新型コロナに立ち向かうある獣医師
日常 - 2020年06月23日 (火)

新型コロナウイルス感染症に立ち向かう獣医師がいらっしゃいます。
日本の新型コロナ対策においては、多くの感染症やウイルス学の専門家が関与されていますが、その中に、医学とは違った見地から奮闘されている獣医師がいらっしゃいます。それが、京都大学の宮沢孝幸・准教授で、新型コロナ対策の某専門家会議での発表によると、獣医学における動物のウイルス学の研究では、対象動物を使った感染実験が出来ることから、感染実験の出来ないヒトのウイルスの研究とは異なる知見を提供できるのだそうです。ヒトの医学分野だけでなく、獣医学分野の知識やデータが、新型コロナの対策に役立っているのを見ると、同じ獣医師として勇気づけられる気持ちになります。
宮沢獣医師が特に強調している論点としては、ウイルスが生物に感染するときには、感染が成立するのに必要なウイルス粒子の数が決まっている、という事です。たとえば、いま世界中で行われている社会的距離政策では、他人との距離を2m以上取るというソーシャルディスタンスという概念が提唱されていますが、実はこれは必要ないという提起がなされています。この2mという距離は、一般的には、ウイルス粒子を含む感染者の飛沫が届く距離を基準に決められています。しかし、この感染者がマスクを着用していて、かつ、喋ったり咳をしたりしなければ、周囲に飛散する飛沫の量は大幅に減り、2m以内の距離であっても、感染が成立するウイルス粒子の量を下回ると考えられるのだそうです。

宮沢獣医師の考え方に基づくと、マスクを着けた上で、会話や咳をしないというルールさえ守れば、ソーシャルディスタンス政策を取る必要は無くなる、という事になるのかもしれません。言い換えると、飲食店や映画館、理髪店、マッサージ店などは、マスク着用と会話禁止をすれば、ソーシャルディスタンスを取ることなく、パンデミック前と同じように開店して構わない、という事になります。また、コンサートや学校の講義なども、演者や教師が検査を受けて、新型コロナ陰性と確認されていれば、参加者や学生がマスク着用と会話禁止の上で、実施しても問題ないのかもしれません。さすがに、顧客が発声する飲み会やカラオケなどにおいては、社会的距離政策が必要そうですが。
勿論、新型コロナはヒトのウイルスなので、飛沫中のウイルスが感染能を持つか否かについて、ヒトを使った感染実験によるエビデンスは得られない、という限界点はあります。また、マスクを着けても、ついつい喋ってしまう人も出てくる、などの問題はあると思います。しかし、前述の業種や状況において、ソーシャルディスタンスの必要性が最小限なのであれば、経済活動や社会活動の再開もより積極的に行っていけます。さらに、年末以降に感染の第2波が起こったときに、再度の行動規制をする場合にも役立つのではないでしょうか。
獣医学的な知見が、新型コロナの感染対策に寄与していってくれることを願わずにはいられません。
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