馬の文献:喉嚢真菌症(Dobesova et al. 2012)
文献 - 2020年10月23日 (金)
「馬の喉嚢真菌症:28症例の回顧的解析」
Dobesova O, Schwarz B, Velde K, Jahn P, Zert Z, Bezdekova B. Guttural pouch mycosis in horses: a retrospective study of 28 cases. Vet Rec. 2012; 171(22): 561.
この症例論文では、馬の喉嚢真菌症(Guttural pouch mycosis)の病態、有用な治療法、および、予後を解明するため、1999~2011年にかけて、二箇所の二次診療施設において、内視鏡検査(Endoscopy)での喉嚢真菌症の確定診断(Definitive diagnosis)が下された28症例における、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective study)が行われました。
結果としては、安楽死(Euthanasia)または斃死した馬の割合は50%(14/28頭)に及んでいましたが、内科的治療が行われた馬(3頭)、外科的治療が行われた馬(11頭)、および、両方が行われた馬(7頭)のあいだで、生存率(Survival rate)には有意差は認められませんでした。一方、死亡の原因で最も多かったのは嚥下障害(Dysphagia)で、非生存率とのあいだにも有意な相関(Significant correlation)が存在していました。このため、喉嚢真菌症の罹患馬に対しては、適切な治療が施されることで、致死的出血(Fatal hemorrhage)は未然に防げるものの、脳神経損傷(Cranial nerve disorders)による嚥下障害を継発してしまうと、二次的に予後が大きく悪化することが示唆されました。
この研究では、喉嚢真菌症の罹患馬に認められた病歴としては、鼻汁排出(Nasal discharge)が最も多かったのに対して、鼻出血(Epistaxis)を呈した馬は半数に留まっていました。しかし、他の文献では、喉嚢真菌症の罹患馬では、そのうち七割以上に鼻出血が見られるという知見もあります(Lepage et al. 2005)。この研究では、初診までの病歴の長さに幅が大きかった事から、血を伴わない鼻汁排出は、喉嚢真菌症の初期徴候である可能性が示唆されており、病態の早期発見のために喉嚢の精密検査を実施する所見として重要であると指摘されています。一方で、血液検査において貧血(Anemia)や白血球増加症(Leukocytosis)が認められた馬は、いずれも14%(3/21頭)のみでした。
この研究では、28頭の全症例で内視鏡検査が実施され、そのうち96%(27/28頭)において、罹患側の喉嚢における内側区画の背内側部(Dorsomedial aspect of the medial compartment)に、真菌プラーク(Mycotic plaque)の形成が確認され、側頭舌骨関節(Temporohyoid joint)と内頚動脈(Internal carotid artery)が覆われている所見が見られました。また、28頭のうち、左側の喉嚢が罹患していた馬は68%(19/28頭)で、右側は32%(9/28頭)となっていましたが、この左右差の原因については、明確には結論付けられていませんでした。
Copyright (C) nairegift.com/freephoto/, freedigitalphotos.net/, pakutaso.com/, picjumbo.com/, pexels.com/ja-jp/ All Rights Reserved.
Copyright (C) Akikazu Ishihara All Rights Reserved.
関連記事:
馬の病気:喉嚢真菌症
Dobesova O, Schwarz B, Velde K, Jahn P, Zert Z, Bezdekova B. Guttural pouch mycosis in horses: a retrospective study of 28 cases. Vet Rec. 2012; 171(22): 561.
この症例論文では、馬の喉嚢真菌症(Guttural pouch mycosis)の病態、有用な治療法、および、予後を解明するため、1999~2011年にかけて、二箇所の二次診療施設において、内視鏡検査(Endoscopy)での喉嚢真菌症の確定診断(Definitive diagnosis)が下された28症例における、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective study)が行われました。
結果としては、安楽死(Euthanasia)または斃死した馬の割合は50%(14/28頭)に及んでいましたが、内科的治療が行われた馬(3頭)、外科的治療が行われた馬(11頭)、および、両方が行われた馬(7頭)のあいだで、生存率(Survival rate)には有意差は認められませんでした。一方、死亡の原因で最も多かったのは嚥下障害(Dysphagia)で、非生存率とのあいだにも有意な相関(Significant correlation)が存在していました。このため、喉嚢真菌症の罹患馬に対しては、適切な治療が施されることで、致死的出血(Fatal hemorrhage)は未然に防げるものの、脳神経損傷(Cranial nerve disorders)による嚥下障害を継発してしまうと、二次的に予後が大きく悪化することが示唆されました。
この研究では、喉嚢真菌症の罹患馬に認められた病歴としては、鼻汁排出(Nasal discharge)が最も多かったのに対して、鼻出血(Epistaxis)を呈した馬は半数に留まっていました。しかし、他の文献では、喉嚢真菌症の罹患馬では、そのうち七割以上に鼻出血が見られるという知見もあります(Lepage et al. 2005)。この研究では、初診までの病歴の長さに幅が大きかった事から、血を伴わない鼻汁排出は、喉嚢真菌症の初期徴候である可能性が示唆されており、病態の早期発見のために喉嚢の精密検査を実施する所見として重要であると指摘されています。一方で、血液検査において貧血(Anemia)や白血球増加症(Leukocytosis)が認められた馬は、いずれも14%(3/21頭)のみでした。
この研究では、28頭の全症例で内視鏡検査が実施され、そのうち96%(27/28頭)において、罹患側の喉嚢における内側区画の背内側部(Dorsomedial aspect of the medial compartment)に、真菌プラーク(Mycotic plaque)の形成が確認され、側頭舌骨関節(Temporohyoid joint)と内頚動脈(Internal carotid artery)が覆われている所見が見られました。また、28頭のうち、左側の喉嚢が罹患していた馬は68%(19/28頭)で、右側は32%(9/28頭)となっていましたが、この左右差の原因については、明確には結論付けられていませんでした。
Copyright (C) nairegift.com/freephoto/, freedigitalphotos.net/, pakutaso.com/, picjumbo.com/, pexels.com/ja-jp/ All Rights Reserved.
Copyright (C) Akikazu Ishihara All Rights Reserved.
関連記事:
馬の病気:喉嚢真菌症