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馬の文献:橈骨骨折(Baxter et al. 1991)

「成馬における橈骨開放骨折の整復」
Baxter GM, Moore JN, Budsberg SC. Repair of an open radial fracture in an adult horse. J Am Vet Med Assoc. 1991; 199(3): 364-367.

この症例論文では、橈骨の開放骨折(Open radial fracture)を呈した一頭の馬の症例における、外科的療法による治療成績が報告されています。

患馬は、四歳齢のアラビアン去勢馬(体重450kg)で、左前肢の橈骨開放骨折の病歴で来院し、レントゲン検査では、骨幹部から遠位部に達する螺旋状骨折(Spiral fracture)の発症と、骨折片の尾外側変位(Caudo-lateral displacement)、および、前腕内側部における開放骨折の発症が確認されました。

治療としては、橈骨の頭側および外側皮質骨面(Cranial and lateral cortex)への二枚のプレート設置による骨折整復、骨折部への海綿骨移植(Cancellous bone graft)、ロバート・ジョーンズ・バンテージの装着が行われ、全身性抗生物質療法(Systemic anti-microbial therapy)も併用されました。術後には、前腕内側部の創傷箇所からの滲出液排出(Exudate drainage)が見られたものの、手術から十日目までには治癒し、四週間目に退院しました。

その後は、馬房壁に患馬をつないて寝起きを制限する治療法のあと、三ヶ月にわたる馬房休養が行われ、九ヶ月目のレントゲン再検査では、良好な骨折治癒が確認されました。しかし、患馬は中程度の跛行(グレード3)、および前腕内側部の疼痛性腫脹を呈したため、手術から十ヶ月半目の再手術によって、二枚のプレートが除去されました。その結果、この三ヶ月目には跛行が消失し、患馬は障害飛越馬としての使役に復帰したことが報告されています。

この症例のような、成馬における橈骨完全骨折では、骨折の治癒遅延(Delayed-union)、癒合不全(Nonunion)、偽関節(Pseudoarthrosis)などに至る場合が多いことが知られており、開放骨折によって術後に細菌感染(Bacterial infection)を続発したケースでは、さらに予後が悪化すると考えられます。この研究の症例において、内固定術(Internal fixation)が奏功した要因としては、斜位骨折(Oblique fracture)の病態が外科的に堅固に整復されたことが挙げられており、また、サイズの大きい螺子(5.5mm)の使用、海綿骨移植の併用、適切な抗生物質療法の実施、スムーズな麻酔覚醒(Anesthesia recovery)なども関与したと考察されています。

一般的に、馬の開放骨折における外科的療法では、細菌感染および骨髄炎(Osteomyelitis)の合併症(Complication)を起こす危険が高いため、その治療に際しては、広範囲にわたる病巣清掃および洗浄(Extensive debridement and lavage)を行い、細菌培養(Bacterial culture)と感受性試験(Susceptibility test)に基づく抗生物質の選択が重要であると考察されています。また、抗生物質の局所灌流(Regional limb perfusion)や、抗生物質含有PMMAのインプラント周辺部への充填またはプレート接着法(Plate luting)などによって、骨髄炎を防げる症例もあると考えられました。

この症例では、骨折治癒後にも罹患部位の周辺部における慢性の疼痛性腫脹(Chronic painful swelling)が認められ、前腕部の診断麻酔(Diagnostic anesthesia)を介しての跛行改善によって、内固定部の感染が疼痛の原因であることが示唆されたため、二枚のプレートの外科的除去が選択されました。また、手術から十ヶ月以上にわたって続いた慢性疼痛が、プレート除去後には速やかに消失したことによっても、この内固定部の細菌感染に伴う疼痛発現が裏付けられると考えられました。

この論文は、成馬における橈骨の開放性完全骨折に対する外科的療法によって、十分な骨折治癒と良好な予後が達成された稀な症例であると言えます。しかし、同様な病態を呈した症例においても、術後合併症から予後不良となる危険性はやはり高いこと、そして、初診時の手術費だけでなく、長期間にわたる抗生物質療法やバンテージ装着、感染症の治療やプレート除去のための再手術に、高額な治療代が掛かることなどを、馬主や調教師と十分に議論して治療指針の同意を得ることが重要である、という考察がなされています。

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