馬の文献:手根骨盤状骨折(Richardson. 1986)
文献 - 2016年07月24日 (日)
「馬の第三手根骨盤状骨折に対する関節鏡的整復の外科的手技」
Richardson DW. Technique for arthroscopic repair of third carpal bone slab fractures in horses. J Am Vet Med Assoc. 1986; 188(3): 288-291.
この症例論文では、馬の手根骨盤状骨折(Carpal slab fracture)に対する関節鏡的整復(Arthroscopic repair)の外科的手技の解説、および、第三手根骨(Third carpal bone)の盤状骨折を呈した23頭の症例における、手術後の治療成績が報告されています。
この研究の術式では、まず、関節鏡ポータルを総指伸筋腱(Common digital extensor tendon)と橈側手根伸筋腱(Extensor carpi radialis tendon)のあいだに設け、中間手根関節(Mid-carpal joint)の内部の骨折線を視認します。次に、骨折片(Fracture fragment)の両端にその幅を示すための注射針を刺してから、骨折片の中央部に螺子挿入角度を示す脊髄針(Spinal needle)を挿入します。そして、骨折片の厚さを示すもう一本の針を手根中手関節(Carpo-metacarpal joint)に刺し、これら四本の針の中心に穿刺術創(Stab incision)を設けてから、ドリルビットを挿入します。そして、術中レントゲン検査(Intra-operative radiography)を介して、螺子挿入角度を確認しながら、一本または二本の骨螺子を用いての骨折片整復が実施されました。
この研究では、23頭の症例の盤状骨折に対して、術中合併症(Intra-operative complications)を起こすことなく、最小限の外科的侵襲(Minimal surgical trauma)によって、堅固な骨折片の整復および圧迫(Fracture reduction/compression)が達成されました。そして、術後の六ヶ月以上にわたる経過追跡(Follow-up)ができた17頭のうち、レース復帰を果たしたのは59%(10/17頭)であったことが報告されています。このため、馬の第三手根骨の盤状骨折に対しては、関節鏡的螺子固定術によって、良好な骨折整復が達成され、中程度の予後が期待されることが示唆されました。
この研究は、馬の手根骨骨折の外科的療法において、関節鏡手術が応用され始めた初期の文献であるため、関節切開術(Athrotomy)に比較した場合の関節鏡手術の利点として、(1)骨折箇所の診断精度(Diagnostic accuracy)が高く関節面の再平坦化(Articular re-surfacing)を確認しやすいこと、(2)組織侵襲性が低いため術後の疼痛(Post-operative pain)が少なく美容的外観(Cosmetic appearance)も優れていること、(3)術後に競走能力を維持し易いこと、などが挙げられています。
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この症例論文では、馬の手根骨盤状骨折(Carpal slab fracture)に対する関節鏡的整復(Arthroscopic repair)の外科的手技の解説、および、第三手根骨(Third carpal bone)の盤状骨折を呈した23頭の症例における、手術後の治療成績が報告されています。
この研究の術式では、まず、関節鏡ポータルを総指伸筋腱(Common digital extensor tendon)と橈側手根伸筋腱(Extensor carpi radialis tendon)のあいだに設け、中間手根関節(Mid-carpal joint)の内部の骨折線を視認します。次に、骨折片(Fracture fragment)の両端にその幅を示すための注射針を刺してから、骨折片の中央部に螺子挿入角度を示す脊髄針(Spinal needle)を挿入します。そして、骨折片の厚さを示すもう一本の針を手根中手関節(Carpo-metacarpal joint)に刺し、これら四本の針の中心に穿刺術創(Stab incision)を設けてから、ドリルビットを挿入します。そして、術中レントゲン検査(Intra-operative radiography)を介して、螺子挿入角度を確認しながら、一本または二本の骨螺子を用いての骨折片整復が実施されました。
この研究では、23頭の症例の盤状骨折に対して、術中合併症(Intra-operative complications)を起こすことなく、最小限の外科的侵襲(Minimal surgical trauma)によって、堅固な骨折片の整復および圧迫(Fracture reduction/compression)が達成されました。そして、術後の六ヶ月以上にわたる経過追跡(Follow-up)ができた17頭のうち、レース復帰を果たしたのは59%(10/17頭)であったことが報告されています。このため、馬の第三手根骨の盤状骨折に対しては、関節鏡的螺子固定術によって、良好な骨折整復が達成され、中程度の予後が期待されることが示唆されました。
この研究は、馬の手根骨骨折の外科的療法において、関節鏡手術が応用され始めた初期の文献であるため、関節切開術(Athrotomy)に比較した場合の関節鏡手術の利点として、(1)骨折箇所の診断精度(Diagnostic accuracy)が高く関節面の再平坦化(Articular re-surfacing)を確認しやすいこと、(2)組織侵襲性が低いため術後の疼痛(Post-operative pain)が少なく美容的外観(Cosmetic appearance)も優れていること、(3)術後に競走能力を維持し易いこと、などが挙げられています。
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