馬の文献:管骨骨折(McClure et al. 1998)
文献 - 2016年03月29日 (火)

「馬の第三中手骨および第三中足骨における完全骨折:1980~1996年の25症例」
McClure SR, Watkins JP, Glickman NW, Hawkins JF, Glickman LT. Complete fractures of the third metacarpal or metatarsal bone in horses: 25 cases (1980-1996). J Am Vet Med Assoc. 1998; 213(6): 847-850.
この症例論文では、馬の第三中手骨および第三中足骨(Third meta-carpal/tarsal bone)における完全骨折(Complete fracture)に対する外科的療法の治療効果を評価するため、1980~1996年にかけて第三中手骨および第三中足骨の完全骨折を呈した25頭の患馬における、医療記録(Medical records)の解析が行われました。この研究では、21頭に対してはプレート固定術による内固定法(Internal fixation)が応用され、残りの4頭に対しては全肢ギプス(Full-limb cast)または経固定具ピンギプス(Transfixation-pin cast)による外固定法(External fixation)が選択されました。
結果としては、25頭の管骨完全骨折の患馬のうち、レントゲン検査で骨折治癒が認められたのは16頭(骨折治癒率:64%)、退院したのは17頭(短期生存率:68%)となっており、経過追跡(Follow-up)できなかった一頭を除くと、長期生存率は63%(15/24頭)であったことが報告されています。このうち、3頭の患馬は慢性跛行(Chronic lameness)を示し、意図した用途への使役に復帰したのは50%(12/24頭)の症例でした。このため、馬の第三中手骨および第三中足骨における完全骨折では、適切な症例選択(Proper case selection)および治療法選択が行われれば、外科的療法によって中程度の予後が期待され、競走&競技への使役に用いられるようになる馬の割合も、比較的に高いことが示唆されました。
この研究では、25頭の管骨完全骨折の患馬のうち、開放骨折(Open fracture)を呈していたのは64%(16/25頭)に及びました。そして、術後に骨折癒合不全(Fracture nonunion)を発症した7頭を見ると、その全頭が開放骨折に起因する細菌感染を起こしていました。このため、細菌感染を起こしていた場合の骨折治癒率は50%(7/14頭)にとどまり、細菌感染を起こしていなかった場合の骨折治癒率である90%(9/10頭)よりも、有意に低かったことが報告されています。
この研究では、25頭の管骨完全骨折の患馬のうち、前肢と後肢の違い(第三中手骨 v.s. 第三中足骨)、内固定と外固定の違い、粉砕骨折(Comminuted fracture)の有無、骨折発症から手術までの経過時間、患馬の性別や体重などは、骨折治癒率や生存率とは有意には相関していませんでした。しかし、骨折治癒した馬の平均年齢は105日齢で、骨折治癒できなかった馬の平均年齢である195日齢よりも、やや低い傾向が見られました。
この研究では、25頭の患馬のうち、管骨完全骨折の術後に認められた合併症(Complication)としては、術創細菌感染による滲出液排出(Incisional drainage due to bacterial infection)が16頭、インプラントのゆるみや破損(Implant loosening/failure)が7頭、負重性蹄葉炎(Support laminitis)や屈曲性&湾曲性肢変形症(Flexural/Angular limb deformity)などの対側肢(Contralateral limb)の合併症が7頭、などとなっていました。そして、術後合併症を示すことなく骨折治癒を達成したのは、症例全体の44%(11/25頭)にとどまったことが報告されています。
Copyright (C) nairegift.com/freephoto/, freedigitalphotos.net/, ashinari.com/ All Rights Reserved.
Copyright (C) Akikazu Ishihara All Rights Reserved.
関連記事:
馬の病気:第三中手骨骨折