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馬の文献:喉頭蓋捕捉(Tate et al. 1990)

「内視鏡を介したネオジウムヤグレーザー手術による馬の喉頭蓋捕捉および軟口蓋背方変位の治療」
Tate LP, Sweeney CL, Bowman KF, Newman HC, Duckett WM. Transendoscopic Nd:YAG laser surgery for treatment of epiglottal entrapment and dorsal displacement of the soft palate in the horse. Vet Surg. 1990; 19(5): 356-363.

この研究論文では、馬の喉頭蓋捕捉(Epiglottic entrapment)および軟口蓋背方変位(Dorsal displacement of the soft palate)に対する有用な外科的療法を検討するため、1986~1989年にかけて、内視鏡検査(Endoscopy)によって喉頭蓋捕捉または軟口蓋背方変位(あるいは両方)の確定診断(Definitive diagnosis)が下され、起立位での内視鏡を介したネオジウムヤグレーザー手術(Transendoscopic Nd:YAG laser surgery)による、披裂喉頭蓋襞の軸性分割(Axial division of aryepiglottic fold))および口蓋帆切除術(Staphylectomy)が行われた十二頭の患馬における、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

結果としては、喉頭蓋捕捉を呈した十一頭の症例のうち十頭では、術後合併症(Post-operative complications)を起こすことなく捕捉部位の完全整復(Complete correction)が達成され、残りの一頭では、術後に披裂喉頭蓋襞組織の部分癒着(Partial adhesion)が認められましたが、喉頭切開術(Laryngotomy)を介しての再手術によって、完全な整復が達成されました。このため、喉頭蓋捕捉の罹患馬に対しては、起立位での内視鏡を介したレーザー手術によって、良好な捕捉部位の整復が期待され、競技&競走能力の回復を示す馬の割合が高いことが示唆されました。そして、レーザー切開による披裂喉頭蓋襞の軸性分割では、鈎状柳葉刀(Hooked bistoury)を使う術式に比べて、切る過程がゆっくりかつ調節が効き易いため、分割が不十分であったり、切る箇所がズレてしまう可能性が低い、という利点が挙げられています。

この研究では、軟口蓋背方変位を呈した四頭のうち、完治したのは一頭、持続性の軟口蓋背方変位が残存した馬が一頭、鼻孔閉鎖等によって軟口蓋背方変位が誘導できた馬は二頭であったことが報告されています。このため、軟口蓋背方変位の罹患馬に対しては、レーザー手術後の瘢痕形成によって、軟口蓋の強直度の向上(Improved soft palate stiffness)が示され、充分な上部気道機能の回復(Restoration of upper airway function)が見られる場合もあることが示唆されています。また、喉頭蓋捕捉と軟口蓋背方変位の両方を発症している患馬に対しては、まず最初に口蓋帆切除術を行い、次に披裂喉頭蓋襞の軸性分割という順番で手術を行うことで、軟口蓋の尾側縁(Caudal border of soft palate)をレーザー切除する際に、捕捉している組織によって喉頭蓋の表面がレーザーから保護されて、誤って喉頭蓋を傷付けてしまう危険性を減少できると提唱されています。

この研究で応用されたネオジウムヤグレーザー手術では、人工サファイア端(Synthetic sapphire tip)のレーザー導管を使用する場合には、低エネルギーのレーザーで切開を行えるため、術創の炎症や浮腫(Inflammation/Edema)、レーザーの狙いがずれた際の周囲組織への医原性損傷(Iatrogenic damage to surrounding tissue)が少ないという利点があります。しかし、導管の先端と切除しようとしている組織が直接的に接触(Direct contact)している必要があるため、軟口蓋背方変位への手術に際しては、前もって術部への局所麻酔(Local anesthesia)の塗布、および充分な鎮静および保定(Adequate sedation and restraint)を施すことが重要である、という考察がなされています。

一般的に、馬の喉頭蓋捕捉に対するレーザー手術においては、今回の研究のように、捕捉されている披裂喉頭蓋襞の組織を、上から下へ(尾側から吻側へ)切除する術式と、他の文献で報告されているように、下から上へ(吻側から尾側へ)切除する術式があります(Tulleners. JAVMA. 1990;196:1971)。このうち、上から下へ切る方法では、分割が完了する前に喉頭蓋が披裂喉頭蓋襞から外れて軟口蓋の下方に潜ってしまい、充分な長さの切開ができない危険性がある反面、下から上へ切る方法では、喉頭蓋の尖端(Tip of epiglottis)に当たる箇所から切り始めるため、レーザー切除の深さを調節しにくく、喉頭蓋を医原性損傷させる危険性が高い、という問題点が指摘されています。

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