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馬の文献:喉嚢真菌症(Benredouane et al. 2012)

「起立位手術での馬の内頚動脈に対する経動脈的コイル塞栓形成術」
Benredouane K, Lepage O. Trans-Arterial Coil Embolization of the Internal Carotid Artery in Standing Horses. Vet Surg. 2012; 41(3): 404-409.

この研究論文では、喉嚢真菌症(Guttural pouch mycosis)に有用な外科的療法を検討するため、八頭の健常な実験馬、および、内視鏡検査(Endoscopy)によって喉嚢真菌症の診断が下された五頭の症例馬に対して、起立位手術(Standing surgery)での内頚動脈(Internal carotid artery)に対する経動脈的コイル塞栓形成術(Trans-arterial coil embolization)が行われました。

この研究の術式では、枠場のなかで鎮静(Sedation)および局所麻酔(Local anesthesia)をした馬において、首の近位~中央部の三分の一における頚静脈(Jugular vein)の背方に10cmの皮膚切開創を設け、腕頭筋(Brachiocephalicus muscle)および肩甲舌骨筋(Omohyoideus muscle)を切開することで総頚動脈(Common carotid artery)へとアプローチされました。次に、動脈内に挿入したカテーテルを介して、蛍光透視装置(Fluoroscopy)を用いた血管造影(Angiogram)をすることで、内頚動脈および外頚動脈(External carotid artery)の走行具合の確認、異常分枝(Aberrant branches)の除外診断、および、動脈内径の計測(Measurment of inner diameter)が行われました。そして、動脈内径よりもやや太いコイルを、喉嚢の近位側と遠位側に挿入することで塞栓形成が施され、血管造影によって血流が完全遮断(Complete obstruction of blood flow)されている事を確認してから、血管切開部、筋切開部、および、皮膚切開創が縫合閉鎖されました。

結果としては、実験馬に対する試験的手術では、コイル塞栓形成術の実施や、30mLまでの造影剤の使用に起因する術後合併症(Post-operative complications)は認められず、全ての馬において動脈血流の完全遮断が達成され、周囲の他の動脈に対する血流動態の変化(Alteration of local hemodynamics)も生じていませんでした。そして、起立位手術から二週間目の剖検(Necropsy)では、成熟した血栓の形成(Mature thrombus formation)によって、処置箇所の動脈の完全閉塞(Complete embolization)が達成され、挿入されたコイルの変位(Displacement)も生じていなかった事が確認されました。

そして、起立位手術での経動脈的コイル塞栓形成術が応用された五頭の臨床症例では、二頭の患馬が横隔膜ヘルニア(Diaphragmatic hernia)および心筋梗塞(Myocardiac infarction)によって斃死したものの(いずれもコイル塞栓形成術とは無関係と判断された)、他の三頭においては、真菌病巣の消失(Resolution of mycotic lesions)が見られ、鼻出血(Epistaxis)を再発(Recurrence)することなく、意図した用途への運動復帰を果たした事が報告されています。このため、喉嚢真菌症の罹患馬に対しては、起立位手術での内頚動脈に対する経動脈的コイル塞栓形成術によって、致死的出血(Fatal hemorrhage)の予防と、原発病巣の治癒が達成され、良好な予後を示す馬の割合が高いことが示唆されました。

一般的に、馬の喉嚢真菌症に対する外科的療法では、全身麻酔下(Under general anesthesia)での横臥位(Lateral recumbency)における手術によって、バルーンカテーテル(Balloon-tipped catheter)を用いた動脈結紮術&遮閉術(Arterial ligation and occlusion)(Freeman and Donawick. JAVMA. 1980;176:236)、または、マイクロコイルを用いた動脈塞栓形成術が行われ(Lepage and Piccot-Crezollet. EVJ. 2005;37:430)、良好な治療成績を収めています。今回の研究で試験された、起立位手術での内頚動脈に対する経動脈的コイル塞栓形成術では、麻酔覚醒(Anesthesia recovery)の際の事故の危険を避けられ、手術時間も三分の一程度で済むという利点が挙げられています。しかし、頚部にある重要な動脈を操作するという事を考えれば、起立位手術の最中に馬が暴れて動脈組織を医原性損傷(Iatrogenic damage)させる危険がある以上、敢えて起立位での手術を選択するメリットは低いのかもしれません。

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