馬の文献:種子骨骨折(Schnabel et al. 2006)
文献 - 2016年05月08日 (日)
「二歳齢以上のサラブレッドにおける種子骨尖端骨折片の関節鏡的摘出後の競走成績:1989~2002年の84症例」
Schnabel LV, Bramlage LR, Mohammed HO, Embertson RM, Ruggles AJ, Hopper SA. Racing performance after arthroscopic removal of apical sesamoid fracture fragments in Thoroughbred horses age > or = 2 years: 84 cases (1989-2002). Equine Vet J. 2006; 38(5): 446-451.
この症例論文では、近位種子骨(Proximal sesamoid bone)の尖端骨折(Apical fracture)に対する、外科的療法の治療効果を評価するため、1989~2002年にわたって種子骨の尖端骨折を呈し、関節鏡手術(Arthroscopy)を介しての骨折片摘出(Fracture fragment removal)が応用された84頭のサラブレッド競走馬(二歳齢以上の成馬)における、骨折前と治療後の競走成績(Racing performance)の比較が行われました。
結果としては、84頭の種子骨尖端骨折の罹患馬のうち、レース復帰を果たしたのは77%(65/84頭)でしたが、前肢の骨折におけるレース復帰率は67%(20/30頭)にとどまったのに対して、後肢の骨折におけるレース復帰率は83%(45/54頭)と有意に高かったことが示されました。このため、成馬の種子骨における尖端骨折では、関節鏡手術を介しての骨折片摘出によって、中程度~良好な予後が期待され、特に後肢の骨折では、レース復帰を果たす馬の割合がかなり高いことが示唆されました。
この研究では、89箇所の種子骨尖端骨折のうち、内側種子骨(Medial sesamoid bone)の骨折におけるレース復帰率は65%(26/40骨折)にとどまったのに対して、外側種子骨(Lateral sesamoid bone)の骨折におけるレース復帰率は90%(35/39頭)と有意に高かったことが示されました。このため、成馬の種子骨における尖端骨折では、内側種子骨よりも体重負荷が少ないと考えられる外側種子骨の骨折のほうが、より良好な予後が期待されることが示唆されました。
この研究では、種子骨骨折に伴って繋靭帯炎(Suspensory desmitis)の併発が見られた場合には、レース復帰率は63%(12/19頭)にとどまったのに対して、繋靭帯炎を起こしていなかった場合には、レース復帰は82%(53/65頭)にのぼりました。また、治療後の平均競走成績を比べると、繋靭帯炎の併発が見られた馬では、繋靭帯炎を起こしていなかった馬に比べて、出走回数(6回 v.s. 14回)および獲得賞金($10,000 v.s. $39,000)が有意に低かったことが報告されています。このため、成馬の種子骨骨折に対する外科的療法では、術前&術後の超音波検査(Ultrasonography)によって、繋靭帯炎の有無およびその重篤度を慎重に診断して、より正確な予後判定(Prognostication)に努めることが重要であると考えられました。
この研究では、データの生存解析(Survival analysis)も試みられており、術後六ヶ月目までにおけるレース復帰率は75%にのぼったのに対して、術後八ヶ月目までのレース復帰率は50%、術後十ヶ月目までのレース復帰率は25%まで低下していました。このため、成馬の種子骨における尖端骨折では、関節鏡手術から半年以内にレース復帰できる馬の割合が多い反面、治癒に半年~十ヶ月を要する場合には、レース復帰を果たせない確率が高いことが示唆されました。
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結果としては、84頭の種子骨尖端骨折の罹患馬のうち、レース復帰を果たしたのは77%(65/84頭)でしたが、前肢の骨折におけるレース復帰率は67%(20/30頭)にとどまったのに対して、後肢の骨折におけるレース復帰率は83%(45/54頭)と有意に高かったことが示されました。このため、成馬の種子骨における尖端骨折では、関節鏡手術を介しての骨折片摘出によって、中程度~良好な予後が期待され、特に後肢の骨折では、レース復帰を果たす馬の割合がかなり高いことが示唆されました。
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この研究では、データの生存解析(Survival analysis)も試みられており、術後六ヶ月目までにおけるレース復帰率は75%にのぼったのに対して、術後八ヶ月目までのレース復帰率は50%、術後十ヶ月目までのレース復帰率は25%まで低下していました。このため、成馬の種子骨における尖端骨折では、関節鏡手術から半年以内にレース復帰できる馬の割合が多い反面、治癒に半年~十ヶ月を要する場合には、レース復帰を果たせない確率が高いことが示唆されました。
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