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馬の文献:副鼻腔炎(Annear et al. 2008)

「副鼻腔嚢胞から眼球突出を続発した馬の一症例」
Annear MJ, Gemensky-Metzler AJ, Elce YA, Stone SG. Exophthalmus secondary to a sinonasal cyst in a horse. J Am Vet Med Assoc. 2008; 233(2): 285-288.

この研究論文では、副鼻腔嚢胞(Sinonasal cyst)から二次性に眼球突出(Exophthalmus)を続発した馬の一症例が報告されています。

患馬は、十三歳齢のミニチュアホースの牝馬で、進行性の片側性眼球突出症(Progressive unilateral exophthalmia)のため来院しました。眼科検査(Ophthalmological examination)では、眼球の吻外側変位(Rostral and lateral displacement of globe)、軽度結膜充血(Mild conjunctival hyperemia)、眼瞼浮腫(Blepharedema)が認められ、威嚇反射(Menace response)および瞳孔反射(Pupillary reflex)は正常で、生体顕微鏡検査(Biomicroscopy examination)と眼底鏡検査(Ophthalmoscopy)でも異常が見られませんでした。診断としては、血液検査や胸部レントゲン検査(Thoracic radiography)(=腫瘍に起因する眼球突出を除外診断するため)は正常で、CT検査(Computed tomography)が選択された結果、尾側上顎副鼻腔(caudal maxillary sinus)と前頭鼻道(Conchofrontal sinus)の領域に、明らかに境界を画定する腫瘤(Clearly demarcated mass)が発見されました。また、蝶形骨と口蓋骨の溶解(Lysis of the sphenoid and palatine bones)、および、腫瘤の眼球後部域への拡大(Extension into the retrobulbar space)や篩板接触(Contact with the cribriform plate)も確認されました。

治療としては、腫瘤の外科的切除(Surgical resection)が必要であると判断され、全身麻酔下(Under general anesthesia)での横臥位(Lateral recumbency)において、前頭副鼻腔の骨形成フラップ術(Frontonasal osteoplastic flap)が行われました。そして、上顎副鼻腔と前頭鼻道に認められた嚢胞を、ロンジュールおよび掻爬子を用いて切除しましたが、腫瘤の拡大域が広く、篩板への浸潤も見られた事から、全ての嚢胞組織の切除を達成できませんでした。その後は、ガーゼを副鼻腔内に詰めてから、骨フラップの整復および皮膚切開創の縫合閉鎖が実施されました。患馬は、術後の48時間目には既に眼球突出の改善を示し、術後の三日目に退院を果たしました。そして、手術から四ヶ月目の再検査では、眼球突出症および眼瞼浮腫が完治している事が確認され、副鼻腔の再発(Recurrence)やその他の術後合併症(Post-operative complications)の続発も見られませんでした。

一般的に、馬における副鼻腔嚢胞は、副鼻腔疾患全体の13%を占めることが知られていますが(Tremaine and Dixon. EVJ. 2001;33:274)、通常は顔面腫脹や変形(Facial swelling or distortion)を呈する事はあっても、今回の症例のような眼球突出の症状を示すことは稀であると考えられています(Woodford and Lane. EVJ. 2006;38:198)。馬の副鼻腔嚢胞の病因論(Etiology)は不明瞭な場合が多いものの、慢性炎症(Chronic inflammation)や外傷(Trauma)に起因して生じる副鼻腔小孔の通過障害(Obstruction of sinus ostium)から、嚢胞構造が形成されるという仮説がなされています。そして、今回の症例では、CT検査を介して、嚢胞の浸潤範囲を確定することで、外科的切除の適切な術式検討が可能となり、良好な治療効果が誘導された、という考察がなされています。

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