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馬の文献:橈骨骨折(Fuerst et al. 2008)

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「模擬蹴傷による馬の橈骨および脛骨の骨折立体構造」
Fuerst AE, Oswald S, Jaggin S, Piskoty G, Michel S, Auer JA. Fracture configurations of the equine radius and tibia after a simulated kick. Vet Comp Orthop Traumatol. 2008; 21(1): 49-58.

この研究論文では、馬の橈骨(Radius)および脛骨(Tibia)における骨折の発症機序を検証するため、71本の馬の屍体肢(Cadaveric limb)に対する模擬的蹴傷(Simulated kick)として、馬蹄型をした金属棒による衝撃を与え、そのときの橈骨および脛骨の破損状態を、高速度カメラ(High-speed camera)と三次元レントゲン検査(Three-dimensional radiography)によって評価されました。

結果としては、不完全骨折(Incomplete fracture)を呈した骨は37%(=このうち全てが長軸性骨折:Longitudinal fracture)、完全骨折(Complete fracture)を呈した骨は63%で、この完全骨折のうち、蝶形骨片(Butterfly fragment)を伴ったのは52%、単純骨折(Simple fracture)であったのは48%であったことが示されました。また、単純完全骨折の内訳を見ると、斜位骨折(Oblique fracture)が85%と圧倒的に多く、次いで、横骨折(Transverse fracture)が10%、長軸性骨折が5%となっており、これらの骨折に長軸性の亀裂骨折片(Fissure fragment)を伴った骨は98%に上っていました。

一般的に、馬の橈骨および脛骨の蹴傷では、横骨折の際に生じた楔形骨片の尖端(Tip of wedge-shaped fragment)が、多くの場合に衝撃が掛けられた側に変位することが知られています。蹴傷によって骨に屈曲性負荷(Bending loading)が掛けられた時には、凸側(Convex side)の骨面には緊張力(Tension force)、凹側(Concave side)の骨面には圧迫力(Compressive force)が生じるため、横骨折線は緊張力面に起始するのに対して、斜位骨折線は圧迫力面に起始することもある、と推測されています。そして、横骨折線が緊張力面から圧迫力面へと伸展していって、凹側面に蝶形骨片を発生する際には、楔型部分の骨片は近位および遠位骨折端から圧迫を受けて押し出されることになり、その変位は凹側骨面の方向、つまり、衝撃が掛けられた側に生じる結果につながる、という考察がなされています。

この研究では、高速度カメラの映像において、静的な衝撃(Static impact)が掛けられた場合と異なり、模擬蹴傷のような急激な衝撃(Rapid impact)が掛けられた場合には、骨組織が吸収するエネルギーが大きくなることが示され、また、転倒時の人間の橈骨のように、蹴傷以外の様式で屈曲負荷が掛かる場合には、横骨折+蝶形骨片を生じ易いことが知られています。このため、大きな衝撃が急激に生じる場合(=馬の蹴傷)には、横骨折よりも斜位骨折の病態を呈しやすく(=この研究では85%)、その際には、蝶形骨片ではなく、亀裂骨折片を発生する可能性が高い(=この研究では98%)と考察されています。この結果から、馬の橈骨または脛骨の骨折に対する内固定(Internal fixation)においては、例えレントゲン像ではシンプルな骨折構造に見えたとしても、骨折線周囲に亀裂骨片を生じている可能性を十分に考慮することが重要である、と提唱されています。

この研究では、馬の橈骨と脛骨では、骨折の立体的構造に顕著な違いが見られ、橈骨では亀裂骨片を伴うことが多かったのに対して、脛骨では蝶形骨片を伴うことが多かったことが報告されています。一般的に、円柱形に近い馬の橈骨に比べて、三角柱形に近い馬の頚骨では、骨の断面積(Cross-sectional area)、皮質骨の厚み(Cortical thickness)、中立軸からの距離(Distance from neutral axis)などが大きいため、極性の慣性モーメント(Polar moment of inertia)の増加、つまり、強度(Strength)および硬度(Stiffness)の上昇につながると考えられます。このため、脛骨は橈骨よりも、骨折が発生する前に骨組織に吸収される負荷が大きくなり、衝撃が掛けられた側ではなく、反対側の皮質骨面(=張力面)から横骨折線を生じるケースが多くなり、その対側に当たる圧迫力面に蝶形骨片を形成する結果につながった、という考察がなされています。

この研究では、骨折発症の瞬間を高速度カメラで正確に捕らえるため、筋肉や腱などの軟部組織を全て取り除いた骨を使って実験が行われました。馬の長骨骨折を生じるほどの蹴傷を作用させるためには、蹴るほうの馬の蹄は秒速8m以上の速度で動いている必要があることが示されましたが、これに軟部組織が吸収する衝撃の量を加味すると、少なくともそれ以上に高い衝撃(=馬同士がより近付いている状態で蹴られた場合)を必要とすることになる、と考察されています。

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