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馬の文献:副鼻腔炎(Dixon et al. 2012a)

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「馬の副鼻腔疾患:1997~2009年における200症例の長期的調査:補助的診断所見と複数副鼻腔区画の関与」
Dixon PM, Parkin TD, Collins N, Hawkes C, Townsend N, Tremaine WH, Fisher G, Ealey R, Barakzai SZ. Equine paranasal sinus disease: a long-term study of 200 cases (1997-2009): ancillary diagnostic findings and involvement of the various sinus compartments. Equine Vet J. 2012; 44(3): 267-271.

この研究論文では、馬の副鼻腔疾患(Paranasal sinus disease)の病態把握、および、有用な診断法を検討するため、1997~2009年にかけて、原発性副鼻腔炎(Primary sinusitis)、歯科疾患に起因する二次性副鼻腔炎(Secondary dental sinusitis)、副鼻腔嚢胞(Sinus cyst)、副鼻腔損傷(Sinus trauma)、副鼻腔腫瘍(Sinus neoplasia)、真菌性副鼻腔炎(Mycotic sinusitis)、進行性篩骨血腫(Progressive ethmoid hematoma)等の診断が下された200頭の患馬の、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

この研究では、鼻腔からの内視鏡検査(Nasal endoscopy)において、鼻腔副鼻腔開口部(Sino-nasal ostium)からの浸出液漏出が認められた馬は78%に及び、副鼻腔炎の存在を確認するのにシンプルかつ正確な診断法(Simple and accurate diagnostic method)であることが示されました。また、15%の症例においては、内視鏡下で鼻腔副鼻腔瘻孔(Sino-nasal fistula)が示され、この病態は腹側鼻道(Ventral conchal sinus)および吻側上顎副鼻腔(Rostral maxillary sinus)における慢性炎症(Chronic infection)や膨満(Distension)に起因すると考えられており(O’Leary and Dixon.EVE. 2011;23:148)、多くは中鼻管の尾外側部(Caudo-lateral aspect of middle meatus)に開孔していました。一方、副鼻腔嚢胞(Sinus cyst)の罹患馬のうち、鼻腔副鼻腔開口部から嚢胞が認められた馬は5%に留まり、他の文献でも25%にしか過ぎないと報告されています(Dixon et al. EVJ. 2012;44:272)。

この研究では、前頭鼻道の円鋸孔(Conchofrontal sinus trephination hole)から挿入した内視鏡を介して、腹側鼻道嚢(Ventral conchal bulla)を穿孔(Fenestration)させる副鼻腔鏡検査(Sinuscopy)によって、腹側鼻道および吻側上顎副鼻腔の視認や外科的アプローチが達成され、副鼻腔洗浄(Sinus lavage)に不応性を示した慢性の副鼻腔炎の治療に有効である事が示されました。この結果は、過去の文献の知見とも合致しており(Perkins et al. Vet Surg. 2009;38:607)、また、副鼻腔鏡検査は、真菌性副鼻腔炎や進行性篩骨血腫の発見にも有用であった事が報告されています。一方で、他の文献では、副鼻腔鏡検査を介しての馬の歯科副鼻腔炎の診断は難しいという提唱がなされている反面(Perkins et al. Vet Surg. 2009;38:613)、歯科疾患に起因する二次性副鼻腔炎から続発した肉芽腫(Dental sinusitis-related granulomas)が診断できたという報告もあります(Perkins and Schumacher. Equine Dentistry, 3rd eds. 2010:231)。

この研究では、頭部のレントゲン検査(Head radiography)において、浸出液や膿、血液などの貯留(Accumulation of exudate, pus, or blood)を示す、水平液体線(Horizontal fluid line)が認められた馬は48%でしたが、この所見が呈した症例の割合は、原発性副鼻腔炎(60%)のほうが、歯科副鼻腔炎(40%)や副鼻腔嚢胞(38%)よりも高く、また、亜急性の原発性副鼻腔炎(69%)のほうが、慢性の原発性副鼻腔炎(46%)よりも高かった事が示されました。他の文献でも、水平液体線の発現率は、原発性副鼻腔炎(59%)のほうが、歯科副鼻腔炎(43%)よりも高いことが報告されています(Gibbs and Lane. EVJ. 1987;19:474)。また、骨組織や粘膜の肥厚化(Bone and mucosal thickening)を示す、拡散性放射性混濁(Diffuse radio-opacity)が認められた馬は63%でしたが、この所見が呈した症例の割合は、副鼻腔嚢胞(88%)や歯科副鼻腔炎(75%)において顕著に高く、また、慢性の原発性副鼻腔炎(71%)のほうが、亜急性の原発性副鼻腔炎(53%)よりも高かった事が報告されています。一方、歯根先端部の変化(Dental apical changes)が認められた馬は、症例全体では32%であったのに対して、歯科副鼻腔炎では85%と顕著に高い傾向が認められました。しかし、他の文献では、歯根組織と骨&粘膜肥厚が重複する場合が多いことから、レントゲン像上での歯根先端部変化の確認は、それほど感度(Sensitivity)が高くないという知見も示されています(Weller et al. EVJ. 2001;33:49, Townsend et al. EVJ. 2011;43:170)。

この研究では、核医学検査(Nuclear scintigraphy)において、歯科副鼻腔炎の症例が罹患している歯根部に、局所性の放射性核種取り込みの増加(Local increase of radionuclide uptake)が認められ、レントゲン検査において歯根先端部の変化が顕著でない患馬において、罹患している歯を確定する(=抜く歯を確かめる)ときに有用であった事が示されました。一方、原発性副鼻腔炎の症例のうち二~三割でも、歯槽骨(Alveolar bone)の箇所における、限局性の放射性核種取り込みの増加が見られた事が報告されており、核医学検査の所見のみから、歯根感染(Apical infection)の確定診断(Definitive diagnosis)を下すのは難しい、という警鐘が鳴らされています。一方で、他の文献では、歯科疾患を伴わない副鼻腔炎では、抜歯(Teeth extraction)を行わなくても、病巣清掃(Debridement)や副鼻腔洗浄によって炎症が改善する過程で、自然に放射性核種取り込みが減退していく事が報告されており(Dixon et al. 2012)、術後モニタリングとして核医学再検査することで、歯科副鼻腔炎を除外診断(Rule out)できると考えられています。

この研究では、それぞれの副鼻腔区画に対して病態が波及していた馬の割合は、尾側上顎副鼻腔では78%、吻側上顎副鼻腔では61%、腹側鼻道では54%、前頭鼻道では48%となっており、上顎副鼻腔における罹患率が高い傾向が認められました。このうち、距離的に近く互いに連絡し合っている区画(例:吻側上顎副鼻腔と腹側鼻道)においても、必ずしも両方に病変が存在している分けではない場合もあり、この理由としては、粘膜肥厚(時には厚さ15mm以上に達する)によって区画間の連絡が遮断されて、病態波及が塞き止められたケースもありうる、という考察がなされています。一方、濃縮された膿液(Inspissated pus)(=副鼻腔洗浄による排出が難しい)が認められた割合は、腹側鼻道では46%と最も高く、吻側上顎副鼻腔では27%、前頭鼻道では14%に留まっており、これは腹側鼻道における腹側排液度合いの低さ(Low ventral drainage)が発現素因(Predisposing factor)になっている可能性が示唆されています。

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