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馬の文献:喉頭片麻痺(Parente et al. 2011)

「輪状披裂関節強直を促進させる喉頭形成術の変法アプローチ」
Parente EJ, Birks EK, Habecker P. A modified laryngoplasty approach promoting ankylosis of the cricoarytenoid joint. Vet Surg. 2011; 40(2): 204-210.

この研究論文では、馬の喉頭片麻痺(Laryngeal hemiplegia)の治療のための喉頭形成術(Laryngoplasty)に有用な術式を検討するため、八頭の健常馬を用いて、三頭には通常の喉頭形成術、残りの五頭には輪状披裂関節強直(Ankylosis of the cricoarytenoid joint)を促進させる喉頭形成術の変法アプローチ(Modified laryngoplasty approach)を実施して、術後の一日目と三ヵ月目における内視鏡検査(Endoscopy)での左右対称性商(Right:Left symmetry quotient)の算出、および、三ヶ月目における経喉頭インピーダンス(Translaryngeal impedance)の測定と組織学的検査(Histologic evaluation)が行われました。

この研究で検討された、喉頭形成術の変法では、通常の喉頭組織への外側アプローチの後、背側輪状披裂筋(Criocoarytenoideus dorsalis muscle)の付着部を筋突起(Muscular process)から剥離して、頭側へと反転(Cranial retraction)させることで、輪状披裂関節を露出させました。次に、関節包(Joint capsule)を切開して、電動バーを用いて関節軟骨(Articular cartilage)が除去されました。そして、通常の喉頭形成術と同様に、Ethbond®装具による筋突起への牽引が施されました。

結果としては、喉頭形成術の変法が行われた馬では、通常の術式が行われた馬に比べて、術後の三ヶ月目における披裂軟骨外転(Arytenoid abduction)の緩みが少なく、また、経喉頭インピーダンスと、装具が筋突起を亀裂(Fissure)させていた割合が、有意に低かった事が示されました。さらに、喉頭形成術の変法では、組織学的検査において、輪状披裂関節の繊維性架橋形成(Fibrous bridging formation)が達成されたことが報告されています。このため、喉頭片麻痺の罹患馬に対しては、上述のような喉頭形成術の変法を応用することで、輪状披裂関節の外科的強直を達成して、インプラントの緩みや破損(Loosening and failure of implants)の危険性を抑え、より良好な上部気道機能の回復(Restoration of upper airway function)が期待できることが示唆されました。

一般的に、馬の喉頭片麻痺に対する喉頭形成術においては、披裂軟骨外転の緩みが手術失敗および治療効果の減退につながる事が知られており、喉頭筋の除神経(Denervation of the laryngeal muscles)によっても治療成績は改善しないことが示されています(Davenport et al. Vet Surg. 2001;30:417)。また、筋突起に装具を通す際に、骨用外套針(Bone trocar)を使って穴を開けることで、筋突起の亀裂を予防できるという知見もありますが(Rossignol et al. Vet Surg. 2006;35:49)、生体内試験(In vivo experiment)による効能は証明されていません。このため、今回の研究で試みられた術式のように、筋突起を牽引した状態で、輪状披裂関節の繊維性強直が起これば、インプラントの残存性に頼ることなく、披裂軟骨を外転位置に保持する作用を促進できると考えられました。

この研究では、関節軟骨の除去と、喉頭形成術を介しての不動化(Immobilization)によって、輪状披裂関節の強直が達成されており、他の人間の医学分野の文献においても、輪状披裂関節は他の骨格筋器官(Musculoskeletal system)に類似した構造と機能を有する可動関節(diarthrodial joints)であることが報告されています(Paulsen et al. Osteoarthritis Cartilage. 1999;7:505)。馬の喉頭形成術に関する他の文献では、馬の輪状披裂関節に対するレーザー焼烙(Laser ablation)や、ポリメタクリル酸メチル(Polymethylmethacrylate: PMMA)による関節固定(Arthrodesis)なども試みられていますが(Hawkins et al. Proc ACVS. 2008, Cheetham et al. EVJ. 2008;40:584)、披裂軟骨外転の長期的な持続性(Long-term persistency)については評価されていません。

この研究では、偽手術(Sham surgery)の治療郡は設定されておらず、関節軟骨の切除なしでの、背側輪状披裂筋の剥離および関節包の切開というそれぞれのステップが、披裂軟骨の外転に対してマイナスに作用したかに関しては、明確には評価されていません。また、喉頭形成術の変法において、筋肉を反転させることで、筋突起から輪状軟骨(Cricoid cartilage)へと装具を渡す際に適切な牽引力を作用させやすかったり、筋肉の深部に装具を通す過程で生じるたるみを無くす事ができる、という利点も指摘されており、輪状披裂関節を強直させる過程そのものが、どれ程のプラスに作用したのかは定かではありません。

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