため、遠位掌側第三中手骨の不完全骨折を呈した五頭の患馬における、医療記録(Medical records)の解析が行われました。
この研究では、五頭の患馬のうち四頭において、通常のレントゲン像では骨折線が発見できず、関節屈曲状態での背掌側撮影像(Dorsopalmar view on flexed fetlock joint)、もしくは、125度の角度での近位背側・遠位背側撮影像(125-degree dorsoproximal-dorsodistal view)を介して、不完全骨折の診断が下されました。また、五頭中の二頭では、核シンティグラフィー(Nuclear scintigraphy)も併用されました。このため、馬の遠位掌側第三中手骨における不完全骨折が疑われる症例においては、通常のレントゲン検査によって骨折線が探知できない場合がありうることを考慮して、特異的な撮影法や他の映像診断法(Diagnostic imaging)を併用することで、慎重に骨折診断に努めることが重要であると考察されています。
この研究では、五頭の症例の全頭に対して、二ヶ月にわたる馬房休養(Stall rest)の後、数ヶ月にわたる曳き馬(Hand-walking)またはパドック放牧によって、徐々に運動強度を上げていく保存性療法(Conservative treatment)が応用され、全頭が調教および競走への復帰を果たしたことが報告されています。このため、馬の遠位掌側第三中手骨における不完全骨折に対しては、保存性療法によって十分な骨折治癒と良好な予後が期待され、競走復帰を果たす馬の割合が高いことが示唆されました。この際には、初期の馬房休養を最低でも60日間は続けることが推奨されています。
この研究では、五頭の症例のうち一頭において、低四点神経麻酔(Low 4-point nerve block)によって顕著な跛行の改善(“60%”の跛行改善)が認められました。しかし、遠位肢を無痛化(Distal limb analgesia)することで、不完全骨折が完全骨折(Complete fracture)へと悪化する危険性もあります。このため、患馬が競走馬で、急性発現性(Acute onset)の中程度~重度跛行(Moderate to marked lameness)を呈した場合のように、不完全骨折が疑われる症例に対して診断麻酔(Diagnostic anesthesia)を用いることは推奨されない、という警鐘が鳴らされています。
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