馬の文献:手根骨破片骨折(Thrall et al. 1971)
文献 - 2016年05月22日 (日)

「馬の手根骨破片骨折の発症率と発症箇所に関する五年間の調査」
Thrall DE, Lebel JL, O'Brien TR. A five-year survey of the incidence and location of equine carpal chip fractures. J Am Vet Med Assoc. 1971; 158(8): 1366-1368.
この症例論文では、馬の手根骨破片骨折(Carpal chip fracture)の病態把握のため、1965~1969年にかけて、手根関節(Carpal joints)のレントゲン検査を受けた340頭のサラブレッド競走馬およびクォーターホース競走馬の、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。
結果としては、手根関節のレントゲン検査を受けた患馬のうち、手根骨破片骨折が発見された馬の割合は、サラブレッド競走馬では57%、クォーターホース競走馬では30%に及びました。骨折の発症箇所としては、遠位橈側手根骨(Distal radial carpal bone)が37%と最も多く、次いで、橈骨遠位端(Distal end of radius)が18%、第三手根骨(Third carpal bone)が17%、近位橈側手根骨(Proximal radial carpal bone)が14%、中間手根骨(Intermediate carpal bone)が11%などとなっていました。このため、馬の手根関節における破片骨折は、クォーターホースよりもサラブレッドの競走馬において多く見られ、特に、遠位橈側手根骨における発症率が高いことが示唆されました。
この研究では、手根関節のレントゲン検査を受けた患馬のうち、骨膜新生骨形成(Periosteal new bone formation)が発見された馬の割合は、サラブレッド競走馬では16%、クォーターホース競走馬では28%に及びました。骨膜新生骨形成の発症箇所としては、橈側手根骨が42%と最も多く、次いで、橈骨遠位端が21%、第三手根骨が20%、中間手根骨が13%などとなっていました。このため、馬の手根関節における新生骨形成は、サラブレッドよりもクォーターホースの競走馬において多く見られ、特に、橈側手根骨における発症率が高いことが示唆されました。この新生骨の形成は、破片骨折と類似した箇所に起こっていましたが、この病変の詳しい病態および有意性(Significance)については、この論文では検証&考察されていません。
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