馬の文献：種子骨骨折（Sasaki et al. 2010）
文献 - 2016年05月12日 (木)
「馬の屍体肢を用いての同種骨螺子による近位種子骨横骨折の内固定法の生体外試験」
Sasaki N, Takakuwa J, Yamada H, Mori R. In vitro evaluation of allogeneic bone screws for use in internal fixation of transverse fractures created in proximal sesamoid bones obtained from equine cadavers. Am J Vet Res. 2010; 71(4): 483-486.
この研究論文では、近位種子骨（Proximal sesamoid bone）の横骨折（Transverse fracture）に対する有用な外科的療法の術式を検討するため、14本の屍体前肢（Forelimb cadavers）の種子骨に施された骨切術（Osteotomy）を、同種骨螺子（Allogeneic bone screws）またはステンレス製皮質骨螺子（Stainless steel cortical bone screw）を用いて外科整復し、引張試験（Tension testing）によってその物理的強度の生体外試験（In vitro evaluation）が行われました。
この研究では、サラブレッドの第三中手骨（Third metacarpal bone）の皮質骨を採取し、マイクロファクトリ装置を用いて、直径4.5mmで長さ40mmの同種骨螺子、および直径3.5mmで長さ36mmの同種骨ピンが作成されました。そして、種子骨の骨切術部位は、（１）一本のステンレス製皮質骨螺子、（２）一本の同種骨螺子と一本の同種骨ピンの組み合わせ、（３）二本の同種骨螺子、という三種類の術式で整復されました。
結果としては、ステンレス製皮質骨螺子による整復法では、引張強度（Tensile strength）は平均1150ニュートンであったのに対して、二本の同種骨螺子による整復法では、引張強度は平均854ニュートンで、両術式のあいだに有意差は認められませんでした。一方、一本の同種骨螺子と一本の同種骨ピンの組み合わせによる整復法では、引張強度は平均668ニュートンで、他の二種類の術式よりも有意に低かったことが示されました。このため、馬の近位種子骨の横骨折に対しては、二本の同種骨螺子を用いることで、ステンレス製皮質骨螺子に匹敵する整復強度を達成できることが示唆されました。
一般的に、同種骨螺子は、素材が骨組織であるため生体適合性（Biocompatibility）が高く、また、その中に含まれる骨誘導性蛋白（Bone morphogenetic proteins）などの成長因子（Growth factor）を骨折部位に作用させるため、骨癒合や骨再生（Bone fusion/regeneration）を促進させることができます。さらに、素材そのものが生体構築基盤（Biomaterial platform）となって、周囲骨組織からの細胞浸潤（Cell infiltration）を促す効果も期待できます。このため、今後の研究では、生体内実験（In vivo test）によって、同種骨螺子を使用することで、実際に有意な骨治癒の促進につながるか否かを試験する必要があると考えられました。
この研究では、同種骨螺子の作成に当たって、冷凍後に解凍するという過程を踏んでから、引張強度試験が行われており、同種骨を冷凍保存して使用しても充分な強度を維持できることが示唆されました。同種骨螺子の変わりに自己骨螺子（Autologous bone screw）を使おうとすると、自己骨を採取するための別の手術が必要となるという欠点が生じるので、この研究で示されたような、冷凍保存していた同種骨を用いて螺子を作成する方針が有用であると言えます。一方、今後の研究では、同種間組織移植（Allogenic tissue transplantation）に起因する免疫性拒絶反応（Immune rejection）の度合いを、生体内実験によって評価する必要があると考えられました。
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Sasaki N, Takakuwa J, Yamada H, Mori R. In vitro evaluation of allogeneic bone screws for use in internal fixation of transverse fractures created in proximal sesamoid bones obtained from equine cadavers. Am J Vet Res. 2010; 71(4): 483-486.
この研究論文では、近位種子骨（Proximal sesamoid bone）の横骨折（Transverse fracture）に対する有用な外科的療法の術式を検討するため、14本の屍体前肢（Forelimb cadavers）の種子骨に施された骨切術（Osteotomy）を、同種骨螺子（Allogeneic bone screws）またはステンレス製皮質骨螺子（Stainless steel cortical bone screw）を用いて外科整復し、引張試験（Tension testing）によってその物理的強度の生体外試験（In vitro evaluation）が行われました。
この研究では、サラブレッドの第三中手骨（Third metacarpal bone）の皮質骨を採取し、マイクロファクトリ装置を用いて、直径4.5mmで長さ40mmの同種骨螺子、および直径3.5mmで長さ36mmの同種骨ピンが作成されました。そして、種子骨の骨切術部位は、（１）一本のステンレス製皮質骨螺子、（２）一本の同種骨螺子と一本の同種骨ピンの組み合わせ、（３）二本の同種骨螺子、という三種類の術式で整復されました。
結果としては、ステンレス製皮質骨螺子による整復法では、引張強度（Tensile strength）は平均1150ニュートンであったのに対して、二本の同種骨螺子による整復法では、引張強度は平均854ニュートンで、両術式のあいだに有意差は認められませんでした。一方、一本の同種骨螺子と一本の同種骨ピンの組み合わせによる整復法では、引張強度は平均668ニュートンで、他の二種類の術式よりも有意に低かったことが示されました。このため、馬の近位種子骨の横骨折に対しては、二本の同種骨螺子を用いることで、ステンレス製皮質骨螺子に匹敵する整復強度を達成できることが示唆されました。
一般的に、同種骨螺子は、素材が骨組織であるため生体適合性（Biocompatibility）が高く、また、その中に含まれる骨誘導性蛋白（Bone morphogenetic proteins）などの成長因子（Growth factor）を骨折部位に作用させるため、骨癒合や骨再生（Bone fusion/regeneration）を促進させることができます。さらに、素材そのものが生体構築基盤（Biomaterial platform）となって、周囲骨組織からの細胞浸潤（Cell infiltration）を促す効果も期待できます。このため、今後の研究では、生体内実験（In vivo test）によって、同種骨螺子を使用することで、実際に有意な骨治癒の促進につながるか否かを試験する必要があると考えられました。
この研究では、同種骨螺子の作成に当たって、冷凍後に解凍するという過程を踏んでから、引張強度試験が行われており、同種骨を冷凍保存して使用しても充分な強度を維持できることが示唆されました。同種骨螺子の変わりに自己骨螺子（Autologous bone screw）を使おうとすると、自己骨を採取するための別の手術が必要となるという欠点が生じるので、この研究で示されたような、冷凍保存していた同種骨を用いて螺子を作成する方針が有用であると言えます。一方、今後の研究では、同種間組織移植（Allogenic tissue transplantation）に起因する免疫性拒絶反応（Immune rejection）の度合いを、生体内実験によって評価する必要があると考えられました。
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