馬の文献：種子骨骨折（Kamm et al. 2011）
文献 - 2016年05月13日 (金)
「サラブレッド競走馬の種子骨尖端骨折片のサイズと幾何学および予後指標」
Kamm JL, Bramlage LR, Schnabel LV, Ruggles AJ, Embertson RM, Hopper SA. Size and geometry of apical sesamoid fracture fragments as a determinant of prognosis in Thoroughbred racehorses. Equine Vet J. 2011; 43(4): 412-417.
この症例報告では、近位種子骨（Proximal sesamoid bone）の尖端骨折（Apical fracture）における骨折片のサイズと幾何学（Size and geometry）の解明、および、それらが予後判定指標（Determinant of prognosis）になるか否かを評価するため、1994～2002年にかけて、近位種子骨の尖端骨折を呈した166頭のサラブレッド競走馬の、医療記録（Medical records）の回顧的解析（Retrospective analysis）が行われました。
結果としては、手術後の競走能力（Racing performance）の指標として、出走一回あたりの獲得賞金（Average earnings per start）および術後の総出走回数（Total post operative starts）を用いたところ、これらの指標の値には、骨折片のサイズや形状との有意な関連は無かったことが分かりました。このため、近位種子骨の尖端骨折に対する関節鏡的な骨片摘出（Arthroscopic fragment removal）では、骨折片のサイズが大きいほど、懸垂装置（Suspensory apparatus）への悪影響は大きいと推測されるにも関わらず、それ自体は予後には影響しないという考察がなされています。しかし、この研究における尖端骨折片の容積は、種子骨全体の25～33%に留まっており（尖端骨折は種子骨の近位部1/3以下の状態と定義されているため）、深刻でないと予測される骨片のサイズに、限度（Threshold）があるのか否かは結論付けられないとも述べられています。
この研究では、調教を受ける前の症例（Untrained horses）においては、前肢の内側種子骨（Medial sesamoid bone of forelimb）のほうが、他の種子骨（後肢および前肢の外側種子骨）に比べて、尖端骨片における遠軸側長と軸側長の比率（Abaxial to axial ratio）が有意に大きかったことが示されました。これはつまり、前肢の内側種子骨では、より水平に近い方向に折れていたことを示唆しています。しかし、このような骨折の傾斜度合い（Obliquity of the fracture）も、予後には影響していませんでした。
一般的に、馬の前肢の内側種子骨における尖端骨片は、他の種子骨（後肢および前肢の外側種子骨）に比べて予後が良くないことが知られています。他の文献では、種子骨の尖端骨片において、術後に出走を果たした馬の割合は、前肢の外側種子骨では100%、後肢の種子骨では85%であったのに対して、前肢の内側種子骨では46%に留まっており、これに比例して、獲得賞金も低かったことが報告されています（Schnabel et al. EVJ. 2006;38:446, Schnabel et al. EVJ. 2007;39:64）。また、種子骨における尖端骨片において、種子骨炎（Sesamoiditis）や繋靭帯炎（Suspensory desmitis）を併発していた場合には、有意に予後が悪化することも報告されています（Spike-Pierce et al. EVJ. 2003;35:350）。
Copyright (C) nairegift.com/freephoto/, freedigitalphotos.net/, ashinari.com/ All Rights Reserved.
Copyright (C) Akikazu Ishihara All Rights Reserved.
関連記事；
馬の病気：種子骨骨折
Kamm JL, Bramlage LR, Schnabel LV, Ruggles AJ, Embertson RM, Hopper SA. Size and geometry of apical sesamoid fracture fragments as a determinant of prognosis in Thoroughbred racehorses. Equine Vet J. 2011; 43(4): 412-417.
この症例報告では、近位種子骨（Proximal sesamoid bone）の尖端骨折（Apical fracture）における骨折片のサイズと幾何学（Size and geometry）の解明、および、それらが予後判定指標（Determinant of prognosis）になるか否かを評価するため、1994～2002年にかけて、近位種子骨の尖端骨折を呈した166頭のサラブレッド競走馬の、医療記録（Medical records）の回顧的解析（Retrospective analysis）が行われました。
結果としては、手術後の競走能力（Racing performance）の指標として、出走一回あたりの獲得賞金（Average earnings per start）および術後の総出走回数（Total post operative starts）を用いたところ、これらの指標の値には、骨折片のサイズや形状との有意な関連は無かったことが分かりました。このため、近位種子骨の尖端骨折に対する関節鏡的な骨片摘出（Arthroscopic fragment removal）では、骨折片のサイズが大きいほど、懸垂装置（Suspensory apparatus）への悪影響は大きいと推測されるにも関わらず、それ自体は予後には影響しないという考察がなされています。しかし、この研究における尖端骨折片の容積は、種子骨全体の25～33%に留まっており（尖端骨折は種子骨の近位部1/3以下の状態と定義されているため）、深刻でないと予測される骨片のサイズに、限度（Threshold）があるのか否かは結論付けられないとも述べられています。
この研究では、調教を受ける前の症例（Untrained horses）においては、前肢の内側種子骨（Medial sesamoid bone of forelimb）のほうが、他の種子骨（後肢および前肢の外側種子骨）に比べて、尖端骨片における遠軸側長と軸側長の比率（Abaxial to axial ratio）が有意に大きかったことが示されました。これはつまり、前肢の内側種子骨では、より水平に近い方向に折れていたことを示唆しています。しかし、このような骨折の傾斜度合い（Obliquity of the fracture）も、予後には影響していませんでした。
一般的に、馬の前肢の内側種子骨における尖端骨片は、他の種子骨（後肢および前肢の外側種子骨）に比べて予後が良くないことが知られています。他の文献では、種子骨の尖端骨片において、術後に出走を果たした馬の割合は、前肢の外側種子骨では100%、後肢の種子骨では85%であったのに対して、前肢の内側種子骨では46%に留まっており、これに比例して、獲得賞金も低かったことが報告されています（Schnabel et al. EVJ. 2006;38:446, Schnabel et al. EVJ. 2007;39:64）。また、種子骨における尖端骨片において、種子骨炎（Sesamoiditis）や繋靭帯炎（Suspensory desmitis）を併発していた場合には、有意に予後が悪化することも報告されています（Spike-Pierce et al. EVJ. 2003;35:350）。
Copyright (C) nairegift.com/freephoto/, freedigitalphotos.net/, ashinari.com/ All Rights Reserved.
Copyright (C) Akikazu Ishihara All Rights Reserved.
関連記事；
馬の病気：種子骨骨折
