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疝痛の治療や予防に関する33個の注意事項

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馬の疝痛を治療および予防するときに注意すべき事項をおさらいしましょう。

疝痛とは、消化器疾患などにより馬が腹部疼痛を示している様子を指しますが、馬の消化器疾患の総称としても使われる用語です。馬の疝痛は、現在でも一番多い死因であり、早期診断と早期治療が重要であるにも関わらず、正確な診断が下せないまま治療方針を判断しなくてはいけないシチュエーションも多いという、ホースマンにとって大変に厄介な病気であると言えます。ここでは、そのような疝痛の治療や予防における注意事項が、“べし・べからず集”(Do’s and Don’ts)として33個ほど挙げられています。

参考資料:
James Carmalt, Michael N. Fugaro, Amy Plummer Weatherly, Marcia King. Dealing With Equine Colic: Here are 33 Do's and Don’ts. The Horse Topics, Horse Care, Jun6, 2022.



馬が疝痛症状を示したときの注意事項

その1:馬の身体検査をしましょう。
疝痛馬の心拍数と体温を測定しましょう。心拍数は、聴診器が無くても顔にある動脈を触ることで分かり、体温は直腸温度を測れば大丈夫です。これらの情報は、獣医師に往診の依頼をする時にも役立ちますし、疝痛の経過を客観的に判断する一助にもなります。また、蹄壁が熱を持っていないか、臀部の筋肉が固くなっていないか等も確認しましょう。これらは、疝痛に症状が似ている蹄葉炎や横紋筋融解症を診断するのに有効です。

その2:ボロが出ているかを見ましょう。
疝痛馬の馬房の敷料を観察して、排糞が見られるか否かを確かめましょう。ボロがまったく無いか、ひどい下痢便が出ている場合には、深刻な消化器疾患が起こっている可能性があります。また、ボロの硬さや、表面に粘膜が付着しているか、悪臭や変色が無いかどうかも有益な情報となりえます。

その3:獣医さんにすぐ連絡しましょう。
疝痛の症状の重さや経過の長さに関わらず、獣医師への電話連絡は速やかに行ないましょう。獣医師は、必要であれば、現場で実施できる対応を指示して頂けますし、それが遅れると、小さな問題が深刻な事態に悪化してしまう可能性もあります。その際、心拍数や体温、痛がり方の度合いなどを正確に話せるように、身体検査の数値や馬の臨床徴候などは、紙に時系列で書き留めておくのが望ましいです。近年は、スマホ等で簡単に写真や動画の撮影および送付が出来ますので、これらも上手に活用して、疝痛馬の様子を獣医師に正確に伝えるのが望ましいと言えます。

その4:もう少し様子を見てから獣医さんに電話しよう、という考えはダメ。
疝痛のタイプによっては、獣医師への連絡や、獣医師からの指示が遅れることで、致死的な結果になる可能性も否定できません。たとえば、胃拡張が悪化して胃破裂を起こしてしまうと、助ける手段はありませんし、これは疝痛症状が出始めてから数時間で起こってしまう場合もあります。ですので、たとえ疝痛の症状が出始めたばかりであっても、いたずらに時間を置いてしまうのではなく、速やかに獣医師に電話をして、適切な指示を受けるのが良いと言えます。

その5:馬の様子を細かく観察・記録しておきましょう。
疝痛馬が出てしまった際に、数時間後にまた様子を見に来ようと思っていると、消化器疾患の病態が急激に悪化してしまうことも多々あります。疝痛症状を示している馬は、最低でも15~20分おきに観察して、症状を記録しておくことが必須です。近年は、ペット監視用のオンラインカメラ等の機器も普及していますので、馬の様子を継続的にモニタリングする手法として導入してみても良いと思います。



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獣医師を待っているあいだの注意事項

その6:曳き馬をしましょう。
曳き馬運動は、消化管の正常な蠕動を刺激する効能に加えて、馬房内で転げ回ることで怪我をしてしまうのを防ぐメリットもあります。通常、軽い疝痛を示した馬の約半数は、曳き馬だけで治ることが知られており、45~60分間の活発な常歩運動(馬が疲労困憊しない程度のスピードで)をさせることが推奨されています。ただし、曳き馬している最中に、馬が痛がって座り込もうとしたり、鼓脹により重篤な腹囲膨満を示していたり、内毒素ショックで心血管系の機能障害を起こしかけているような症例では(頻脈、頻呼吸、口腔粘膜の充血や紫色化を示す)、常歩運動を課すことで容態を悪化させますし、結局は常歩では快方に向かわず、内科的・外科的治療を要することになります。ですので、もし可能であれば、まず最初に、疝痛馬の症状を獣医師に電話連絡して、曳き馬をしても構わない病状であることを確認することが大切であると提唱されています。

その7:過度な運動をさせてはいけません。
疝痛馬に対して、強すぎる運動を課してしまうと、消化管の蠕動を減退させてしまいますし、馬が疲労してしまい、体液とエネルギーの損失につながってしまいます。このため、基本的には、疝痛馬を運動させるときには、曳き馬での常歩運動に留めておくべきです。例外としては、獣医師の診断と判断によっては、短時間の調馬索運動で馬体を揺することで、盲腸に貯留したガスの排出や分散を図ったり、腎脾間捕捉した結腸を振動で外すことを試みるケースもあります。

その8:エサは食べさせないようにしましょう。
疝痛馬が飼料を摂食すると、原因病態を悪化させてしまう危険性がありますので、馬房内では口カゴを装着させ、飼い桶は外して、敷料に混ざった乾草片なども取り除きましょう。疝痛馬のなかには、痛くても食欲を示す個体もいますので、獣医師の診断によって、エサを食べさせても大丈夫だという判断が下るまでは、給餌を停止することが推奨されます。なお、エサに興味を示すか否かは、疼痛の度合いを判断する一つの指標にはなりますので、経時的に記録しておきましょう。

その9:獣医師の検査が済むまでは飲水もさせないようにしましょう。
疝痛馬のなかでも、重度な胃拡張を起こしている症例では(過食や小腸液の逆流など)、飲水して胃内容が更に増加することで、胃破裂を引き起こしてしまうリスクがあります。ですので、獣医師が検査を行ない、経鼻で胃カテーテルを入れて、胃拡張の有無を判断するまでは、水桶を外して、飲水を制限するのが好ましいと言われています。一方で、重篤な脱水を起こしていて、獣医師の到着までに時間が掛かる場合には、少量の自発飲水をさせる方が良いケースもありえますので、馬の容態を獣医師に連絡して、適切な指示を受けるのがベストだと言えます。

その10:獣医師の指示なく鎮痛剤を投与するのは止めましょう。
疝痛馬に対して、獣医師が検査をする前にバナミン等の鎮痛剤を打ってしまうと、疼痛症状(前掻き、膁部見返り、頻繁な寝起き、転げ回る等)が隠されてしまい、正確な診断が困難になってしまう事もあります。ですので、疝痛の原因や重篤度の診断が下されるまでは、バナミン投与は控えることが賢明だと言われています((獣医師が電話で指示した場合を除き)。なお、疝痛の原因が胃潰瘍や大腸炎であった場合には、バナミン投与そのものが病気を悪化させる可能性もあることを知っておきましょう。

その11:鎮痛剤の過剰投与は止めましょう。
疝痛馬に対しては、獣医師が検査をする前はもちろん、獣医師が診断を下して、鎮痛剤を投与する指示があった場合でも、処方量以上の鎮痛剤は投与しないようにしましょう。馬の消化管の病態は、急激に悪化してしまうことも多く、軽い病態から重い病態を続発することもあります(便秘疝が長引いて腸捻転を継発するなど)。このため、バナミン等の鎮痛剤の効き目が落ちてきているか否かを、遅延なく見極めるためにも、安易に頻回投与するのは危険だと言えます。バナミンが効かないのは、量が不足しているからではなく、クスリでは抑えられないほど痛みが強い、つまり、深刻な病気が患っているからである、という認識が大切なのです。

その12:水やオイルなどを経口投与するのは止めましょう。
疝痛馬に対して、ホースを口に突っ込んで水を飲ませたり、オイルをシリンジで口内に流し込むなどの処置をしてしまうと、誤嚥によって肺炎を起こしたり、窒息死するリスクもあります。これらは、治療効果も限定的ですので、絶対に行わないようにしましょう。

その13:浣腸をするのは止めましょう。
馬の直腸壁は、極めて虚弱な構造をしており、獣医師でない者が浣腸処置をすることで、粘膜から出血したり、直腸穿孔によって致死的な腹膜炎を起こしてしまう危険性があります。実際のところ、浣腸だけで完治するのは、出口から近い箇所の食滞だけですので(小結腸便秘など)、獣医師の診断結果に基づいて、浣腸の必要性を見極めて、適切なタイミングと手法で浣腸を実施することが重要であると言えます。

その14:重度の疝痛馬は安全な場所に移動させましょう。
もし、疝痛症状が重く、馬が転げ回って馬房の壁沿いにハマり込んでしまったり、顔や肢をぶつけて自傷してしまうような状況であれば、その馬は、小さなパドックやボックスストール等の安全な場所に移動させましょう。ただし、馬が長時間にわたって横臥しても大丈夫なように、足場は牧草地または深い砂地であることが望ましいです。また、乳離れしていない子馬がいる母馬において、疝痛症状で暴れ回って子馬を怪我させてしまう可能性があれば、別々の馬房に移したほうが良いかもしれませんが、子馬から離されることで興奮してしまうリスクもありますので、常にお互いの顔が見える位置に置くなど、臨機応変に対処することも重要です。

その15:輸送車両の手配を始めておきましょう。
もし馬運車が常備されていない場所であれば、輸送用の車両を手配しておくのが賢明です。たとえ、軽い症状の疝痛であっても、容態が急激に悪化して、開腹術のために二次診療施設に緊急輸送する必要性が出てくることも多々あるからです。



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二次診療施設に輸送している最中の注意事項

その16:馬運車内では隔離壁は外しましょう。
疝痛馬を輸送する際には、強い痛みで座り込もうとして、隔離壁の下にハマり込むなどの事故が起こる危険性があります。ですので、もし可能であれば、隔離壁などの構造物は取り外すか、十分に広い幅で設置することが推奨されています(勿論、疝痛馬以外の馬は同時に積み込まない)。その一方で、疝痛馬は脱水や栄養吸収不全のため疲労していて、隔離壁などにもたれ掛かることで、輸送中に起立するのを補助できるケースもあります。ですので、輸送前の馬の様子を鑑みて、最も安全に輸送できるように臨機応変に馬運車を準備しましょう。

その17:馬運車内の馬積載エリアに同乗するのは止めましょう。
疝痛馬は、輸送中に激痛に見舞われて暴れたり、ショック状態になって倒れ込む可能性もあり、馬を積載しているエリアに人間が乗り込むのは極めて危険です。疝痛馬の容態が心配なのは理解できますが、輸送中に同乗者が出来ることは殆どありませんので、人間の安全のためにも、積載エリアに乗り込むことは絶対に止めましょう。



疝痛馬に内科的・外科的治療をするときの注意事項

その18:獣医師の指示から外れた治療を施すのは止めましょう。
疝痛馬の治療方針は、その原因病態や重篤度によって異なりますので、投与するクスリの量や種類、投与する長さなどは、必ず指示通りに行ない、獣医師への相談と協議無しに変更することは絶対に止めましょう。特に、鎮痛作用のあるクスリを、必要以上の頻度で投与してしまうと、疼痛症状が覆い隠されてしまい、開腹術のタイミングを逸してしまう可能性もあることを知っておきましょう。

その19:開腹術をした場合、術創を頻繁にチェックしましょう。
馬の開腹術では、他の動物種よりも合併症が起こりやすく、迅速な対応を要することが一般的です。ですので、開腹術が行われた馬は、縫った術創の状態を頻繁に観察して、創部からの出血や滲出液、膨隆、裂開などが無いかを見極め、不安な徴候が認められた場合には、速やかに獣医師に連絡するようにしましょう。

その20:開腹術をした場合、術創には触れないようにしましょう。
馬は細菌感染に非常に弱い動物であり、縫った術創が感染した場合には、重篤な合併症を引き起こしますので、術創の様子がおかしい場合でも、速やかに獣医師に連絡を取るようにして、術創を手指で触るのは止めましょう(通常、術創に問題が生じるリスクがある段階では、退院させないことが殆どですが)。

その21:開腹術をした場合、合併症や非常時対応について十分に理解しておきましょう。
開腹術を行なった馬を自宅に連れて帰るときには、どのような術後合併症が起こり得て、その時にはどのような臨床徴候が見られ、また、その際にはどのような対処をする必要があるのか、等について、獣医師に説明を受けて、十分に理解しておくことが重要です(勿論これは、獣医師側の責任ではありますが)。



疝痛の予防および事前準備に関する注意事項

その22:給餌内容は一定に保ち、変更するときは緩やかに。
一般的に、馬の疝痛は、新しい乾草のバッチに変更するときに頻発することが知られています。また、春先に牧草地での摂食を再開するときや、濃厚飼料の種類や量を変更したときにも、疝痛を起こしやすいと言われています。このため、疝痛予防の観点に立てば、各馬の給餌内容は出来る限り一定に保ち、それを変更する際には、最低でも10日間以上を掛けて、緩やかに変化させていくことが重要です。その際、前掻きなどの疝痛症状の有無だけでなく、ボロの量や性状に変化が無いかどうかも注視しておくのが大切です。

その23:飼い付けの回数を増やしましょう。
本来、馬という動物は、一日の大部分の時間を、牧草の摂食に費やすことが知られています。ですので、舎飼いの馬においても、出来る限り飼い付け回数を増やして(最低でも一日3回)、それぞれの飼い付け時における給餌量を少なく抑えられるよう努めることが大切です。仮に、早朝や深夜の飼い付け人員のために、人件費や手間が掛かったとしても、疝痛の治療費を抑えられる方が、実際の費用対効果は高いことを知っておきましょう。また、飼い付け回数を増やすのは、疝痛予防の他にも、馬が退屈になるストレスを減らすことで、気性を温和に保ったり、悪癖を覚えてしまうのを防ぐという効能もあります。一方で、飼い付けの回数を増やすのが難しいという場合には、馬がエサをゆっくりと食べるようにする飼い桶や乾草ネットも市販されています。

その24:粗飼料中心の給餌内容を検討してみましょう。
本来、馬の腸管は、穀物などの濃厚飼料を消化するのに適した構造・機能になっていないので、濃厚飼料の多給は、疝痛の発症率を増加させることが知られています(その他にも、蹄葉炎、代謝病、肥満などの発生率も上がる)。勿論、各馬の運動量に応じて、濃厚飼料の給餌は必要になりますが、定期的に飼料計算を行なって、不必要な量や種類の濃厚飼料は給餌せず、可能な限り、乾草等の粗飼料中心の給餌に調整していくことが推奨されます。

その25:飲水量の維持に努めましょう。
馬の疝痛の原因としては、結腸の食滞(いわゆる便秘疝)が最も多いと言われており、その予防のためには、馬が充分に飲水することが極めて重要です。馬の一日の維持水分量は、体重1kgあたり60ccであり(体重500kgの馬で約30リットル)、通常は、発汗や排尿などのため、維持水分量の1.6~2.0倍の飲水が必要となります(体重500kgの馬で48~60リットル)。飲水量を維持する手法としては、温度調節できる水桶を整備して、冬場は温水、夏場は冷水を与えることが有効であり、また、飲水量が減る時期には、フスマや電解質(ポカリスウェット等)を混ぜたものを用手給水したり、一時的に塩の添加量を増やして自発飲水を促すなどの方策もあります。

その26:運動量は規則正しく。
一般的に、舎飼いの馬では、放牧飼いの馬に比べて、運動量が変動してしまうことが多く、その要因としては、季節性の気温変化、年末などの休日シーズン、競技会シーズンとオフシーズンの差異、故障による休養などが挙げられます。しかし、疝痛予防の観点から言えば、運動量を規則正しく保つことは、消化管蠕動や飲水量の維持のために重要です。ですので、手間や時間を惜しまず、年間を通して、運動量の上下幅が大きくならないように努めましょう。

その27:適切な駆虫を行ないましょう。
消化管内の寄生虫は、子馬において直接的な小腸閉塞を起こすのみならず、成馬においても、腸壁損傷による蠕動不全から、食滞や便秘を起こすことが知られています。ですので、獣医師の指導のもと、適切な駆虫剤の投与を行ない、必要に応じて、糞便内の虫卵検査を実施することも重要です。近年は、日本でも駆虫剤に耐性をもつ寄生虫が増加しており、定期的に駆虫剤を投与している乗馬倶楽部や牧場でも、寄生虫に起因する疝痛が増加傾向にあることが知られています。

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その28:砂を誤嚥する環境を無くしていきましょう。
馬の疝痛の原因としては、腸管内の砂貯留も重要であり、砂疝の予防のためにも、摂食時に砂を誤嚥しないような環境整備が大切です。特に、放牧地で乾草を給餌するときには、乾草を大きな容器に入れて与えたり、給餌場所を頻繁に変更して地面が露出するのを防いだり、また、給餌場所の地面にゴムマットを敷くなどして、地表から直接的に摂食しないような工夫を施すことが有用です。

その29:糞便の沈殿試験で砂貯留の有無を確かめましょう。
これはとても簡単な検査法で、馬糞2~3個を大きめのZiplocバッグに入れて、500mL~1L程度の水と混和して静置します。もし、バッグの角にスポーン半杯以上の砂が沈殿する場合には、腸管内に多量の砂貯留が起きている可能性が高いと言えます。もし砂が沈殿しない場合でも、同じ検査を三日間連続で実施して、再現性を確認することが推奨されています。

その30:砂貯留があった場合、サイリウム投与を検討しましょう。
もし、前述のボロの沈殿試験において、砂貯留の疑いが出た場合には、獣医師に精密検査を依頼して、砂貯留の有無や量を評価して、必要であれば、サイリウムという砂を排出させるサプリの投与(腸内容液の粘稠度を上げて、ボロと一緒に砂が出やすくする)が必要になる場合もあります。また、砂の排出が達成されるまでは、砂の誤嚥を起こすような環境は避けることが大切です。

その31:回帰性疝痛を起こす馬の場合、獣医師の精密検査を受けましょう。
軽度の疝痛が毎月数回以上も頻発する馬においては、獣医師に精密検査を依頼して原因究明を図り、適切な予防措置の指導を受けることが重要です。原因によっては、軽度の疝痛を繰り返しているあいだに特定箇所の消化管がダメージを受けて、より重篤な疝痛を継発して、致死的な容態になってしまう事もあるからです。また、疝痛の頻発を未然に予防できれば、治療費も抑えられ、鞍数を維持できるというメリットも大きいです。

その32:回帰性疝痛を起こす馬の場合、胃潰瘍の治療を検討しましょう。
馬はその消化管の構造と機能から、胃潰瘍を発症しやすい動物であり、競走馬での有病率は八~九割にのぼる事が報告されています。また、胃潰瘍の症状としては軽度疝痛を示して、小腸や大腸の病気と区別するのが難しいことが知られています。ですので、回帰性の軽度疝痛を呈する馬においては、獣医師に精密検査を依頼して、胃カメラによる確定診断や、胃酸分泌を制御する内服薬(オメプラゾール等)を試験的投与する(いわゆる診断的治療法)ことを検討するのが望ましいです。もし、胃潰瘍を起こしている馬では、その治療を通して、疝痛予防できるだけでなく、競技能力の向上にも繋がることが知られています。

その33:馬の健康保険に加入することを検討しましょう。
疝痛馬の治療では、特に開腹術を要するような重篤な疾患においては、治療費も高額になりますので、そうなる前に、治療費をカバーするための動物用の健康保険に加入することを検討してみても良いかもしれません。今回の参考資料は米国のもので、馬が加入できる動物用保険も多いお国柄なのですが、日本では同様な保険は少ないと考えられます。ですので、もし回帰性疝痛を頻発する馬がいる場合には、日本特有のシステムであるNOSAI制度(農業共済制度)を利用することを検討してみても良いと思います。



馬の疝痛は、ホースマンが最も多く遭遇する馬の病気であり、その殆どが比較的容易に回復するのですが、こじらせれば、馬の命を奪う結果にもつながる非常に怖い病気です。このため、疝痛の対処法に関する正しい知識を持ち、決して油断をせず、獣医師に指示を仰ぐことを躊躇わず、早期診断と早期治療を施すことが大切ですし、普段から、疝痛予防に寄与できる方策に根気強く取り組んでいくことが重要であると言えます。

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Rowdy Pony

Author:Rowdy Pony
名前: 石原章和
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年齢: 40代
住所: 茨城県
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