馬の文献:喉嚢真菌症(Matsuda et al. 1999)
文献 - 2020年10月09日 (金)
「馬の喉嚢真菌症に起因する鼻出血を予防するためのマイクロコイルを用いた内頚動脈遮閉術」
Matsuda Y, Nakanishi Y, Mizuno Y. Occlusion of the internal carotid artery by means of microcoils for preventing epistaxis caused by guttural pouch mycosis in horses. J Vet Med Sci. 1999; 61(3): 221-225.
この研究論文では、喉嚢真菌症(Guttural pouch mycosis)に起因する鼻出血(Epistaxis)の有用な予防法を検討するため、九頭の健常な実験馬を用いて、マイクロコイル(Microcoils)を用いた内頚動脈(Internal carotid artery)の遮閉術(Occlusion)が試験されました。この研究の術式では、まず内頚動脈をその起始部(Origin)で結紮(Ligation)してから、その上流部から挿入したカテーテルを13cmの位置まで進展させ、脈管造影(Angiogram)を介して動脈の走行具合が確認されました。そして、カテーテルを通してマイクロコイル(太さ0.46mm、長さ70mm)を血管内に押し入れることで、動脈遮閉が施され(マイクロコイルは、血管内で長さ約6mmの竜巻状に丸まり、内腔を閉鎖する)、脈管造影によって血流遮断が達成されている事を確認してから、切開創が縫合閉鎖されました。
結果としては、1~2個のマイクロコイルを用いた動脈遮閉術によって、内頚動脈血流の完全な遮断が達成され、術後合併症(Post-operative complications)や異常臨床所見を呈した馬は一頭もありませんでした。また、この動脈遮閉の結果、反対側の内頚動脈への血流量が約58%増加(血圧50mmHgの場合)したことが確認され、剖検(Necropsy)では、血栓形成(Thrombus formation)によって動脈腔の完全閉鎖(Complete obstruction)が生じていました。さらに、この術式が応用された二頭の臨床症例では、合併症や鼻出血の再発(Recurrence)は認められませんでした(術後の内視鏡検査は実施されていない)。このため、喉嚢真菌症の罹患馬に対しては、マイクロコイルを使用した内頚動脈の遮閉術によって、充分な病巣部治癒と、致死的出血(Fatal hemorrhage)の予防が達成され、良好な予後を示す馬の割合が高いことが示唆されました。
一般的に、マイクロコイルによる動脈遮閉術では、陰性帯電(Negatively charged)されたコイルが陽性帯電(Positively charged)している血液と触れることで、赤血球の凝集と粘着(Agglutination and adherence)を引き起こす事が知られています。その結果、血管内凝固(Intra-vascular coagulation)を誘導させ、マイクロコイルの挿入から数分以内で、血栓形成に至ると考えられています。馬の内頚動脈に対するマイクロコイル挿入時には、血流を完全に塞き止めるために、複数のコイル挿入を要する馬もあった事から、一つ目のマイクロコイルは出来るだけ遠位部に挿入して、二つ目または三つ目のコイルを挿入する余裕を残しておく事が望ましい、という提唱がなされています。
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結果としては、1~2個のマイクロコイルを用いた動脈遮閉術によって、内頚動脈血流の完全な遮断が達成され、術後合併症(Post-operative complications)や異常臨床所見を呈した馬は一頭もありませんでした。また、この動脈遮閉の結果、反対側の内頚動脈への血流量が約58%増加(血圧50mmHgの場合)したことが確認され、剖検(Necropsy)では、血栓形成(Thrombus formation)によって動脈腔の完全閉鎖(Complete obstruction)が生じていました。さらに、この術式が応用された二頭の臨床症例では、合併症や鼻出血の再発(Recurrence)は認められませんでした(術後の内視鏡検査は実施されていない)。このため、喉嚢真菌症の罹患馬に対しては、マイクロコイルを使用した内頚動脈の遮閉術によって、充分な病巣部治癒と、致死的出血(Fatal hemorrhage)の予防が達成され、良好な予後を示す馬の割合が高いことが示唆されました。
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