馬の文献:喉嚢真菌症(Freeman et al. 1980b)
文献 - 2020年09月25日 (金)
「バルーンカテーテルによる内頚動脈遮閉法:喉嚢真菌症による鼻出血の予防手技の臨床応用」
Freeman DE, Donawick WJ. Occlusion of internal carotid artery in the horse by means of a balloon-tipped catheter: clinical use of a method to prevent epistaxis caused by guttural pouch mycosis. J Am Vet Med Assoc. 1980; 176(3): 236-240.
この研究論文では、喉嚢真菌症(Guttural pouch mycosis)に起因する鼻出血(Epistaxis)の有用な予防法を検討するため、内視鏡検査(Endoscopy)によって喉嚢真菌症の診断が下され、バルーンカテーテル(Balloon-tipped catheter)による内頚動脈遮閉法(Occlusion of internal carotid artery)が応用された、二頭の馬の症例が報告されています。
この研究における二頭の患馬は、いずれも二歳齢のサラブレッドで、まず内頚動脈(Internal carotid artery)の起始部(Origin)を結紮(Ligation)した後、バルーンカテーテルを罹患箇所よりも上流まで推し進めてから膨らませることで、内頚動脈の遠位部(Distal region)への遮閉(Occlusion)が施されました。カテーテルは、術後の14日目および50日目に取り除かれましたが、処置箇所の動脈は血栓形成(Thrombus formation)によって血流遮断されて、二頭とも出血症状の再発(Recurrence)を呈することなく、調教および競走に復帰(Returned to training and racing)できた事が報告されています。このため、喉嚢真菌症の罹患馬に対しては、バルーンカテーテルを用いた内頚動脈遮閉法によって、致死的出血(Fatal hemorrhage)の充分な予防効果が期待され、良好な予後を呈する馬の割合が高いことが示唆されました。
この研究では、バルーンカテーテルを膨らませた際に、二つの処置箇所のあいだで圧力勾配(Pressure gradient)が生じたことが報告されており、バルーンが十分に膨満されなければ、血圧で押し戻されてしまう可能性がある、という警鐘が鳴らされています。また、真菌感染(Fungal infection)によって虚弱化した動脈壁(Weakened arterial wall)は、この上昇した内圧によって侵食(Erode)されて、カテーテルの逸脱(Catheter prolapse)に至る可能性もあると考察されています。しかし、動脈の結紮および遮閉が堅固であれば、この逸脱箇所からの致死的出血は生じないと推測されています。
この研究では、バルーンを膨らませる箇所としては、内頚動脈のS字状走行部における第一湾曲と第二湾曲のあいだ(Between the first and second flexures of the sigmoid)が選択されており、この理由としては、(1)この箇所は、一般的に見られる真菌病巣の発生部(Typical location of fungal lesion)から、かなり離れているため、(2)この箇所でバルーンを膨らませる事で、バルーン先端よりも上流に、充分な長さの円柱状血管腔(Long column of blood beyond the catheter tip)が存在することになり、液体動的に血栓が起こりやすい(Hydrodynamically favorable for thrombosis)と推測されるため、等が上げられています。
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この研究論文では、喉嚢真菌症(Guttural pouch mycosis)に起因する鼻出血(Epistaxis)の有用な予防法を検討するため、内視鏡検査(Endoscopy)によって喉嚢真菌症の診断が下され、バルーンカテーテル(Balloon-tipped catheter)による内頚動脈遮閉法(Occlusion of internal carotid artery)が応用された、二頭の馬の症例が報告されています。
この研究における二頭の患馬は、いずれも二歳齢のサラブレッドで、まず内頚動脈(Internal carotid artery)の起始部(Origin)を結紮(Ligation)した後、バルーンカテーテルを罹患箇所よりも上流まで推し進めてから膨らませることで、内頚動脈の遠位部(Distal region)への遮閉(Occlusion)が施されました。カテーテルは、術後の14日目および50日目に取り除かれましたが、処置箇所の動脈は血栓形成(Thrombus formation)によって血流遮断されて、二頭とも出血症状の再発(Recurrence)を呈することなく、調教および競走に復帰(Returned to training and racing)できた事が報告されています。このため、喉嚢真菌症の罹患馬に対しては、バルーンカテーテルを用いた内頚動脈遮閉法によって、致死的出血(Fatal hemorrhage)の充分な予防効果が期待され、良好な予後を呈する馬の割合が高いことが示唆されました。
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この研究では、バルーンを膨らませる箇所としては、内頚動脈のS字状走行部における第一湾曲と第二湾曲のあいだ(Between the first and second flexures of the sigmoid)が選択されており、この理由としては、(1)この箇所は、一般的に見られる真菌病巣の発生部(Typical location of fungal lesion)から、かなり離れているため、(2)この箇所でバルーンを膨らませる事で、バルーン先端よりも上流に、充分な長さの円柱状血管腔(Long column of blood beyond the catheter tip)が存在することになり、液体動的に血栓が起こりやすい(Hydrodynamically favorable for thrombosis)と推測されるため、等が上げられています。
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