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新型コロナで思い出すBSE問題

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新型コロナウイルス感染症の正しい恐れかたとは何なのでしょうか。

シンクタンク・日本総研の調査部は、現在の日本における新型コロナの感染状況を精査して、感染が再拡大するなか、本当の脅威は何か?という提言をしています。その中でまず、感染が拡大すること自体は大きな脅威ではないと結論づけており、その一番の要因は、新型コロナによる死者数が、日本の例年の年間死者数の0.07%に過ぎないことを挙げています。また、季節性インフルエンザの死亡率(昨年の流行月)に比べても、新型コロナによる死亡率(今年五月)は二分の一~三分の一だったことも指摘されており、さらに、ここ数ヶ月で感染拡大が見られる日本の若年・壮年者では、新型コロナによる死亡率はほぼゼロであるというデータも示されています。

これを踏まえ、新型コロナによる本当の脅威は、国民のあいだに活動抑制を継続したほうが良いという萎縮心理が広がっていることだ、という提言がなされています。そして、国民の自粛ムードを払拭するために、政府が先導して、①若年・壮年者にとって新型コロナは脅威ではない、②感染者が増えるのは心配ない、③日常生活を取り戻そう、という3つのメッセージを打ち出すべきである、と提唱されています。このうち、②については、ハイリスクの高齢者をしっかりガードすることは必須ですし、③についても、「新しい生活様式」が不必要なのではなく、全年齢一律に無理強いするのは見直すべきではないか、という提案がなされています。

一般的に、恐怖とは大衆心理への粘着力が強く、政治利用される側面も多分にあることから、未知の存在を「正しく恐れる」ことの難しさは、いつの時代においても大きな課題であるようです。

思い返してみると、2000年代初頭の獣医学領域においても、牛海綿状脳症(Bovine Spongiform Encephalopathy: BSE)への国民不安から、大きな社会問題が引き起こされました。当時のBSE牛肉への対策については、ゼロリスクを求める風潮の広がりから、危険部位の除去ではなく、「全頭検査」こそ安全対策という誤解が生じた、と言われています。また、検査対象を20ヶ月齢以上という「世界一厳しい基準」に設定した上、必要性や費用対効果についての議論が不足していた、という見方もあります。さらに、非科学的な論評が連発され、安全論争からかけ離れた論敵へのレッテル張り(「米国の手先」などネットでの悪質な批判)が横行したのだそうです。

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新型コロナにおいても、某専門家が新宿区民の全員をPCR検査することを提唱したり、日本の緊急事態宣言の基準が海外の百倍も厳しいレベルになるなど(10万人当たり週ごとの感染者数が0.5人で発令、海外ではこれが50人)、どこかBSE問題と共通した点が垣間見えてしまいます。結局、日本でのBSE全頭検査は、2013年にヒッソリと打ち切られ(48ヶ月齢以上は除く)、“検証も反省もない忘却”であったという指摘がなされています。

また、BSE問題における報道の在り方に関しても論議があります。当時は、牛肉を食することへの恐怖から、焼き肉店とか牛丼店の来客が大幅に減りましたが、日本人のBSE感染患者はたった1名でした。一方で、BSE牛肉を目視検査で見逃したと非難された等で、獣医師を含む計5名が自殺するという悲しい事態になりました(BSEを目視検査で発見するのは殆ど不可能であるにも関わらず)。当時の日本において、BSEの危険性が正しく認識されていたのか?については、情報を伝える側も受け取る側も、真摯に反省するべきなのかもしれませんし、それは、今の新型コロナの報道においても同様だと思います。

幸いにも、日本での新型コロナによる死者はまだ千人ほどですが、このまま経済活動が低迷して倒産や失業者が増えれば、何万人もの自殺者が出ると推測されています。言うまでもなく、新型コロナは未知の感染症であり、そのリスクを過小評価するのは好ましくありません。しかし、患者数たった1人のBSEが引き起こした過剰な恐怖と混乱によって、獣医師ら5人が自殺したという同じ轍を踏んで欲しくはないと感じます。

関連サイト:
枩村秀樹。「新型コロナ感染が再拡大。本当の脅威は何か?」日本総研Viewpoint。2020年7月13日。No.2020-014.

検証:BSE発生から15年(その経緯と教訓)。第19回意見交換会。(公財)食の安全・安心財団。2015年12月14日。

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