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新型コロナの第2波は来ない?

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新型コロナウイルス感染症は、日本では既に収束しているのかもしれません。

京都大学の上久保教授らは、日本では新型コロナの第2波は来ないという研究結果を発表しています。その理由としては、日本では昨年11月から今年1月にかけて、弱毒性のコロナウイルス(K型)に対する集団免疫が確立されており(人口の約五割)、これによって今年3月以降に入ってきた武漢型・欧米型の強毒性コロナウイルス(G型)への抵抗性が獲得されていることが挙げられています。その結果、K型コロナとG型コロナを合わせると、人口の約85%が免疫を確立していると推測されています。確かに日本では、PCR検査で新型コロナに陽性なのに無症状である方の割合が非常に多く、また、死亡者数は諸外国の100分の一くらい少ないことから、未知の要素が好影響している可能性が示唆されていましたので(いわゆるファクターX)、集団免疫が既に確立していたという知見はこれを良く説明しているように見えます。

言い換えると、日本人の殆どが新型コロナへの集団免疫を得ている以上は、マスク着用や社会的距離政策も必要なく、普通どおりの生活に戻って構わないことになります。もっと言えば、新型コロナへの免疫は数ヶ月で減退してしまうことが知られていますので、むしろ定期的にウイルスに暴露されるのを繰り返すことで(この場合は感染も発症もしない)、新型コロナへのブースター免疫を維持することが重要であるとも提唱されています。さらに、大急ぎで開発して安全性に不安の残るワクチンに関しても、新型コロナに対する集団免疫がある以上は、国民全員にワクチン接種する必要も無くなると言えると思います。ただ、今回の知見に関しては幾つかの疑問も浮かんできます。

まず第一に、日本で既に実施されている抗体検査では、新型コロナの抗体保有率は0.03~0.17%であることが報告されており、人口の八割以上が集団免疫を確立されているという主張と矛盾します。しかし、抗体の測定においては、アッセイのカットオフ値をどこに設定するかによって、抗体陽性と陰性の区別が難しいことが知られており、実は抗体保有率はもっと高かった可能性もあると考えられます。何より、今回の知見は、新型コロナの感染による干渉作用によってインフルエンザ感染が抑制されていたという事象を解析することによって実証されていますので、本当は抗体を得ていた人が多かったという説にはうなずけます。また、一般的な抗体検査はB細胞免疫の評価ですので、T細胞免疫による抵抗性の状況は反映していないことも考えられます。

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もうひとつ疑問なのは、北欧のスウェーデンでは集団免疫政策を取ったにも関わらず、周辺国よりも死亡率が高くなってしまった、という失敗例があることです。これに関しては、実はスウェーデンには弱毒性のK型コロナが入っていない状態であったため、強毒性のG型コロナによって、重傷者数や死亡者数の増加につながったことが提唱されています。加えて、スウェーデンではトリアージ方策も取られており、高齢者の発症者を治療しない事象も多いことから、見た目上の死亡率が高くなったケースも考えられるかもしれません。むしろ、日本と同じようにK型コロナが入っていたと推測されるアジア諸国において、日本と同様に死亡率が非常に低い現実を見ると、弱毒性ウイルスによる集団免疫が強毒性ウイルスによる被害を抑えた、という説には説得力があります。

そして、今後のことについても疑問が浮かんできます。たとえば、K型コロナへの免疫によってG型コロナへの抵抗性が得られたという過去の事象が真実だったとしても、ウイルスは常に変異していますので、この後、より感染力の強いウイルスが出てきたときに感染対策を取っていないと、急に多数の重症者や死亡者が出てしまう危険性もあるのではないでしょうか。しかし、前述の研究者らは、今後、さらに感染力の高いウイルスが上陸したとしても、既存の免疫があることで、集団免疫に要する罹患率は上がることから、その必要分だけ感染すると集団免疫に達する、というメカニズムを挙げています。つまり、既にK型とG型コロナによる集団免疫が確立している日本では、別の型のウイルス(Y型やH形など)によって多数の死者が出るリスクは低いと考えられます。

もうひとつ大きな疑問は、日本人の50%がK型コロナに感染していたとすると、G型コロナに感染した35%の人は免疫が無かったのだから、これらの人々の中から欧米並みの死者が出るハズでは、という点です。これに関しては、欧米ではK型ではなく、S型コロナという別のウイルスによる特異抗体(B細胞免疫)が産生されていて、G型コロナの感染によって抗体依存性感染増強(ADE: Antibody dependent enhancement)を誘発して死者数が多くなったことが挙げられています。一方、K型コロナの感染では強力なT細胞免疫が獲得されることから、これによってG型コロナが撃退されたと考えられています。つまり、中国から日本への渡航者制限が三月初旬まで遅れてしまったことが、逆に適度の集団免疫を得る結果につながったという事のようです。

今回の知見に則って、全ての感染予防対策をすぐに止めてしまうのは不安です。しかし、私たちは、新型コロナの感染拡大の状況を冷静に見つめて、確率論に基づいた論理的方策を取るべき時期に来ているのかもしれません。たとえば、先日の専門家の分科会では、PCR検査の陽性者の総数ではなく、症状を示している陽性者数(いわば厳密な意味での患者数)に着目して解析をおこない、患者数は七月末をピークに減少傾向にあると報告しています。また、八月になってからは、新型コロナの実行再生産数(Rt)は全国的に1以下になってきており、疫学的には感染が収束していく状況であると見なせそうです。

新型コロナを正しく恐れるためには、固定観念に捕らわれたり、思考停止に陥ってしまうことなく、新型コロナ感染の特性や集団免疫の状況を適切に検証して、何が最適な方策なのかを精査していくべきなのではないでしょうか。

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Rowdy Pony

Author:Rowdy Pony
名前: 石原章和
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