FC2ブログ
RSS

新型コロナの全数検査をしない理由

2020_FC2_Blog_Topics_COVID_PCR_Pict1_2.jpg

新型コロナウイルスの全数検査をしないのは何故なのでしょうか?

もしも、日本国民の全員をPCR検査して感染者を隔離してしまえば、それ以上の感染拡大は無くなり、すぐに経済活動を再開できるハズです。それをしないのは、全数検査することの費用対効果が悪すぎて、実施する意義が低いからなのかもしれません。

前提として、検査の信頼性を知っておく必要がありますが、現状では、PCR検査の感度は70%で、特異度が99%であると言われています。感度とは、新型コロナに感染している方が陽性の検査結果を得る確率で、特異度とは、新型コロナに感染していない方が陰性の検査結果を得る確率です。一方、日本にいる新型コロナの感染者は、潜在的には10万人ぐらいだろうと言われています。日本の人口は1億2600万人と言われていますので、有病率は0.08%ということになります。

これに基づいて、日本国民の全員をPCR検査すると仮定した結果を表1にまとめました。これを見るとPCR検査の陽性的中率は5.3%しか無いのが分かります。つまり、PCR陽性となり、感染者として隔離される方々の九割以上は、実は感染していないことを意味しています。なぜこんなに効率が悪いかと言うと、99%という特異度が実は“低すぎる”からです。もともと非感染者は圧倒的に数が多いので、そのうちの1%が偽陽性(100%マイナス特異度)となってしまえば、非常に多数の偽陽性者が出てしまいます。

2020_FC2_Blog_Topics_COVID_PCR_Pict11.jpg

また、それ以上に問題となるのは、偽陰性の感染者が3万人も出てしまうことです。つまり、感度が70%しかないので、感染者の10人に3人は見逃されてしまい、これらの人たちが感染拡大させてしまいます。これでは全数検査の意味が無くなってしまいます。では、感染者を完全に見つけるにはどうすれば良いのでしょうか。ひとつの解決策は、PCR検査を一回ではなく十日間連続でおこなうようにして、十回の全てが陰性だったら陰性と見なすという決まりにすることです。

一回のPCR検査では、感染者が偽陰性となる可能性が30%ありますが(100%マイナス感度)、検査を十回にすればその確率は0.0006%まで減らせます。ですので、もともとの感染者が10万人いたとしても、見逃してしまう感染者数は理論上1人以下になりますので、日本中の感染者をすべて発見できることになります。しかし一方で、非感染者において検査が十回とも陰性になる確率は90.4%しかなく、1,200万人以上が偽陽性になってしまうのです。隔離のための場所や人手も足りなくなるでしょう(そもそも、日本国民の全員を十回検査するための費用も膨大になると思いますが)。

では、どうすれば良いのでしょうか?

もうひとつの解決策は、新型コロナが疑われる患者さんだけを検査することです。たとえば、典型的な臨床症状を示していたり、既知の感染者との濃厚接触がある方においては、新型コロナである可能性が一割ぐらいあるかもしれません。そうすると、表1の国民全員を検査する場合に比べて、予測される有病率が高くなります(0.08%→10%)。疫学的には、これを検査前確率の上昇と呼び、検査の信頼性をあげる有効な手法です。

2020_FC2_Blog_Topics_COVID_PCR_Pict13.jpg

仮に、新型コロナが疑われる患者さん2万人にPCR検査をおこない、そのなかの10%にあたる2,000人が感染者であったケースを表2に示します。これを見ると、偽陽性の人数を大きく減少させることが出来るため、陽性的中率が88%以上に増加します。この場合、PCR検査で陽性ならば、ほぼ間違いなく感染者であると推測でき、費用対効果の高い対策を取ることが可能となります。実際に、日本や諸外国がこのような方針に則ってPCR検査を実施しているのは、理にかなっていると考えられます。勿論、新型コロナが疑われる患者さんが素早く検査を受けられる体制は必須だと思います。

残念ながら表2の場合でも、2,000人の感染者のうち600人は偽陰性となってしまい、多数の感染者を見逃してしまう事には変わりません。つまり、検査が陰性であるイコール、確実に感染していないというお墨付きではない、という認識が大事であり、発熱や風邪症状がある限りは自宅待機を続けることが重要だと考えられます。結論としては、PCR検査はあくまで新型コロナが疑われる患者の診療において、ひとつの目安として用いるべきものであると言えると思います。

なお、私は感染症の専門家ではありませんので、あくまでPCR検査に関しての疫学的な数字のお話だけだと思って下さい。PCR検査の信頼性は手法によって変わりますし、抗体測定などの他の検査では、全数検査(またはランダム抽出検査)することの意義も異なってきます。

パンデミックは自然災害であり、人類みんなが被災者だと言えます。みんなで力を合わせて艱難を乗り切っていけることを願っています。

Copyright (C) nairegift.com/freephoto/, freedigitalphotos.net/, ashinari.com/ All Rights Reserved.
Copyright (C) Akikazu Ishihara All Rights Reserved.





プロフィール

Rowdy Pony

Author:Rowdy Pony
名前: 石原章和
性別: 男性
年齢: 40代
住所: 神奈川県
職業: 獣医師・獣医学博士
叩けよ、さらば開かれん!

ブログメニュー

推薦書籍

FC2カウンター

リンク

関連サイト

検索エンジン

お断わり

20130414_Blog_Message_Pict1.jpg
このサイトに掲載されているイラスト、画像、文章は、すべて管理主自身が作成したもの、もしくは、著作権フリーの素材リンクから転載したものです。

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
94位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
12位
アクセスランキングを見る>>

検索フォーム

関連サイト

QRコード

QR