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馬が排尿したらアブミに立つべきか?

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もし、自分が乗っている馬がオシッコをし始めたら、私たちは鐙に立ってあげるべきなのでしょうか?

思い返してみると、私たちが馬に乗り始めたばかりのビギナーの頃、インストラクターから言われたのは、馬がレッスン中に排尿を始めたら、鐙に立ち上がって、鬣を掴んで、ツーポイントの姿勢を取り、馬の背中を圧迫しないようにしましょう、という指導でした。その理由としては、鞍の下の位置には馬の腎臓があるので、馬が排尿する時には、その腎臓を圧迫しないようにしないと、うまくオシッコが出せない、という感じの話だったかもしれません。しかし、これには科学的根拠はあるのでしょうか?

参考資料:
Lindsay Berreth. To Sit Or To Stand? Chronicle of the Horse, Horse Care, Controversy, Sept18, 2017

結論から言うと、馬の背中を圧迫していても排尿することは出来ます。そもそも、オシッコが溜まっている膀胱は、下腹部にあり背中への圧迫とは無関係です。また、腎臓も鞍よりは少し尾側に位置していますし、排尿している最中に腎臓に溜まっていた尿が膀胱に流れ込んでいる訳ではありません。何より、馬の背中を走っている筋群はかなりの厚みがありますので、背中に圧迫が加わっていても、腎臓が圧迫されてその働きが阻害されることにはなりません(腎臓以外の腹腔臓器も同様です)。

そうなると、「馬の排尿時に鐙に立つ」という考え方は、馬が排尿姿勢を取っている様子を傍から見たときに、ライダーがツーポイントを取ってあげた方が、馬自身がバランスを取り易いのでは、という率直な印象を持ったからではないか、という考察がなされています。実は、ウェスタン乗馬の領域では、馬が排尿するときに鐙に立ちましょう、ということは殆ど耳にしたことが無い、という見解も示されています。

確かに、馬が排尿するときには、下腹部の筋肉に力を入れて、膀胱から尿を押し出そうとしますので、両後肢を後方に引いて、骨盤を頭側に傾ける姿勢を取ります。このため、馬全体としては前傾姿勢になり、重心を前方に移動させながら、後肢よりも前肢により多くの負重を掛けることになります。ですので、ライダーとしても、鐙に立ちながら前傾姿勢を取り、馬体の前駆にバランスを持っていき、後躯や後肢に掛かる負荷を減らしてあげることで、馬が排尿姿勢を取り易くなるようにしているのだと思います。

そう考えると、馬が排尿するときにも、必ずしも、ライダーが完全に鐙に立ち上がる必要は無く、鞍に座ったままで、少しだけ前傾姿勢を取ってあげるだけで十分なのかもしれません。特に、軽速歩もできない乗馬初心者のレッスン中であれば、無理に鐙に立とうとして、馬上でバランスを崩すと、万が一に、排尿後に馬が動いたり跳ねたりすると、落馬事故につながってしまう事もありえます。

また、馬が排尿しようとする時に、敢えてライダーが前傾姿勢を取らずにいると、馬は通常の排尿姿勢よりも、更にもう少しだけ前傾したり、頭を低く下げて重心を頭側へ移動させます。そうすれば、ライダーの体重も含めて、馬自身のバランスを前方に傾けて、後躯を踏ん張ることが出来るからです。つまり、馬の排尿中においては、ライダーがどんな姿勢を取るかよりも、とにかく鞍の上でジッとしていてあげる、という事が最も大切なのかもしれません。

なお、馬が運動中に何度も排尿をしたがる場合には、泌尿器系の病気がある可能性もあります。たとえば、膀胱の中に結石が形成されていたり、砂状のカルシウム結晶が蓄積している場合には、騎乗によって膀胱壁が刺激されて、排尿感を誘発することになります。ですので、もし怪しい徴候が認められる場合には、獣医師に相談して、尿検査や膀胱内視鏡検査をしてもらうのが良いと思います。

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