FC2ブログ
RSS

新型コロナ感染のファクターXとは?

20200607_Blog_Daily022_COVID_FactorX_Pict1.jpg

新型コロナウイルス感染症による死者数が、日本では極端に少ないという謎が議論されています。

六月初めの時点での、新型コロナによる死者数は、日本では1,000人弱であるのに対して、世界最多の米国では10万人を超えており、約100倍の差があります。感染者数を見ても、日本では1万7,000人弱なのに、米国では約200万人で、やはり100倍以上の差となっています。このように、日本における新型コロナの死者数や感染者数が少ない理由としては、①マスク着用などの高い衛生意識、②ハグや握手をしない習慣、③家の中で靴を履かない文化、④医療保険制度の充実、などが挙げられています。

ただ、このうち①に関しては、そもそも、マスクでは感染を完全には防げませんし、ここ数ヶ月は米国でもマスク着用されていますが、感染拡大が日本並みに緩やかな訳ではありません。また②については、米国人の普段の生活を考えても、職場の同僚や親友以外の普通の友人に会ったときには、常にハグや握手をする訳ではありません。③でいう家の中で靴を履く文化に関しても、いくら米国人でも、靴底が汚ければ玄関でキレイにしたり脱いだりしますし、家の中が埃や土砂だらけとは思えません。一方、④については、確かに保険が無くて病院に行けない家庭も多いので、死者数が増える要因になりうるとは思います。

一方で、日本のほうが米国よりも、新型コロナの影響が悪化しそうな要素もあるような気がします。まず、日本の高齢化社会は、米国よりも遥かに進んでおり、同じように高齢者の多いイタリアでの死者数がかなり多いことを考えると、日本の死者数も多くなりそうな気がします。また、車社会の米国に比べると、公共交通機関に移動手段を依存する日本社会では、満員電車で多数の他人と密接することが非常に多く、それこそ、ハグするよりも、よほど感染拡大につながりそうな印象があります。細かい点では、米国はカード社会で、お札やコインを触る頻度が低いので、そこから接触感染する可能性は低くなるのかもしれません。

20200607_Blog_Daily022_COVID_FactorX_Pict2.jpg

このように、社会や生活文化の違いなどで、百倍もの死者数の差を説明するのは難しいような気がします。たとえば、例年のインフルエンザによる死者数は、日本では3,000~5,000人で、米国では1万5,000人程度であり(米国の人口は日本の3倍ぐらい)、100倍もの差がある訳ではありませんので、やはり、新型コロナに特有の要因が存在すると考えるのが自然です。そんな中で、京都大学の山中伸弥教授が提言しているのが、日本人には新型コロナに抵抗力を持つ未知の要素があるというもので、これは「ファクターX」と呼ばれています。

このファクターXの候補としては、ヒト白血球抗原(HLA)の違いが挙げられています。HLAは白血球の血液型のことで、一般的なA/B/O等の赤血球の血液型よりも種類が多く、ウイルスの断片がHLAと作用することで、白血球はウイルスを認識して攻撃します。このHLAは人種によって異なりますので、日本人の持つHLAが、今回の新型コロナに対する免疫の働きを活発にするのに役立っている可能性があると言われています。この学説ならば、米国にいる日系米国人のほうが、他の米国人に比較して、感染率や死亡率が半分程度と少ないことも説明できるのかもしれません。

もうひとつ議論されているのは、既存の免疫獲得の状況に差異があったという点で、たとえば、BCG接種を義務化していたことで、自然基礎免疫の増強につながり、不特定の病原体に対する抵抗性が高まったという仮説も立てられています。また、日本を含め多くの東アジア諸国には、今回の新型コロナが発生する以前から、類似のウイルスや他のコロナウイルス等が存在していたために、これらのウイルスによる季節性の風邪を乗り越えることで得た獲得免疫によって、新型コロナへの耐性も得ることが出来るという説です。

20200607_Blog_Daily022_COVID_FactorX_Pict3.jpg

もちろん、正論としては、新型コロナに対する日本の政府や国民の取り組みが、感染者数や死者数の減少につながっているケースも考えられます。日本の新型コロナ対策では、諸外国にはないクラスター班による感染経路の対策が取られていますし、いわゆる「3密」を防ぐという概念も日本以外の国では殆ど提唱されていません。戦時中のような厳格な都市封鎖が行われていない日本において、感染拡大が短期間で効率的に抑えられた要因として、このような防疫対策が奏功した可能性もあるのではないでしょうか。

一方で、ひとつ心配な点としては、日本と欧米諸国では、蔓延している新型コロナのタイプが異なることが、感染者数や死者数が少ない理由であるという説です。この裏付けとしては、日本における感染者数の推移を、感染が判明した日にちではなく、感染が起こったと予測される日にちでプロットした場合、感染のピークは3月27日頃となっているのですが、実はこれは、緊急事態宣言が出されたタイミングではなく、海外からの入国者対策が本格化された時期に当たっていた、という事実です。つまり、今後、日本での感染拡大が軽いことに油断して、海外からの入国制限を緩めてしまうと、毒性の高い新型コロナが侵入してくるリスクも在り得るのかもしれません。

いずれにしろ、未知の要素「ファクターX」が何であるかは解明されていませんし、感染実験で検証する訳にもいきません。ですので、新型コロナは日本人にとってはまったく怖くない、という油断をすることなく、対策を怠らないよう努めていく必要があるのだと思います。山中伸弥教授は、Web情報発信のなかで、ソーシャルディスタンスを「思いやり距離」と訳され、正しい行動を粘り強く続ければ、ウイルスとの共存が可能になると提言されています。社会全体のために、新しい当たり前を根気強く継続していくことが大切なのではないでしょうか。

Copyright (C) nairegift.com/freephoto/, freedigitalphotos.net/, pakutaso.com/, picjumbo.com/, pexels.com/ja-jp/ All Rights Reserved.
Copyright (C) Akikazu Ishihara All Rights Reserved.




プロフィール

Rowdy Pony

Author:Rowdy Pony
名前: 石原章和
性別: 男性
年齢: 40代
住所: 神奈川県
職業: 獣医師・獣医学博士
叩けよ、さらば開かれん!

ブログメニュー

推薦書籍

FC2カウンター

リンク

関連サイト

検索エンジン

お断わり

20130414_Blog_Message_Pict1.jpg
このサイトに掲載されているイラスト、画像、文章は、すべて管理主自身が作成したもの、もしくは、著作権フリーの素材リンクから転載したものです。

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
132位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
18位
アクセスランキングを見る>>

検索フォーム

関連サイト

QRコード

QR