馬の病気:頭蓋骨骨折
馬の骨折 - 2013年07月31日 (水)

頭蓋骨骨折(Skull fracture)について。
頭蓋骨の骨折は、頭部への蹴傷、衝突、転倒などの外傷性に起こり、鼻頭骨(Nasal bone)、前頭骨(Frontal bone)、上顎骨(Maxillary bone)、頬骨弓(Zygomatic arch)などの部位に発症します。陥没骨折(Depression fracture)の病態を生じる場合もありますが、骨折片変位(Fragment displacement)が僅かな症例では、広範囲にわたる患部の腫脹のため骨折部位の触診が困難なこともあります。また、病態によっては、鼻出血(Epistaxis)、皮膚裂傷(Skin lacerations)、皮下気腫(Subcutaneous emphysema)、捻髪音(Crepitation)を併発する場合もあります。
頭蓋骨骨折の診断は、レントゲン検査(Radiography)によって下されますが、多くの骨の陰影が重複露光(Overexpose)する領域なので、CTスキャン検査によって正確な病態把握が試みられる事もあります。また、正確な予後判定(Accurate prognostication)のため、神経学検査(Neurologic examination)や脳脊髄液検査(Cerebrospinal fluid analysis)による中枢組織や脳神経の損傷度合いを確かめ、内視鏡検査(Endoscopy)によって上部気道異常(Upper airway anomalies)を除外診断(Rule-out)することが重要です。
頭蓋骨骨折の治療では、初診時には患部の腫脹のため、外科的アプローチが困難な症例も多いため、初期治療としては、抗生物質療法(Antimicrobial therapy)に併せて、非ステロイド系抗炎症剤(Non-steroidal anti0inflammatory drugs)の投与や、類毒素ワクチン(Toxoid vaccine)による破傷風予防(Tetanus prophylaxis)が行われます。陥没骨折の整復に際しては、皮膚裂傷が骨に達していない症例も多いため、出来るだけ閉鎖的整復(Closed reduction)を行うことが推奨され、骨折片へドリル孔を設けSteinmannピンを挿入することで、骨折片の挙上(Fragment elevation)とワイヤーによる縫合(Wire suture)が施されます。
頬骨弓(Zygomatic arch)の骨折においても、骨鉤(Bone hook)による骨折片の挙上が行われ、多くの場合に、骨折部は自然に安定化(Spontaneous stabilization)するため、ワイヤー縫合は必要でない事が報告されています。皮膚裂傷によって骨折部の感染を起こした場合には、開放的整復(Open reduction)を介しての病巣清掃(Debridement)が行われ、また、副鼻腔への血液貯留(Blood accumulation)や蓄膿(Empyema)を併発した症例では、円鋸術(Trephination)や骨フラップ(Bone flap)による浸出物除去(Exudate removal)を要することもあります。
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