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馬の文献:尺骨骨折(Jalim et al. 2009)

「子馬のタイプ4モンテジア骨折の整復」
Jalim SL, McKinnon AO, Russell TM. Case report: Repair of a type IV Monteggia fracture in a foal. Aust Vet J. 2009; 87(11): 463-466.

この症例論文では、タイプ4モンテジア骨折(Type-4 Monteggia fracture)に対してプレート固定術が応用された、一頭の子馬の症例が報告されています。モンテジア骨折とは、近位部三分の一における尺骨骨折(Fracture of the proximal third of ulna)に橈骨頭の脱臼(Dislocation of the head of radius)を伴う病態を指し、人間の整形外科的には以下の四種類に分類されます。タイプ1(伸展型:Extension type):尺骨幹が前方に折れ曲がり橈骨頭が肘関節伸展方向に脱臼した場合、タイプ2(屈曲型:Flexion type):尺骨幹が後方に折れ曲がり橈骨頭が肘関節屈曲方向に脱臼した場合、タイプ3(外側型:Lateral type):尺骨幹が外側に折れ曲がり橈骨頭が肘関節横方向に脱臼した場合、タイプ4(混合型:Combined type):尺骨幹と橈骨幹の両方が骨折して橈骨頭が脱臼した場合(通常は前方への脱臼)。

患馬は、四ヶ月齢のアングロアラブの牝馬で(体重173kg)、転倒から24時間にわたる左前肢の非負重性跛行(Non-weight-bearing lameness)の病歴で来院し、いわゆる肘脱落(“Dropped elbow”)の外観と、肘関節周囲の重度の腫脹(Marked swelling around elbow joint)を示しました。レントゲン検査では、尺骨中央部の変位性横骨折(Transverse displaced fracture of mid-ulnar)、近位尾側橈骨の骨端骨折(Caudo-proximal physeal fracture of radius)(=サルターハリスのタイプ4骨折)、および、肘関節(=上腕橈骨関節:Humero-radial joint)の完全脱臼(Complete luxation)を起こしたことが確認されました。

治療では、全身麻酔下(Under general anesthesia)において、深指屈筋の尺側頭(Ulnar head of the deep digital flexor muscle)と外側尺骨筋(Ulnaris lateralis muscle)のあいだからアプローチされ、一本の皮質骨螺子(Cortical bone screw)を尺骨から橈骨遠位骨片(Distal radial fragment)へと通すことで脱臼箇所が仮固定されました。その後、尺骨尾側皮質骨面(Ulnar caudal cortex)に一枚の七穴ダイナミックコンプレッションプレート(Dynamic compression plate)を設置することで、骨折と脱臼部位が整復され、尺骨幹部の細かい骨折片の除去(Removal small fracture fragments)と病巣清掃(Debridement)が行われました。

患馬は、平穏な麻酔覚醒(Uneventful anesthesia recovery)をして、手術から四日目に無事に退院しました。そして、術後の一ヶ月目までには、罹患肢への十分な体重負荷を示し、稀に患肢を引きずる動きを示したものの、レントゲン検査では、良好な骨折治癒が認められました。しかし、二ヶ月目のレントゲン検査では、肘関節の変性関節疾患(Degenerative joint disease)を示す関節面の不規則性(Irregular contour to articular surface)と、近位橈骨の骨端軟骨早期閉鎖(Premature closure of the proximal radial physis)が示され、上腕三頭筋の萎縮(Atrophy of the triceps brachii muscle)も認められました。

術後の十ヶ月目には、患馬は放牧地での正常歩様(Pasture soundness)を回復しましたが、軽度の手根関節および球節の屈曲性肢変形症(Mild flexural limb deformity of carpal/fetlock joints)が見られました。また、レントゲン検査では、進行した二次性骨関節炎(Advanced secondary osteoarthritis)の続発を示唆する、近位頭側橈骨における骨新生(New bone formation along the cranial aspect of proximal radius)、関節腔の狭窄化(Joint space narrowing)、軟骨下骨の硬化症(Subchondral bone sclerosis)、滑車切痕の重度骨再構築(Marked remodeling of trochlear notch)などの所見が見られ、運動への使役はできなかったことが報告されています。

一般的に、六ヶ月齢未満の子馬における尺骨骨折では、尺骨と橈骨が螺子で連結されて、この二つの骨の成長不同一性(Growth disparity)が起こると、尺骨異形成(Ulna dysplasia)を続発する危険性が高いことが知られています(Clem et al. Vet Surg. 1988;17:338)。しかし、この症例では、モンテジア骨折の整復のために、橈骨に達する螺子挿入は避けられなかったものの、骨端骨折が原因と思われる骨端軟骨早期閉鎖を生じていたことから、プレート除去は必要ないと判断されました。このため、医原性の肘関節亜脱臼(Iatrogenic elbow joint subluxation)は最小限に抑えられと推測されており、レントゲン再検査で示された肘関節の変性関節疾患は、もともとの重度関節性骨折(Severe articular fracture)に起因するものである、という考察がなされています。

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