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割れにくい蹄をつくろう

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割れにくい蹄をつくる方法はあるのでしょうか?

馬に起こる裂蹄という病気は、蹄壁が割れたり、裂け目を生じてしまった状態を指し、亀裂が深部まで達してしまうと強い痛みを呈して、その馬を騎乗することが出来なくなるため、乗馬や競馬において大変重大な問題となります。裂蹄を起こした蹄に対しては、装蹄師や獣医師が、割れた箇所の蹄壁を、固定したり修復させる措置を講じます。この際、蹄壁のどの部分を裂傷しているかによって、治療の難しさや、長期的な合併症の深刻さに差異が出てきます。

しかし、これらの処置は、あくまで裂傷が悪化しないようにするに過ぎません。裂蹄を完治させるには、蹄が自然に伸びていき、毎月それを削切するうちに、割れた箇所の蹄壁までを全て取り除くことが最終的なゴールになります。

まさに、「蹄なくして馬なし」(No hoof no horse)という格言のとおり、健康な蹄が無ければ、馬そのものを健康に保つことは出来ない、という事になります。また、裂け目の長さによっては、完治までに数ヶ月から半年以上を要して、その期間は強い運動負荷を課せられない場合も多々あります。

そう考えると、裂蹄は治すことよりも、予防していくことが大切な病気であると言えます。一般的に、裂蹄を起こしにくい「健常で丈夫な蹄」をつくるためには、飼養環境、栄養、血液循環などを改善していくことが推奨されています。

参考資料:
Raul Bras. Horse Hoof Cracks and Lameness. The Horse, Topics, Hoof Care, Jul2, 2022.
Katie Navarra. 4 Horse Hoof Hardening Tips. The Horse, Topics, Hoof Care, Apr29, 2020.
Nancy S Loving. Nutritional Support for Horse Hooves. The Horse, Topics, Hoof Care, May21, 2015.



裂蹄を予防するための飼養管理

基本的に馬の蹄は、乾燥しすぎて、水分不足になることで裂傷するケースもありますが、一方で、湿潤(蹄壁膨張)と乾燥(蹄壁収縮)を繰り返すことで虚弱化していき、踏着時の衝撃で割れてしまい易くなるとも言われています。このため、裂蹄を予防する一番の方策は、蹄が過度に湿潤した状態にならないように飼養環境を維持することにあります。具体的には、放牧飼いの馬の場合、放牧地内の水はけを良くしたり、土や泥が露出している箇所を無くすことで、馬の蹄が泥だらけにならないよう努めます。

一方、舎飼いの馬の場合には、毎日の馬房掃除や敷料補充、一日数回のボロ拾いによって、馬房の敷料が過度に湿った状態にならないようにします。馬房を汚してしまう馬に対しては、必ず一日二回は裏掘りをおこない、敷料を十分に厚くしたり、オガから藁に変更する等の方策も有用です。



裂蹄を予防するための栄養管理

次に大切なのは、健常で丈夫な蹄の成長を促すための栄養管理になります。具体的には、十分な量のアミノ酸に加えて、水溶性ビタミンB(ビオチン)や多種類のミネラル、必須脂肪酸などが重要であると言われています。このうち、アミノ酸では、特にメチオニンとシステインが重要であり、また、ミネラルでは、銅、亜鉛、マンガン、セレン等が必須であることが知られています。これらは、新鮮な青草が給餌されていれば、必要量を問題なく摂取させられますが、乾草が中心の現代の馬飼養においては、乾草の質が季節性に低下した場合などには不足しやすいと言われています。

このため、裂蹄を頻繁に起こす馬に対しては、これらの栄養成分を補うためのサプリメントを飼料添加することが推奨されています。市場には、馬の蹄を健常に保つという効能を謳った多種類のサプリが販売されていますので、これらを有効に活用するのが望ましいと言えます。



裂蹄を予防するには蹄の血液循環も重要

また、蹄の健康状態を維持するためには、蹄組織に良好な血液循環があり、酸素や栄養が充分に供給されていることが重要です。基本的に、蹄は固い角質組織で構成されており、心拍出による抹消血圧だけでは、蹄組織への血流は不十分であり、蹄に荷重する時の内外蹄踵の拡張と収縮作用(いわゆる蹄機作用)を介したポンプ機構を付与することで、はじめて十分な血液循環が達成されることが知られています。つまり、規則正しい運動負荷を蹄に課すことが、血液循環および蹄の健康状態の維持には必須である、という事になります。

さらに、装蹄によって適切な蹄形を維持することも、血液循環を向上するために大切であり、具体的には、四点削切(いわゆる4-point trim)および機械的ロッキング作用(Mechanical rockers:反回点を尾側に移動させる方法)を得られるような装蹄を施すことで、蹄底の深さが増して、深屈腱緊張を緩和させることに繋がり、蹄組織への血液循環を改善できると提唱されています。



裂蹄を予防するための蹄管理

そして、健常で丈夫な蹄を作り出すためには、蹄そのもののケアも必要不可欠であり、裏掘りや蹄洗によって蹄を清潔に保ち、蹄油の塗布によって適度な湿潤状態を維持することが重要です。健康状態が悪い蹄の場合には、裏掘りは一日一回ではなく、朝夕の二回必要になるかもしれません。

加えて、蹄を堅固にする外用剤(いわゆるHoof hardener)も市販されており、これを蹄冠部などに塗ることで、蹄の健康状態を改善して、丈夫な蹄組織を生成するという効能が謳われています。しかし、そのような外用剤は、あくまで補助的な作用しか得られませんので、前述の飼養環境改善や栄養管理、適度な運動、正しい装蹄を施した上での、付帯的な手法であるという認識が大切なのだと言われています。



裂蹄を予防するために重要なこと

最後に忘れてはいけないのは、健常で丈夫な蹄をつくるには時間が掛かるという事です。自然に蹄が伸びていき、蹄壁の全長が完全に置換されるには丸一年を要することが知られています。つまり、裂蹄を起こしにくいような良質の蹄をつくるためには、上述のような手法を、年単位の時間をかけて、根気強く取り組んでいくことが必要になってくるのではないでしょうか。

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