馬の文献:種子骨骨折(Barclay et al. 1985)
文献 - 2016年04月29日 (金)
「馬の管骨の外側顆状突起骨折に伴って起こる軸性種子骨損傷」
Barclay WP, Foerner JJ, Phillips TN. Axial sesamoid injuries associated with lateral condylar fractures in horses. J Am Vet Med Assoc. 1985; 186(3): 278-279.
この症例論文では、近位種子骨(Proximal sesamoid bone)の軸性骨折(Axial fracture)の発症における、管骨の外側顆状突起骨折(Lateral condylar fracture of cannon bone)の関与を評価するため、1979~1983年にかけて管骨の外側顆状突起骨折を呈した18頭の患馬の、医療記録(Medical records)の解析が行われました。
結果としては、18頭の管骨外側顆状突起骨折の罹患馬のうち、22%(4/18頭)において軸性種子骨損傷(Axial sesamoid injuries)が認められ、このうち二頭は明瞭な近位種子骨の軸性骨折、残りの二頭は種子骨軸側面の脱ミネラル化(Demineralization)が見られました。このため、馬における管骨の外側顆状突起骨折では、軸性の種子骨損傷を併発する場合もあることが示唆されました。解剖学的に、馬の近位種子骨は繋靭帯合同装置(Suspensory apparatus)の一部を成しており、球節の異常な沈下を防ぐ役割を担っており、管骨の外側顆状突起骨折を引き起こすような球節関節の過剰伸展時には、内外側の二つの種子骨をつないでいる種子骨間靭帯(Inter-sesamoidean ligament)の緊張によって、種子骨軸側面の損傷または剥離骨折(Avulsion fracture)に至ることが病因であると考えられています。
この研究では、軸性骨折を呈した二頭の患馬では、管骨外側顆状突起骨折の螺子固定術(Lag screw fixation)から三ヵ月後の再検査において、重篤な球節の変性関節疾患(Severe degenerative joint disease of fetlock joint)の続発が認められました。また、種子骨軸側面の脱ミネラル化を呈した二頭でも、螺子固定術から五ヶ月後の再検査において、中程度の球節の変性関節疾患の続発が見られました。そして、この四頭は慢性的な跛行(Chronic lameness)を呈したのに対して(調教または競走への復帰率:0%)、軸性種子骨損傷を伴わなかった他の14頭では、殆どの患馬が良好な予後と跛行消失を示して、64%(9/14頭)が調教または競走への復帰を果たしたことが報告されています。
このため、管骨の外側顆状突起骨折においては、術前の慎重なレントゲン検査(Radiography)や超音波検査(Ultrasonography)によって、軸性種子骨損傷を併発の有無を確かめて、正確な予後判定(Prognostication)に努めることが重要であると考えられました。この研究では、18頭の患馬のうち、軸性種子骨損傷を併発した四頭と、他の14頭を比較した場合、骨折線の長さ、骨折片の幅、骨折片の変位度などには有意差は認められず、原発疾患(Primary disorder)である顆状突起骨折の重篤度そのものは、種子骨の軸性損傷を推定診断(Presumptive diagnosis)する目安にはならないことが示唆されました。
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Barclay WP, Foerner JJ, Phillips TN. Axial sesamoid injuries associated with lateral condylar fractures in horses. J Am Vet Med Assoc. 1985; 186(3): 278-279.
この症例論文では、近位種子骨(Proximal sesamoid bone)の軸性骨折(Axial fracture)の発症における、管骨の外側顆状突起骨折(Lateral condylar fracture of cannon bone)の関与を評価するため、1979~1983年にかけて管骨の外側顆状突起骨折を呈した18頭の患馬の、医療記録(Medical records)の解析が行われました。
結果としては、18頭の管骨外側顆状突起骨折の罹患馬のうち、22%(4/18頭)において軸性種子骨損傷(Axial sesamoid injuries)が認められ、このうち二頭は明瞭な近位種子骨の軸性骨折、残りの二頭は種子骨軸側面の脱ミネラル化(Demineralization)が見られました。このため、馬における管骨の外側顆状突起骨折では、軸性の種子骨損傷を併発する場合もあることが示唆されました。解剖学的に、馬の近位種子骨は繋靭帯合同装置(Suspensory apparatus)の一部を成しており、球節の異常な沈下を防ぐ役割を担っており、管骨の外側顆状突起骨折を引き起こすような球節関節の過剰伸展時には、内外側の二つの種子骨をつないでいる種子骨間靭帯(Inter-sesamoidean ligament)の緊張によって、種子骨軸側面の損傷または剥離骨折(Avulsion fracture)に至ることが病因であると考えられています。
この研究では、軸性骨折を呈した二頭の患馬では、管骨外側顆状突起骨折の螺子固定術(Lag screw fixation)から三ヵ月後の再検査において、重篤な球節の変性関節疾患(Severe degenerative joint disease of fetlock joint)の続発が認められました。また、種子骨軸側面の脱ミネラル化を呈した二頭でも、螺子固定術から五ヶ月後の再検査において、中程度の球節の変性関節疾患の続発が見られました。そして、この四頭は慢性的な跛行(Chronic lameness)を呈したのに対して(調教または競走への復帰率:0%)、軸性種子骨損傷を伴わなかった他の14頭では、殆どの患馬が良好な予後と跛行消失を示して、64%(9/14頭)が調教または競走への復帰を果たしたことが報告されています。
このため、管骨の外側顆状突起骨折においては、術前の慎重なレントゲン検査(Radiography)や超音波検査(Ultrasonography)によって、軸性種子骨損傷を併発の有無を確かめて、正確な予後判定(Prognostication)に努めることが重要であると考えられました。この研究では、18頭の患馬のうち、軸性種子骨損傷を併発した四頭と、他の14頭を比較した場合、骨折線の長さ、骨折片の幅、骨折片の変位度などには有意差は認められず、原発疾患(Primary disorder)である顆状突起骨折の重篤度そのものは、種子骨の軸性損傷を推定診断(Presumptive diagnosis)する目安にはならないことが示唆されました。
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