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馬の文献:篩骨血腫(Marriott et al. 1999)

「三頭の馬の進行性篩骨血腫に対するホルマリン病巣内注射による治療」
Marriott MR, Dart AJ, Hodgson DR. Treatment of progressive ethmoidal haematoma using intralesional injections of formalin in three horses. Aust Vet J. 1999; 77(6): 371-373.

この研究論文では、進行性篩骨血腫(Progressive ethmoidal hematoma)に対する有用な治療法を検討するため、内視鏡検査(Endoscopy)およびレントゲン検査(Radiography)によって篩骨血腫の診断が下され、ホルマリン病巣内注射(Intralesional injections of formalin)による治療が応用された三頭の患馬における、医療記録(Medical records)の解析が行われました。この研究では、起立位手術(Standing surgery)での鎮静(Sedation)および保定(Restraint)のあと、鼻孔(Nostril)から鼻腔内に進展させた内視鏡、または、円鋸孔(Trephine hole)から副鼻腔内に進展させた内視鏡の脇を通すように、先端に針の着いたチューブを挿入して血腫病変を穿刺することで、4%ホルマリンが病巣内注入されました。

結果としては、三頭の患馬のうち二頭では、三回もしくは六回のホルマリン注入によって原発病巣の完治(Complete resolution of primary lesion)が達成され、九ヵ月後または27ヵ月後の内視鏡検査では、血腫の再発(Recurrence)は認められませんでした。一方、残りの一頭では、六回のホルマリン注入によって病巣治癒したものの、八ヵ月後に血腫の再発が起こり、さらに五回のホルマリン注入によって、病巣部が完治したことが報告されています。このため、進行性篩骨血腫の罹患馬に対しては、内視鏡検査を介したホルマリンの病巣内注射によって、充分な病変治癒が達成され、良好な予後を示す馬の割合が高いことが示唆されました。

一般的に、馬の進行性篩骨血腫の治療では、様々な外科的焼烙(Surgical ablation)が試みられており、血腫の再発率は22~44%であることが示され(Cook and Littlewort. EVJ. 1974;6:101, Specht et al. JAVMA. 1990;197:613, Greet. EVJ. 1992;24:468)、また、レーザー焼烙(Laser ablation)を応用した術式では、術中出血の減退(Reduced intra-operative hemorrhage)と再発率の低下が期待できることが報告されています(Tulleners. Equine Surgery. 1992:443)。一方、ホルマリン注入による化学的焼烙(Chemical ablation)を用いた術式では、全身麻酔(General anesthesia)を要することなく血腫を治療でき、再発率(Recurrence rate)も非常に低いという知見が示されており(Schumacher et al. Vet Surg. 1998;27:175)、今回の研究における治療成績とも合致していました。

この研究では、内視鏡のすぐ脇にチューブを通せる手製の装置(Custom-made apparatus)を作成して、針の付いたチューブを病巣部まで到達させて、血腫の穿刺およびホルマリン注入を行う手法が実施されました。しかし、三頭の症例のうち一頭では、この曲がった装置内にチューブを推し進める作業が難しく、目視下で直接的に病巣穿刺する方法に切り替えられました。他の文献では、内視鏡の生検チャンネルの中を通過させられる細いチューブが使用されており(Schumacher et al. Proc AAEP. 1997;43:244, Schumacher et al. Vet Surg. 1998;27:175)、チューブが充分な強直性(Adequate stiffness)を持っていれば、内視鏡下で操作したほうがより制御の効いた穿刺および注入作業(Controlled puncture and injection procedures)が実施できる、という考察がなされています。

この研究では、初期治療時には二週間おきにホルマリン注入した後、血腫病巣の退縮(Shrinkage of hematoma lesion)が進むにつれて、より長い間隔でホルマリン注入を繰り返す治療指針が選択されました。一方、他の文献では、三~四週間おきのホルマリン注入が推奨されています。また、ホルマリン注入を終了するタイミングについては、臨床症状が見られなくなり、病巣が充分に縮んだ時点で治療終了とされるケースもありますが、小さくなった血腫が再び膨満して再発に至る場合もあることから(Schumacher et al. Vet Surg. 1998;27:175)、可能な限りにおいて、血腫病変が完全に消失(Complete elimination)するまでホルマリン注入を繰り返すことが望ましい、という提唱がなされています。

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