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馬の文献:尺骨骨折(Kuemmerle et al. 2013)

「馬の尺骨骨折に対するロッキングコンプレッションプレート整復では橈骨外側皮質骨への偶発的侵入が起きている」
Kuemmerle JM, Kuhn K, Bryner M, Furst AE. Equine ulnar fracture repair with locking compression plates can be associated with inadvertent penetration of the lateral cortex of the radius. Vet Surg. 2013; 42(7): 790-794.

この研究論文では、馬の尺骨骨折(Ulnar fracture)に対するロッキングコンプレッションプレート整復(Repair with locking compression plates [LPS])の手技的難易性を評価するため、八対の屍体前肢に施した尺骨骨切術(Transverse ulnar osteotomy)に対して、LPS固定術、および、その後の画像解析(X線検査とCT検査)が行われました。

結果としては、LPS固定における遠位側3つの螺子孔に対して、皮質骨螺子(Cortex screws)を挿入した場合には、手技的問題は無かったのに対して、ロッキングヘッド螺子(Locking head screws)を挿入した場合には、4/8前肢および6/64螺子において、橈骨の外側皮質骨(Lateral cortex of the radius)に螺子が侵入したことが確認されました。この際、皮質骨螺子は、内側へ17度の角度で挿入されることで、外側皮質骨を避けていました。

このため、馬の尺骨骨折に対するLPS固定術では、遠位側の螺子孔には、ロッキングヘッド螺子の変わりに、皮質骨螺子を使うこと(挿入角度に自由が利くため)が推奨されています。また、遠位側の螺子孔に入れるロッキングヘッド螺子は、全長が短いものにして、外側皮質骨まで達するのを防いだり、ロッキングヘッド螺子の挿入角度を調整できるタイプのLPSを使う(値段は高価ですが)という対策も挙げられています。

この論文の限界点としては、尺骨骨折を再現するために実施された骨切術が、透視装置下での制御(Fluoroscopic control)によって実施されたため、骨折の状態が完全には標準化(Standardization)されていない点が挙げられています。また、金属インプラントが入った状態でのCT画像で、手術手技の評価を行うことの難しさも指摘されています。これらの点は、屠体肢を使った研究では避けられない限界点ですので、この論文のデータは、あくまで原則の証明(Proof of principle)であると認識して、実際の臨床症例の知見で裏付けを取っていく必要があると考えられます。

この論文では、橈骨の外側皮質骨への螺子侵入について、あったか無かったかの二択での結果(Binary outcomes)で評価されている問題点も指摘されています。これについては、どの程度の皮質骨損傷が起きたときに潜在的な臨床的関連性(Potential clinical relevance)があるのかが知られていない、という課題があります。しかし、過去の報告(Jackson et al. VCOT. 2011;24:57)では、皮質骨への部分的螺子挿入(Partial screw penetration)が生じただけでも、致死的橈骨骨折(Fatal radial fracture)が続発した事例も報告されており、術者は、尺骨に入れる螺子が橈骨の外側皮質骨に触れないよう、最大限に注意することが重要であると言えます。

この論文では、馬の尺骨骨折に対するロッキングコンプレッションプレート整復において、橈骨の外側皮質骨への螺子侵入が懸念される箇所では、無理にロッキングヘッド螺子を使用せず、躊躇なく皮質骨螺子に変更することが推奨されています。過去の研究では、骨折線の両側に少なくとも数本のロッキングヘッド螺子が設置されていれば、他を非ロッキングの螺子に置き換えても、物理的強度は大きくは損なわれないことが示されています(Gordon et al. VCOT. 2010;23:7)。加えて、尺骨骨折におけるプレート固定は、あくまでテンションバンドの機能に過ぎないことも考慮すると、可能な限りロッキングヘッド螺子の挿入ミスを避けることに努めるのが大事であると言えるでしょう。

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