馬の文献:管骨骨折(Le Jeune et al. 2003)
文献 - 2016年04月11日 (月)
「サラブレッド競走馬の管骨外側顆状突起骨折と繋靭帯損傷の関係における生体力学的研究」
Le Jeune SS, Macdonald MH, Stover SM, Taylor KT, Gerdes M. Biomechanical investigation of the association between suspensory ligament injury and lateral condylar fracture in thoroughbred racehorses. Vet Surg. 2003; 32(6): 585-597.
この研究論文では、馬の第三中手骨(Third metacarpal bone)の外側顆状突起骨折(Lateral condylar fracture)の発症に、繋靭帯損傷(Suspensory ligament injury)が関与しているのか否かを評価するため、七本の屍体前肢(Cadaver forelimbs)を用いて、繋靭帯内側枝(Medial branch of the suspensory ligament)の部分的切断術(Partial transection)の前後における、管骨表面の緊張度(Bone surface strain)および球節伸展角度(Fetlock extension angle)の測定が行われました。
結果としては、繋靭帯内側枝の部分的切断後には、外側&内側顆状突起(Lateral/Medial condyles)および背側&遠軸側管骨面(Dorsal/Abaxial bone surface)の緊張度が有意に増加し、球節の伸展角度は3~4度も増加したことが示されました。このため、サラブレッド競走馬の管骨外側顆状突起骨折においては、繋靭帯内側枝の統合性損失(Loss of integrity)がその発症に関与している可能性があることが示唆されました。
馬の管骨外側顆状突起骨折では、単に馬が踏み誤ることで起きるのではなく、骨のストレスと再構築(Bone stress and remodeling)が徐々に蓄積(Gradual accumulation)していくことが原因であることが知られています。また、剖検(Necropsy)の所見では、管骨外側顆状突起骨折と繋靭帯炎(Suspensory desmitis)を併発している場合が多いことから、この二つの病態の因果関係が疑われています。この研究の結果では、繋靭帯の部分断裂が、顆状突起骨折の病因になる可能性が示されましたが、実際の臨床症例においては、顆状突起骨折が先に起こって、関節の安定性(Joint stability)が失われて球節の過剰伸展(Fetlock hyper-extension)が起こった結果、繋靭帯損傷が続発的に発症する病因論も考えられます。このため、この研究のデータのみから、管骨外側顆状突起骨折と繋靭帯損傷のうち、どちらが原発性疾患(Primary disorder)でどちらが二次性疾患(Secondary disorder)を特定するのは難しいと考察されています。
この研究では、繋靭帯内側枝が部分的に切断された後でも、繋靭帯外側枝(Lateral branch of the suspensory ligament)の緊張度は有意には増加していませんでした。これは、繋靭帯内側枝に掛かっていた分の緊張が外側枝に伝達されて、外側顆状突起の緊張度を増加させたと言うよりも、繋靭帯内側枝の統合性損失によって球節外反(Fetlock valgus)が生じることで、球節の外側関節面(Lateral articular surface)に及ぼされる負荷が上昇して、外側顆状突起の緊張増加につながったことを示唆しています。
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この研究論文では、馬の第三中手骨(Third metacarpal bone)の外側顆状突起骨折(Lateral condylar fracture)の発症に、繋靭帯損傷(Suspensory ligament injury)が関与しているのか否かを評価するため、七本の屍体前肢(Cadaver forelimbs)を用いて、繋靭帯内側枝(Medial branch of the suspensory ligament)の部分的切断術(Partial transection)の前後における、管骨表面の緊張度(Bone surface strain)および球節伸展角度(Fetlock extension angle)の測定が行われました。
結果としては、繋靭帯内側枝の部分的切断後には、外側&内側顆状突起(Lateral/Medial condyles)および背側&遠軸側管骨面(Dorsal/Abaxial bone surface)の緊張度が有意に増加し、球節の伸展角度は3~4度も増加したことが示されました。このため、サラブレッド競走馬の管骨外側顆状突起骨折においては、繋靭帯内側枝の統合性損失(Loss of integrity)がその発症に関与している可能性があることが示唆されました。
馬の管骨外側顆状突起骨折では、単に馬が踏み誤ることで起きるのではなく、骨のストレスと再構築(Bone stress and remodeling)が徐々に蓄積(Gradual accumulation)していくことが原因であることが知られています。また、剖検(Necropsy)の所見では、管骨外側顆状突起骨折と繋靭帯炎(Suspensory desmitis)を併発している場合が多いことから、この二つの病態の因果関係が疑われています。この研究の結果では、繋靭帯の部分断裂が、顆状突起骨折の病因になる可能性が示されましたが、実際の臨床症例においては、顆状突起骨折が先に起こって、関節の安定性(Joint stability)が失われて球節の過剰伸展(Fetlock hyper-extension)が起こった結果、繋靭帯損傷が続発的に発症する病因論も考えられます。このため、この研究のデータのみから、管骨外側顆状突起骨折と繋靭帯損傷のうち、どちらが原発性疾患(Primary disorder)でどちらが二次性疾患(Secondary disorder)を特定するのは難しいと考察されています。
この研究では、繋靭帯内側枝が部分的に切断された後でも、繋靭帯外側枝(Lateral branch of the suspensory ligament)の緊張度は有意には増加していませんでした。これは、繋靭帯内側枝に掛かっていた分の緊張が外側枝に伝達されて、外側顆状突起の緊張度を増加させたと言うよりも、繋靭帯内側枝の統合性損失によって球節外反(Fetlock valgus)が生じることで、球節の外側関節面(Lateral articular surface)に及ぼされる負荷が上昇して、外側顆状突起の緊張増加につながったことを示唆しています。
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