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馬の文献:副鼻腔炎(Quinn et al. 2005)

「起立位での馬の前頭副鼻腔フラップ手術変法:60症例に対する外科的所見と治療成績」
Quinn GC, Kidd JA, Lane JG. Modified frontonasal sinus flap surgery in standing horses: surgical findings and outcomes of 60 cases. Equine Vet J. 2005; 37(2): 138-142.

この研究論文では、馬の副鼻腔疾患(Paranasal sinus disorders)に有用な外科的療法を検討するため、内視鏡検査(Endoscopy)およびレントゲン検査(Radiography)によって、原発性副鼻腔蓄膿症(Primary sinus empyema)、真菌性副鼻腔炎(Mycotic sinusitis)、進行性篩骨血腫(Progressive ethmoid hematoma)、副鼻腔嚢胞(Sinus cyst)、副鼻腔腫瘍(Sinus neoplasia)、等の推定診断(Presumptive diagnosis)が下され、起立位手術(Standing surgery)での前頭副鼻腔フラップ術変法(Modified frontonasal sinus flap)による治療が応用された60頭の患馬における、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

この研究で実施された術式では、起立位で鎮静(Sedation)および保定(Restraint)をした後、下眼窩縁の中央部から下方に2cmの位置(2cm below the mid-point of the lower orbital rim)に局所麻酔薬(Local anesthesic drug: 2mL Mepivacaine)を浸潤させてから、皮膚および骨膜を切開して、円鋸(Trephine)の中心ドリル刃で骨に穴を開けて、Foleyカテーテルが挿入されました。次に、内側眼角(Medial canthus)と鼻正中線(Nasal midline)の中間点に局所麻酔薬(20mL Mepivacaine)を浸潤させてから、鼻涙管(Nasolacrimal duct)(=内側眼角と鼻鋭利切痕のあいだに位置する)から軸側方向へ5cm、鼻正中線から外側へ4cm、左右の内側眼角を結んだ水平線から下方へ2cmの位置において、半楕円形に皮膚および骨膜を切開(Semi-elliptical incision of skin and periosteum)して、直径5cmの円鋸穴を設けることで、鼻道前頭副鼻腔(Conchofrontal sinus)へとアプローチされました。その後、骨性隔壁を穿孔することで吻側上顎副鼻腔(Rostral maxillary sinus)および腹側鼻道(Ventral conchal sinus)へとアプローチされ、それぞれの副鼻腔内の洗浄および病巣清掃(Debridement)を実施した後、円鋸術部位の骨膜および皮膚が縫合閉鎖されました。術後には、留置したFoleyカテーテルを介して、一日二回の副鼻腔洗浄が実施され、病態に応じて抗生物質(Antibiotics)または抗真菌剤(Antifungal agents)の注入が併用されました。

結果としては、一次性疾患(Primary disorders)の完治が達成された馬の割合は、原発性副鼻腔蓄膿症では78%(25/32頭)、真菌性副鼻腔炎では100%(8/8頭)、進行性篩骨血腫では83%(5/6頭)、副鼻腔嚢胞では75%(3/4頭)、副鼻腔腫瘍では33%(1/3頭)でした。これらの治療成功率は、他の文献のデータとも合致していました(Schumacher et al. Vet Surg. 1987;16:373, Schumacher et al. Vet Surg. 2000;29:173, Freeman et al. Vet Surg. 1990;19:122, Schumacher and Crossland. JAVMA. 1994;205:1312, Tremaine and Dixon. EVJ. 2001;33:283)。そして、経過追跡(Follow-up)ができた患馬のうち、術部の美容的外観(Cosmetic appearance)が非常に良い(Excellent)または良い&満足できる(Good or satisfactory)と判断された馬は、86%(48/56頭)に上った事が報告されています。このため、副鼻腔疾患の罹患馬に対しては、前頭副鼻腔フラップ手術変法を応用した外科的療法によって、充分な病巣治癒と良好な予後が期待され、術部の外観が良好に保たれる症例の割合が、比較的に高いことが示唆されました。

この研究では、円鋸術を介して、副鼻腔間の隔壁除去(Removal of inter-compartmental septum)が施されたことで、術後にはもう一箇所の小さな穴から通した一本のカテーテルのみを通して、副鼻腔の全域にわたる持続的な洗浄(Continuous sinus lavage)が可能であった事が報告されています。そして、円鋸孔は手術時の隔壁除去のためだけに用いられ、手術の最後に骨膜と一緒に縫合閉鎖された結果、円鋸孔を速やかに骨膜で覆うことが可能であるため、術部における過剰骨形成(Excessive bone formation)や縫合線骨膜炎(Suture periostitis)に伴う、顔面非対称性(Facial asymmetry)を予防できる事が示されました。このため、特にショーホース等の、美容的外観の維持が重要な症例に対しては、有用な術式の選択肢になりうる、という考察がなされています。また、大きな円鋸孔がずっと開存したままになってしまう事がないので、皮下組織の二次性細菌感染(Secondary bacterial infection of subcutaneous tissue)を生じる危険性が低く、頭部バンテージの必要性も少ない、という長所も指摘されています。

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