馬の文献:管骨骨折(Ramzan. 2009)
文献 - 2016年04月17日 (日)
「六頭のサラブレッド競走馬の第三中手骨における遠位骨幹部の疲労性横骨折」
Ramzan PH. Transverse stress fracture of the distal diaphysis of the third metacarpus in six Thoroughbred racehorses. Equine Vet J. 2009; 41(6): 602-605.
この症例論文では、第三中手骨の遠位骨幹部(Distal diaphysis of the third metacarpus)における疲労性横骨折(Transverse stress fracture)を呈した、六頭のサラブレッド競走馬の症例が報告されています。
この論文の症例は、二歳~四歳齢のサラブレッド競走馬で、このうち三頭はグレード4の片側性跛行(Unilateral lameness)、一頭は軽度の片側性跛行、一頭は軽度の両側性跛行(Bilateral lameness)、残りの一頭は軽度の四肢跛行(Quadrilateral lameness)の病歴を示しました。いずれの症例も、球節上部における軟部組織肥厚(Soft-tissue thickening)、管骨掌側皮質骨面における圧痛(Pain on palpation)、関節膨満(Joint distension)などが見られ、レントゲン検査の結果、掌側遠位管骨の骨膜仮骨(Periosteal callus at the palmar aspect of the distal third metacarpus)および掌側皮質骨の放射線透過性(Palmar cortical radiolucency)が認められたことから、遠位骨幹部の疲労性横骨折(Transverse stress fracture of the distal diaphysis)の確定診断が下されました。
治療としては、全頭に対して、4~10週間の馬房休養(Stall rest)のあと、曳き馬運動(Hand walking)を開始するという、保存性療法(Conservative treatment)が選択され、六頭のうち五頭に対しては、罹患肢へのロバート・ジョーンズ・バンテージの装着が行われました。結果としては、六頭の症例のうち五頭では、良好な骨折治癒と跛行の完全な消失を示し、このうち三頭は競走復帰を果たしました。しかし、残りの一頭は、初診から13日目に、管骨の横骨折(Transverse fracture)を続発したため、安楽死(Euthanasia)が選択されました。
この研究で報告された、管骨遠位骨幹部の疲労性横骨折は、馬の管骨における稀な骨折病態であると考えられ、他の種類の管骨骨折と異なり、掌側皮質骨面における圧痛が特徴的所見として挙げられ、また、レントゲン検査による骨膜仮骨や骨折線の発見によって、診断が可能であることが示されました。しかし、保存性療法の治療効果や、その予後(生存率:83%)を評価するには、症例数が充分ではないという考察がなされています。
この研究において、疲労性骨折から横骨折に悪化して安楽死となった一頭は、その時点ではロバート・ジョーンズ・バンテージが装着されていましたが、骨折部位の不動化(Fracture immobilization)は不十分であったと推測されており、遠位管骨のプレート固定術が応用されていれば、良好な骨折治癒が達成された可能性もある、という考察がなされています。
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Ramzan PH. Transverse stress fracture of the distal diaphysis of the third metacarpus in six Thoroughbred racehorses. Equine Vet J. 2009; 41(6): 602-605.
この症例論文では、第三中手骨の遠位骨幹部(Distal diaphysis of the third metacarpus)における疲労性横骨折(Transverse stress fracture)を呈した、六頭のサラブレッド競走馬の症例が報告されています。
この論文の症例は、二歳~四歳齢のサラブレッド競走馬で、このうち三頭はグレード4の片側性跛行(Unilateral lameness)、一頭は軽度の片側性跛行、一頭は軽度の両側性跛行(Bilateral lameness)、残りの一頭は軽度の四肢跛行(Quadrilateral lameness)の病歴を示しました。いずれの症例も、球節上部における軟部組織肥厚(Soft-tissue thickening)、管骨掌側皮質骨面における圧痛(Pain on palpation)、関節膨満(Joint distension)などが見られ、レントゲン検査の結果、掌側遠位管骨の骨膜仮骨(Periosteal callus at the palmar aspect of the distal third metacarpus)および掌側皮質骨の放射線透過性(Palmar cortical radiolucency)が認められたことから、遠位骨幹部の疲労性横骨折(Transverse stress fracture of the distal diaphysis)の確定診断が下されました。
治療としては、全頭に対して、4~10週間の馬房休養(Stall rest)のあと、曳き馬運動(Hand walking)を開始するという、保存性療法(Conservative treatment)が選択され、六頭のうち五頭に対しては、罹患肢へのロバート・ジョーンズ・バンテージの装着が行われました。結果としては、六頭の症例のうち五頭では、良好な骨折治癒と跛行の完全な消失を示し、このうち三頭は競走復帰を果たしました。しかし、残りの一頭は、初診から13日目に、管骨の横骨折(Transverse fracture)を続発したため、安楽死(Euthanasia)が選択されました。
この研究で報告された、管骨遠位骨幹部の疲労性横骨折は、馬の管骨における稀な骨折病態であると考えられ、他の種類の管骨骨折と異なり、掌側皮質骨面における圧痛が特徴的所見として挙げられ、また、レントゲン検査による骨膜仮骨や骨折線の発見によって、診断が可能であることが示されました。しかし、保存性療法の治療効果や、その予後(生存率:83%)を評価するには、症例数が充分ではないという考察がなされています。
この研究において、疲労性骨折から横骨折に悪化して安楽死となった一頭は、その時点ではロバート・ジョーンズ・バンテージが装着されていましたが、骨折部位の不動化(Fracture immobilization)は不十分であったと推測されており、遠位管骨のプレート固定術が応用されていれば、良好な骨折治癒が達成された可能性もある、という考察がなされています。
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