獣医療における新型コロナ対策
日常 - 2020年05月08日 (金)

獣医療においてどのような新型コロナ対策を取るべきなのでしょうか。
Interim Infection Prevention and Control Guidance for Veterinary Clinics Treating Companion Animals During the COVID-19 Response. Guideline of Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) for Pets & Other Animals by Centers for Disease Control and Prevention. (Content source: National Center for Immunization and Respiratory Diseases [NCIRD], Division of Viral Diseases)
新型コロナウイルスの感染拡大を予防するため、緊急事態宣言の発動に伴って、経済活動の自粛などの政策が取られています。しかし、獣医療は社会生活に必要不可欠な仕事ですので、緊急事態の状況下においても、適切な感染予防の対策を取りながら、獣医療活動を続けていく必要があります。ひとつの事例ではありますが、アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)は、獣医療における新型コロナ対策を提唱しており、それには以下のような事項が含まれます。
まず、獣医療の診療スタッフ(研修医やアニテクさん等)については、体調が悪いときには出勤しないことを徹底し、また、緊急性の低い診療行為は可能な限り延期することが挙げられています。そして、獣医師と飼い主との接触を最小限に抑えるため、動物病院への外来は完全な予約制にして、来院時には飼い主には車の中などで待機してもらい、問診は電話で取ることも有用です。さらに、再診の症例に対して継続治療用のクスリを処方するときには、電話連絡で経過を判断して、処方したクスリを郵送で届ける手法も勧められています。これは、ヒトの医療でも実施されている事項であると言えそうです。
加えて、犬や猫などの伴侶動物の診察においては、動物の体表や口腔粘膜等にもコロナウイルスが存在している可能性を考慮して、下表のような個人用保護具の使用が推奨されています。この表の特徴としては、飼い主だけでなく、診察の対象となる犬や猫においても、新型コロナに感染している疑いがあるか否かを考慮している点が挙げられます。さらにCDCの提唱では、獣医師が飼い主に指導をする事として、人間から動物への新型コロナウイルスの感染拡大が起こったという報告があること(非常に稀な事象ではあるが)が挙げられています。

このCDCの提唱に則って、飼い主が新型コロナ感染の疑い(または感染確認)があった時には、以下のような方針を取ることが推奨されています:①飼っているペットと接触しないこと、②そのペットが家族以外の来訪者と接触するのを避けること、③そのペットを散歩させる時にも周囲の人や犬と6フィート以上の距離を取ること、④他の犬が利用する公園やドッグランには立ち入らないこと、⑤猫の場合には家の外に出さないこと、⑥ペットに触れたあとは速やかに手指の洗浄・消毒をすること。これらは、人間における社会的距離政策に準じたものであると考えられます。
日本においても、全国や地方の獣医師会などから、社会的距離方策を保ちながら獣医療をおこなっていく方針が示されています。外来の完全予約制や、電話問診でのクスリ処方など、CDCから示された指針に共通している事項もありそうです。獣医療施設がクラスター感染の場所とならないように最大限の対処をしながら、動物と飼い主の健康と福祉に貢献していけるよう取り組んでいくのが獣医師の責務であると言えるのではないでしょうか。
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