新型コロナの終息は再来年?
日常 - 2020年05月02日 (土)

新型コロナウイルス感染症の終息は、2022年まで掛かるという学説が示されました。
Kissler SM, Tedijanto C, Goldstein , Grad YH, Lipsitch M. Projecting the transmission dynamics of SARS-CoV-2 through the postpandemic period. Science. 2020 Apr 14.
サイエンス誌に掲載されたこの論文では、再来年の2022年までは、持続的もしくは断続的な社会的距離政策(いわゆるSocial distance policy)が必要になる可能性があると述べられています。具体的には、いま行われている社会的距離政策を六月まで続けたあと、同様の政策を今年の八月と十月、2021年の四月と六月、および、2022年の四月と六月に実施することで、はじめて医療崩壊を招かないレベルまで感染を抑制できると述べられています。この際には、社会的距離政策および夏季気温上昇によって、ウイルスの感染力がそれぞれ60%および40%減少すると仮定されています。
この学説に関わる要因としては、①既知のコロナウイルス(二種類)のデータから新型コロナの動態予測をすること、②新型コロナに感染して回復した人の免疫が一年間は持続すること、③一人の感染者が感染させる人数(いわゆるR0)を2~2.5人とすること、等があります。このうち、①については、今回の新型コロナウイルスの微生物学的特徴が解明されていけば、予測がより悪化または良化するかもしれませんし、もし②の免疫持続期間が一年より長ければ、新型コロナウイルス感染の深刻度は下がります。一方、③のR0がもっと高かった場合には、いま発表されている感染者数よりも広く感染が拡大しており、かつそれが致命的ではないという現状推測ができます。
日本でも、外出や出勤の自粛による接触機会の八割減など、新型コロナに対する社会的距離政策が取られています。しかし、このような政策は、数ヶ月だけ我慢すれば終わりなのではなく、解除と再開を繰り返しながら数年間は続けなければいけない、という認識が大切なのかもしれません。なぜなら、大多数の人々(全人口の五割から七割?)が新型コロナに免疫を持つようになるまでは、社会的距離政策を止めるたびに感染爆発が何度でも起こるからです。勿論、新型コロナのワクチンが開発されれば、集団免疫による感染の抑え込みは容易になりますが、今年や来年のうちに全人口にワクチン接種できる可能性は低いと考えられます。
京都大学の山中伸弥教授は、新型コロナウイルスとの闘いは長いマラソンだ、と述べられています。また、新型コロナが終息するためには、ほとんどの人が感染して集団免疫という状態になるか、ワクチンや治療薬ができることが必要である、とも提唱されています。いずれにしても、暫くのあいだは、コロナウイルスと共存していく覚悟を持ちながら、根気強く感染症対策に取り組んでいくことが大切なのかもしれません。
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