fc2ブログ
RSS

馬の文献:喉嚢蓄膿症(Seahorn et al. 1991)

「二頭の馬に生じた喉嚢の類軟骨腫瘤の非外科的除去」
Seahorn TL, Schumacher J. Nonsurgical removal of chondroid masses from the guttural pouches of two horses. J Am Vet Med Assoc. 1991; 199(3): 368-369.

この研究論文では、喉嚢蓄膿症(Guttural pouch empyema)に起因する喉嚢の類軟骨腫瘤(Chondroid masses)に対して、非外科的除去(Non-surgical removal)が試みられた二頭の馬の症例が報告されています。

この研究の術式では、内視鏡検査(Endoscopy)によって見つかった喉嚢内の類軟骨が、生食による喉嚢洗浄(Guttural pouch lavage)のみでは洗い出せなかったため、内視鏡の生検チャンネルを通してDiathermic snare(加熱できる金属製のワイヤーのような器具)を挿入して、それぞれの類軟骨を熱で小片に切ってサイズを小さくしてから、生検チャンネルから通したチューブによって、その類軟骨の小片が吸引除去されました。その結果、二頭のいずれの症例でも、全ての類軟骨が完全に除去され、良好な予後が達成されたことが報告されています。

一般的に、馬の喉嚢蓄膿症では、早期治療が実施できれば、全身性の抗生物質療法(Systemic anti-microbial therapy)のみによる回復も期待できますが、喉嚢内に類軟骨が形成されてしまうと、自然な治癒(Spontaneous resolution)や喉嚢洗浄による除去は難しく、外科的切除術を要する場合が多いことが知られています。今回の研究で試みられた、内視鏡を介した類軟骨の切砕および吸引では、全身麻酔(General anesthesia)を要することなく、喉嚢の類軟骨腫瘤を非外科的に除去できるため、切開創治癒(Incisional healing)に起因する合併症(Complications)を避けられ、治療期間の短縮および安価での治療が達成できる、という利点が挙げられています。

この研究では、Diathermic snareによって切砕できるような、比較的に軟らかい素材の類軟骨の形成が起こっていましたが、症例によっては、腫瘤が硬すぎて熱による切砕が困難な場合もあると推測されます。また、喉嚢内には内頚動脈&外頚動脈(Internal/External carotid arteries)や複数の脳神経(Cranial nerves)が存在しているため、チューブを挿入して洗浄および吸引する際の外科的侵襲によって、これらの組織が医原性損傷(Iatrogenic damage)される可能性も否定できない、と考えられるのかもしれません。

Copyright (C) nairegift.com/freephoto/, freedigitalphotos.net/, ashinari.com/ All Rights Reserved.
Copyright (C) Akikazu Ishihara All Rights Reserved.

関連記事:
馬の病気:喉嚢蓄膿症






関連記事

プロフィール

Rowdy Pony

Author:Rowdy Pony
名前: 石原章和
性別: 男性
年齢: 40代
住所: 茨城県
職業: 獣医師・獣医学博士
叩けよ、さらば開かれん!

取り上げて欲しいトピックがあれば下記まで
E-mail: rowdyponies@gmail.com

最新記事

ブログメニュー

サイト内タグ一覧

推薦図書

FC2カウンター

関連サイト

リンク

カレンダー

05 | 2023/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

馬獣医療機器

月別アーカイブ

お断わり

20130414_Blog_Message_Pict1.jpg
このサイトに掲載されているイラスト、画像、文章は、すべて管理主自身が作成したもの、もしくは、著作権フリーの素材リンクから転載したものです。

カテゴリ

ホースケア用品

全記事表示リンク

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
83位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
13位
アクセスランキングを見る>>

FC2ブログランキング

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

検索フォーム

関連サイト

QRコード

QR