馬の文献:種子骨骨折(Brokken et al. 2008)
文献 - 2016年05月10日 (火)
「馬の近位種子骨における非関節性底部骨折片の除去のための外科的アプローチ」
Brokken MT, Schneider RK, Tucker RL. Surgical approach for removal of nonarticular base sesamoid fragments of the proximal sesamoid bones in horses. Vet Surg. 2008; 37(7): 619-624.
この症例論文では、近位種子骨(Proximal sesamoid bone)の非関節性底部骨折(Nonarticular basilar fracture)における、骨折片除去(Fragment removal)ための術式の検討と、その治療効果を評価するため、1992~2006年にかけて近位種子骨の非関節性底部骨折を呈した11頭の患馬における、医療記録(Medical records)の解析が行われました。
この研究の術式では、掌側&底側腱鞘(Palmar/Plantar tendon sheath)を生食で膨満させてから切開し、浅&深屈腱(Superficial/Deep digital flexor tendons)を掌側&底側へと押し下げてから、直鎖種子骨遠位靭帯(Straight distal sesamoidean ligament)を線維走行に平行な向きに切開することで種子骨底部の骨折片に到達し、斜位種子骨遠位靭帯(Oblique distal sesamoidean ligament)を剥離することで骨折片が摘出されました。
結果としては、11頭の患馬における全ての骨折片が上述の術式を介して摘出され、良好な術創治癒(Incisional healing)が達成されました。そして、経過追跡(Follow-up)ができた10頭の患馬のうち、90%(9/10頭)が意図した用途への使役(Intended use)に復帰したことが報告されています。このため、馬の種子骨における非関節性底部骨折では、上述のような“鍵穴”アプローチ(Key-hole approach)を介しての骨折片摘出によって、良好な予後が期待され、競走&競技使役への復帰を果たす馬の割合も高いことが示唆されました。
一般的に、馬の種子骨骨折のうち、非関節性の底部骨折はそれほど頻繁に見られる病態ではなく、関節性骨折(Articular fracture)との鑑別、および手術法の選択(関節鏡手術を行うか否か?)は必ずしも容易ではありません。この研究では、骨折片の発見自体は、通常の側方レントゲン撮影像(Lateral radiographic view)で可能でしたが、関節性および非関節性骨折の鑑別診断のためには、慎重な診断麻酔の実施(球節の関節麻酔[Fetlock joint block]による陰性反応+低四点神経麻酔[Low 4-point nerve block]による陽性反応、etc)、または球節の造影レントゲン検査(Contrast radiography)が必要とされ、超音波検査(Ultrasonography)による骨折周囲軟部組織(Peri-fracture soft-tissue)の検査は困難な場合が多かったことが報告されています。
この研究では、16箇所の種子骨の非関節性底部骨折のうち、前肢が69%(11/16骨折)、後肢が31%(5/16骨折)を占め、また、前肢では内側種子骨が73%(8/11骨折)で外側種子骨27%(3/11骨折)であったのに対して、後肢では内側種子骨が40%(2/5骨折)で外側種子骨60%(3/5骨折)を占めていました。このため、馬の種子骨における非関節性底部骨折では、後肢よりも前肢、外側よりも内側種子骨における発症率(Incidence)が高いことが示唆されました。
一般的に、馬の種子骨における非関節性底部骨折は、骨軟骨症(Osteochondrosis)に起因する骨軟骨片(Osteochondral fragment)である場合と、種子骨遠位靭帯の緊張に起因する剥離骨折(Avulsion fracture)である場合の、二つの病因論が提唱されています。しかし、この症例では、骨折片の殆どが斜位種子骨遠位靭帯に堅固に結合していたことから、剥離骨折の病態を呈していた可能性が高いと考察されています。
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この症例論文では、近位種子骨(Proximal sesamoid bone)の非関節性底部骨折(Nonarticular basilar fracture)における、骨折片除去(Fragment removal)ための術式の検討と、その治療効果を評価するため、1992~2006年にかけて近位種子骨の非関節性底部骨折を呈した11頭の患馬における、医療記録(Medical records)の解析が行われました。
この研究の術式では、掌側&底側腱鞘(Palmar/Plantar tendon sheath)を生食で膨満させてから切開し、浅&深屈腱(Superficial/Deep digital flexor tendons)を掌側&底側へと押し下げてから、直鎖種子骨遠位靭帯(Straight distal sesamoidean ligament)を線維走行に平行な向きに切開することで種子骨底部の骨折片に到達し、斜位種子骨遠位靭帯(Oblique distal sesamoidean ligament)を剥離することで骨折片が摘出されました。
結果としては、11頭の患馬における全ての骨折片が上述の術式を介して摘出され、良好な術創治癒(Incisional healing)が達成されました。そして、経過追跡(Follow-up)ができた10頭の患馬のうち、90%(9/10頭)が意図した用途への使役(Intended use)に復帰したことが報告されています。このため、馬の種子骨における非関節性底部骨折では、上述のような“鍵穴”アプローチ(Key-hole approach)を介しての骨折片摘出によって、良好な予後が期待され、競走&競技使役への復帰を果たす馬の割合も高いことが示唆されました。
一般的に、馬の種子骨骨折のうち、非関節性の底部骨折はそれほど頻繁に見られる病態ではなく、関節性骨折(Articular fracture)との鑑別、および手術法の選択(関節鏡手術を行うか否か?)は必ずしも容易ではありません。この研究では、骨折片の発見自体は、通常の側方レントゲン撮影像(Lateral radiographic view)で可能でしたが、関節性および非関節性骨折の鑑別診断のためには、慎重な診断麻酔の実施(球節の関節麻酔[Fetlock joint block]による陰性反応+低四点神経麻酔[Low 4-point nerve block]による陽性反応、etc)、または球節の造影レントゲン検査(Contrast radiography)が必要とされ、超音波検査(Ultrasonography)による骨折周囲軟部組織(Peri-fracture soft-tissue)の検査は困難な場合が多かったことが報告されています。
この研究では、16箇所の種子骨の非関節性底部骨折のうち、前肢が69%(11/16骨折)、後肢が31%(5/16骨折)を占め、また、前肢では内側種子骨が73%(8/11骨折)で外側種子骨27%(3/11骨折)であったのに対して、後肢では内側種子骨が40%(2/5骨折)で外側種子骨60%(3/5骨折)を占めていました。このため、馬の種子骨における非関節性底部骨折では、後肢よりも前肢、外側よりも内側種子骨における発症率(Incidence)が高いことが示唆されました。
一般的に、馬の種子骨における非関節性底部骨折は、骨軟骨症(Osteochondrosis)に起因する骨軟骨片(Osteochondral fragment)である場合と、種子骨遠位靭帯の緊張に起因する剥離骨折(Avulsion fracture)である場合の、二つの病因論が提唱されています。しかし、この症例では、骨折片の殆どが斜位種子骨遠位靭帯に堅固に結合していたことから、剥離骨折の病態を呈していた可能性が高いと考察されています。
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