馬の文献:篩骨血腫(Laing et al. 1992)
文献 - 2020年05月23日 (土)
「馬の進行性篩骨血腫」
Laing JA, Hutchins DR. Progressive ethmoidal haematoma in horses. Aust Vet J. 1992; 69(3): 57-58.
この研究論文では、進行性篩骨血腫(Progressive ethmoidal haematoma)を呈した14頭の患馬における、症状、診断法、および、治療成績が報告されています。
この研究では、進行性篩骨血腫の罹患馬のうち、鼻汁排出(Nasal discharge)を呈した馬が13頭に上り(残りの一頭は呼吸器喘鳴のみを呈した)、これらの鼻汁の組成としては、血様性(Sanguinmus)が七頭、自発性出血(Spontaneous hemorrhage)が四頭、粘膿性(Mucopurulent)が一頭、粘膿性と出血性(Mucopurulent and haemorrhagic)が一頭、等となっており、このうち一頭は、両側性(Bilateral)の鼻汁排出が見られました。
また、内視鏡検査(Endoscopy)では、篩骨領域における緑色~黄色に変色(Greenish-yellow discoloration)した表面の滑らかな血腫病変が認められ、特に呼吸器喘鳴(Respiratory stridor)を示した馬においては、病変が総鼻管まで腹側拡張(Extended ventrally into the ipsolateral common nasal meatus)している所見が見られました。さらに、頭部レントゲン検査(Head radiography)では、篩骨鼻甲介(Ethmoid turbinate)の領域における軟部組織腫瘤(Soft tissue mass)が確認され、骨組織への関与(Bony involvement)は見られませんでした。
治療としては、八頭に対して外科的療法が選択され、全身麻酔下(Under general anesthesia)での前頭鼻道副鼻腔の骨フラップ術(Conchofrontal sinus bone flap)を介して、血腫および周辺篩骨組織が切除され、6~9リットルの輸血(Blood transfusion)が併用されました。そして、全頭に対して副鼻腔のガーゼ充填および気管切開術(Tracheotomy)が実施され、二頭に対しては頚動脈結紮(Carotid artery ligation)による止血も試みられました。
結果としては、手術されなかった六頭のうち、二頭は初診時(At initial diagnosis)に安楽死(Euthanasia)となりました。そして、保存性療法(Conservative treatment)が選択された残りの四頭のうち、三頭では血腫の悪化から6~24ヵ月後に安楽死となり、最後の一頭は13ヶ月後における内視鏡での再検査によって、病変部の完治が確認されました。つまり、経過追跡(Follow-up)できた馬において、非外科的治療による治癒率は25%(1/4頭)であった事が示されました。
一方、外科的療法が選択された八頭のうち三頭は、麻酔覚醒中(During anesthesia recovery)の肺浮腫(Pulmonary edema)、術後の大結腸捻転(Large colon torsion)、下痢症(Diarrhea)によって安楽死となりました。そして、他の五頭は治療前の用途へ復帰しましたが、このうち三頭では、24~48ヵ月後に血腫を再発したため安楽死され、残りの二頭は病巣部の完治を達成しました。つまり、経過追跡できた馬において、外科的治療による治癒率は40%(2/5頭)であった事が示されました。
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この研究では、進行性篩骨血腫の罹患馬のうち、鼻汁排出(Nasal discharge)を呈した馬が13頭に上り(残りの一頭は呼吸器喘鳴のみを呈した)、これらの鼻汁の組成としては、血様性(Sanguinmus)が七頭、自発性出血(Spontaneous hemorrhage)が四頭、粘膿性(Mucopurulent)が一頭、粘膿性と出血性(Mucopurulent and haemorrhagic)が一頭、等となっており、このうち一頭は、両側性(Bilateral)の鼻汁排出が見られました。
また、内視鏡検査(Endoscopy)では、篩骨領域における緑色~黄色に変色(Greenish-yellow discoloration)した表面の滑らかな血腫病変が認められ、特に呼吸器喘鳴(Respiratory stridor)を示した馬においては、病変が総鼻管まで腹側拡張(Extended ventrally into the ipsolateral common nasal meatus)している所見が見られました。さらに、頭部レントゲン検査(Head radiography)では、篩骨鼻甲介(Ethmoid turbinate)の領域における軟部組織腫瘤(Soft tissue mass)が確認され、骨組織への関与(Bony involvement)は見られませんでした。
治療としては、八頭に対して外科的療法が選択され、全身麻酔下(Under general anesthesia)での前頭鼻道副鼻腔の骨フラップ術(Conchofrontal sinus bone flap)を介して、血腫および周辺篩骨組織が切除され、6~9リットルの輸血(Blood transfusion)が併用されました。そして、全頭に対して副鼻腔のガーゼ充填および気管切開術(Tracheotomy)が実施され、二頭に対しては頚動脈結紮(Carotid artery ligation)による止血も試みられました。
結果としては、手術されなかった六頭のうち、二頭は初診時(At initial diagnosis)に安楽死(Euthanasia)となりました。そして、保存性療法(Conservative treatment)が選択された残りの四頭のうち、三頭では血腫の悪化から6~24ヵ月後に安楽死となり、最後の一頭は13ヶ月後における内視鏡での再検査によって、病変部の完治が確認されました。つまり、経過追跡(Follow-up)できた馬において、非外科的治療による治癒率は25%(1/4頭)であった事が示されました。
一方、外科的療法が選択された八頭のうち三頭は、麻酔覚醒中(During anesthesia recovery)の肺浮腫(Pulmonary edema)、術後の大結腸捻転(Large colon torsion)、下痢症(Diarrhea)によって安楽死となりました。そして、他の五頭は治療前の用途へ復帰しましたが、このうち三頭では、24~48ヵ月後に血腫を再発したため安楽死され、残りの二頭は病巣部の完治を達成しました。つまり、経過追跡できた馬において、外科的治療による治癒率は40%(2/5頭)であった事が示されました。
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