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馬の文献:喉頭片麻痺(Fjordbakk et al. 2012)

「頚部屈曲時の動的喉頭圧潰に対する新治療:改良型支持手綱」
Fjordbakk CT, Holcombe S, Fintl C, Chalmers H, Strand E. A novel treatment for dynamic laryngeal collapse associated with poll flexion: the modified checkrein. Equine Vet J. 2012; 44(2): 207-213.

この研究論文では、馬の動的喉頭圧潰(Dynamic laryngeal collapse)に有用な保存性療法(Conservative treatment)を検討するため、頚部屈曲(Poll flexion)に起因する動的喉頭圧潰の確定診断(Definitive diagnosis)が下された十四頭の速歩競走馬(Trotter racehorse)に対して、通常の支持手綱(Conventional checkrein)、または、頚部屈曲を制限するように頭頂部への緊張を掛ける改良型支持手綱(Modified checkrein)を装着させて、トレッドミル運動時の内視鏡検査(Endoscopy during treadmill exercise)、および、気管内圧(Tracheal pressure)の測定が行われました。

結果としては、改良型の支持手綱を装着させることで、効果的に頚部屈曲の制限が達成できたことが報告されています。その結果、内視鏡検査における披裂軟骨圧潰(Arytenoids cartilage collapse)および声帯圧潰(Vocal fold collapse)の病態スコアが有意に改善して、気管内陰圧(Tracheal negative pressure)も有意に減少していた事が示されました。このため、動的喉頭圧潰の罹患馬(もしくは発症が疑われる馬)に対しては、改良型支持手綱を用いて頚部屈曲を制限することで、圧潰の予防および上部気道機能の改善(Improvement in upper airway function)が期待できることが示唆されました。上写真左は、通常の支持手綱と、その装着時の内視鏡所見(動的喉頭圧潰が発現している)で、上写真右は、改良型の支持手綱と、その装着時の内視鏡所見(動的喉頭圧潰が予防できている)を示しています。

一般的に、馬における片側性動的喉頭圧潰は、片側性披裂軟骨圧潰(Unilateral arytenoid cartilage collapse)および同側声帯圧潰(Ipsilateral vocal fold collapse)を併発した病気で、初期経過(Early progression)の反回喉頭神経障害(Recurrent laryngeal neuropathy)において、背側輪状披裂筋(Cricoarytenoideus dorsalis muscle)と輪状甲状筋(Cricothyroideus muscle)の両方の異常が原因で、発症に至ると推測されています。一方、両側性動的喉頭圧潰は、披裂喉頭蓋襞軸性偏位(Axial deviation of aryepiglottic folds)や喉頭蓋縁背内側偏位(Dorsomedial deviation of the epiglottic margins)を併発した病気で、頚部屈曲を要するハーネスレース競走馬に好発し、吸気性陰圧の減少(Decreased negative inspiratory pressures)から二次性披裂軟骨圧潰を起こして、発症に至ると推測されています。

他の文献では、馬の両側性動的喉頭圧潰に対して、両側性の声嚢声帯切除(Bilateral ventriculocordectomy)による競走能力の回復(Restoration of racing performance)や呼吸器雑音の減退(Reduction of respiratory noise)は、期待できないことが報告されています(Fjordbakk et al. Vet Surg. 2008;37:501)。一方、馬の頭部位置(Head position)は、上部気道インピーダンス(Upper airway impedance)に影響することが確認されており(Petche et al. EVJ. 1995;18:18)、また、頚部屈曲を促すように手綱へと強い緊張力(Tension on reins)が掛けられた場合には、吸気時の気管内最大陰圧(Negative tracheal peak inspiratory pressures)が有意に上昇することが報告されています(Strand et al. EVJ. 2009;41:59)。そして、今回の研究においても、これらの知見を裏付けるように、過剰な頚部屈曲を制限するような改良型支持手綱を使うことで、動的喉頭圧潰の発現を防ぎ、上部気道機能を改善する効果が期待できる、というデータが示されました。

この研究で試験された改良型支持手綱は、プロトタイプであるため、かさばって扱いにくく、また、金属製のプレートが用いられているため、馬が突発的または予想外に頭部を振り動かした際には(Sudden or unexpected head tossing)、馬自身や御者に怪我の危険がおよぶ可能性が指摘されています。このため、この改良型の支持手綱を実用するためには、デザインの精錬(Refinement)を要すると考察されていますが、この場合にも、頭頂部手綱(Overhead rein)と頚部革紐(Neck strap)のバランス機能は失われてはならない、という提唱がなされています。

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