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馬の文献:喉頭片麻痺(Russell et al. 1994)

「馬の喉頭片麻痺に対する人工喉頭形成術および両側性声嚢切除術の後の能力解析:1986~1991年の70症例」
Russell AP, Slone DE. Performance analysis after prosthetic laryngoplasty and bilateral ventriculectomy for laryngeal hemiplegia in horses: 70 cases (1986-1991). J Am Vet Med Assoc. 1994; 204(8): 1235-1241.

この研究論文では、馬の喉頭片麻痺(Laryngeal hemiplegia)に対する外科的療法の治療効果を検討するため、1986~1991年にかけて、安静時または運動後の内視鏡検査(Endoscopy at rest or after exercise)による喉頭片麻痺の診断が下され、人工喉頭形成術(Prosthetic laryngoplasty)および両側性声嚢切除術(Bilateral ventriculectomy)による治療が応用された70頭の患馬における、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

結果としては、経過追跡(Follow-up)のできた55頭の患馬のうち、40頭のサラブレッド競走馬では48%(19/40頭)の治療成功率を示したのに対して、その他の競走馬以外の馬では93%(14/15頭)の治療成功率が示されました。また、40頭のサラブレッド競走馬のうち、二歳以下の若齢馬では70%(14/20頭)の治療成功率が達成されたのに対して、三歳以上の馬では25%(5/20頭)の成功率にとどまりました。このため、喉頭片麻痺の罹患馬に対する喉頭形成術および声嚢切除術では、高速運動を要するサラブレッド競走馬における治療効果は中程度に過ぎなかったものの、特に若いサラブレッドに対しては、比較的に良好な予後が期待できることが示唆されました。

この研究では、経過追跡のできた55頭の患馬のうち、少なくとも一つの術後合併症(Post-operative complication)を呈した馬は60%(33/55頭)に及びました。また、合併症の種類を見ると、運動不耐性(Exercise intolerance)を示した馬は42%(23/55頭)、運動時における持続的な喘鳴音(Continuing noise when exercising)を示した馬は47%(26/55頭)、咳嗽(Coughing)を示した馬は33%(18/55頭)であったことが報告されています。このうち、術後合併症を呈した33頭の患馬では、上述の治療成功と判断された馬は半数近く(16/33頭)に及んでおり、合併症の続発そのものが治療失敗と直接的に正の相関(Positive correlation)をするわけではない、という考察がなされている反面、運動不耐性および持続的喘鳴音のうち、どちらかを呈した馬の治療成功率は6%にとどまった事が報告されています。

この研究では、術後の披裂軟骨外転(Abduction of arytenoid cartilage)の度合いの評価として、グレード5(咽頭壁を圧迫するほどの最大外転)、グレード4(咽頭壁に触れるほどの完全外転)、グレード3(咽頭壁に触れない安静時をやや超える外転)、グレード2(外転不全)、グレード1(披裂軟骨が声門裂の中央線を超える)、の点数化システムが用いられました。そして、グレード5~1を示した馬は、それぞれ、10%、67%、14%、1%、0%となっており、大多数の馬に対する喉頭形成術によって、適切な披裂軟骨外転が誘導されたことが示唆されました。しかし、グレード5の披裂軟骨外転が示された症例では、術後合併症を続発する危険性が有意に高かったことが示され、喉頭形成術によって披裂軟骨の外転が強過ぎると、合併症を起こし易くなることが示唆されました。

この研究では、治療前と術後の両方でレース出走していたサラブレッド競走馬のうち、術後に競走レベルや獲得賞金の低下が見られた馬は約八割に及んでいました。これらの馬は、全頭が三歳以上であったため、手術時の年齢の高さが予後の悪化につながった可能性は否定できない反面、調教師が手術歴を考慮して、レベルの低いレースへの出走にランク下げした(=そのために獲得賞金も減った)という、管理法の関する偏向(Bias)が生じた場合もありうる、という考察がなされています。

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