FC2ブログ
RSS

新型コロナはヒト以外の動物にも感染する?

20200612_Blog_Daily023_COVID_Animals_Pict1.jpg

新型コロナウイルスは、ヒト以外の動物にも感染するのでしょうか?全米獣医学協会(AVMA)は、ヒトと動物とのあいだの新型コロナの伝搬について見解を出しており、「簡単には感染しない」という結論のようです。

まず、事実関係をまとめると、今年の元旦から六月第一週までの約五ヶ月間で、新型コロナに陽性と判定されたペットは、世界中で20匹以下だったそうです。ヒトの感染者数が700万人以上であることを考えると、これは非常に少ない数であると言えます。また、このようなPCR検査による陽性反応は、ペットの呼吸器粘膜に新型コロナウイルスが付着していたことを示すのみであり、動物の体内でウイルスが増殖して病気を引き起こす(=つまり感染する)ことの証拠にはなりません。

世界で初めて、新型コロナに陽性と判定されたペットは、香港の犬2匹と猫1匹だったそうです(飼い主が新型コロナに感染したために検査を実施)。これらの動物はいずれも呼吸器症状は示しておらず、14日間の隔離後の再検査では陰性だったようです。その後、米国の猫2匹と犬1匹が、新型コロナに陽性であったことが報告され、これらの動物は呼吸器症状を示していましたが回復しており、新型コロナの陽性反応と呼吸器症状との因果関係は証明されていません。

一方、ペット以外の動物を見ると、米国の動物園のトラ1頭が新型コロナ陽性を示したという報告があり、これは飼育係からウイルスが伝搬したと考えられています。このトラは、軽度の呼吸器症状を示していたそうですが死亡はしていません。一方で、オランダでは、ミンク数匹に新型コロナ感染が疑われ、そのうち幾つかの事例では、ミンクからヒトへの感染が成立した可能性があるという知見が示されています。このため、オランダでは、新型コロナの発生が疑われるミンク農場からは、ミンクの移動を制限する措置が取られているそうです。

20200612_Blog_Daily023_COVID_Animals_Pict2.jpg

実は、ヒトの新型コロナが、ヒト以外の動物にも感染できることは、既に実験的に証明されており、これには、猫やフェレット等が含まれます。しかし、このような実験は、自然界ではありえない程の多量のウイルスを暴露させたときに生じる現象であり、実際に、新型コロナに感染したヒトからのウイルス感染が成立することの証拠にはなりません。一方で、ペット症例のELISA検査によって、血液中の抗体濃度が上昇していることが確認された場合には、少なくとも、ペットがヒトの新型ウイルスに対して免疫応答を起こしたことのエビデンスになり、自然感染が生じた可能性が示唆されると言われています。ただこの場合も、ペット体内でウイルスが増殖できるか否かとは別の議論であり、勿論、ペットがヒトへの感染源になるほど多量のウイルスを排出できるかどうかの証明ではありません。

以上の事項を踏まえた上でのAVMAの指針としては、新型コロナ感染者がペットを飼っていた場合、念のため、そのペットがヒトや他のペットと濃厚接触するのを避けることが推奨されていますが、新型コロナが発生した家庭からペットを排除する必要は全く無い、と提言されています。要は、あまり心配しなくて良いというのがAVMAの結論のようです。

しかし、私見としては、100%安心してしまうのも問題のような気がします。なぜなら、ウイルスは常に遺伝子変異をするものだからです。つまり、これだけ世界中でヒトの新型コロナが拡大している状況では、ヒトの体内で起きた変異によって、他の動物のあいだで強い伝搬力を持つようなウイルスが発生してしまうリスクもあるような気がします。

20200612_Blog_Daily023_COVID_Animals_Pict3.jpg

ひとつの例を挙げると、たとえば、野鳥がどこかで大量死しているのが発見されることもありますが、そのような鳥の死骸には触れるべきではないことが提唱されています。なぜなら、このような野生動物の大量死の原因の一つとして、突然変異して高病原性を持った新しいウイルスが関与していることが挙げられており、そのようなウイルスが野鳥の体内で爆発的に増幅していく過程で、ヒトに感染できる性質を持ったウイルスが発現してしまう危険性があるからです。そして、これと逆のことも起こり得ると思います。

地球上には、ヒトよりも生息数の多い動物はたくさんいますが、ヒトも70億人とかなりの数にのぼります。また、野鳥であれば大量死することでウイルスの増殖は止まりますし、家畜であれば危険なウイルス(口蹄疫など)に罹患したら全頭を殺処分することも可能ですが、ヒトの場合は、医療の発達で死ににくい上に、(当たり前ですが)感染者を殺処分するなんてことも出来ません。結果的に、ヒトにパンデミックを起こしたウイルスが変異して、他の動物に甚大な被害を及ぼすような、新たなウイルスを生じることも有り得るのかもしれません。

今回の新型コロナを、みんなの努力で早期に終息させることで、ヒトの社会を守るだけでなく、地球上の他の生物を守る結果に繋がる、という考えは飛躍しすぎでしょうか。

Copyright (C) nairegift.com/freephoto/, freedigitalphotos.net/, pakutaso.com/, picjumbo.com/, pexels.com/ja-jp/ All Rights Reserved.
Copyright (C) Akikazu Ishihara All Rights Reserved.

関連リンク:
SARS-CoV-2 in animals (Animal Health & Welfare, Covid-19). Resources and Tools. American Veterinary Medical Associations. Updated on June 11th, 2020.




プロフィール

Rowdy Pony

Author:Rowdy Pony
名前: 石原章和
性別: 男性
年齢: 40代
住所: 神奈川県
職業: 獣医師・獣医学博士
叩けよ、さらば開かれん!

ブログメニュー

推薦書籍

FC2カウンター

リンク

関連サイト

検索エンジン

お断わり

20130414_Blog_Message_Pict1.jpg
このサイトに掲載されているイラスト、画像、文章は、すべて管理主自身が作成したもの、もしくは、著作権フリーの素材リンクから転載したものです。

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
248位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
30位
アクセスランキングを見る>>

検索フォーム

関連サイト

QRコード

QR