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馬の文献:手根骨破片骨折(Kannegieter et al. 1990)

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「馬の手根関節におけるレントゲン所見と関節鏡所見の相関」
Kannegieter NJ, Burbidge HM. Correlation between radiographic and arthroscopic findings in the equine carpus. Aust Vet J. 1990; 67(4): 132-133.

この症例論文では、馬の手根骨骨折(Carpal bone fracture)の診断におけるレントゲン検査(Radiography)および関節鏡検査(Arthroscopic examination)の、相関性(Correlation)と信頼性(Reliability)を評価するため、手根関節(Carpal joints)の関節鏡手術(Arthroscopy)が応用された114頭(150 関節)の、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。この研究では、跛行検査(Lameness examination)および関節麻酔(Joint block)によって、手根関節に疼痛が限局化(Pain localization)された症例のみ含まれ、また、レントゲン検査では、背掌側撮影像(Dorso-palmar view)、外内側撮影像(Latero-medial view)、屈曲位での内外側撮影像(Flexed latero-medial view)、二種類の斜位撮影像(Oblique vies)、側方撮影像二種類のスカイライン撮影像の、計七種類の撮影法が実施されました。

結果としては、レントゲン検査で破片骨折(Chip fracture)および盤状骨折(Slab fracture)の診断が下された130の手根関節のうち、関節鏡下においてレントゲン像では発見できなかった新たな骨折片が認められたのは18%(23/130関節)に及びました。一方、レントゲン検査で異常が見られなかった七つの手根関節では、その100%(7/7関節)で関節鏡下において異常所見が認められ、これには手根骨間靭帯の断裂(3関節)、関節軟骨損傷(2関節)、破片骨折(1関節)、滑膜炎(1関節)などが含まれました。このため、馬の手根関節の診断では、レントゲン所見と関節鏡所見のあいだには乏しい相関(Poor correlation)しかないことが示され、正確な診断のためにはレントゲン検査および関節鏡検査の両方を要することが示唆されました。

この研究では、レントゲン検査で骨折の診断が下された130関節のうち、レントゲン像で見られた骨折片が関節鏡下では見つからなかったのは5%(6/130関節)でした。これらの骨片は、関節包(Joint capsule)のなかに埋没していたか、骨片変位度がごく僅か(Minimal fragment displacement)であったため関節軟骨の深部に存在していたものと考えられました。これらの骨片が、臨床的にどの程度の有意性(Significance)があるかに関しては論議があり、骨片をそのままにしておくか、関節包や関節軟骨を切開してでも積極的に摘出(Aggressive removal)するべきかは、賛否両論(Controversy)があると考察されています。

馬の手根骨破片骨折に関する他の文献では、レントゲン検査では発見できなかった骨折片が関節鏡下で新たに見つかりやすい箇所としては、遠位橈側手根骨(Distal radial carpal bone)および近位中間手根骨(Proximal intermediate carpal bone)が挙げられており(McIlwraith et al. JAVMA. 1987;191:531)、今回の研究では、この二箇所以外にも、背側近位第三手根骨(Dorso-proximal third carpal bone)に新たな骨片が見つかった症例もあったことが報告されています。このため、レントゲン上での潜在的骨折片(Occult fragment)が好発しやすいこれらの箇所は、レントゲン所見の有無に関わらず、関節鏡下で慎重に検査する必要があると考えられました。

この研究では、レントゲン検査で骨膜反応(Periosteal reaction)および骨溶解(Bone lysis)の診断が下された13関節では、その全てにおいて、関節軟骨変性(Cartilage degeneration)または骨軟骨片(Osteochondral fragment)が発見されました。これらの所見と関節内病態(Intra-articular pathology)の相関関係は、この論文内では評価されていませんが、全般的に見て、関節軟骨異常の重篤度(Severity of articular cartilage damage)とレントゲン所見は相関しない症例が多かった、という考察がなされています。

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