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馬の跛行検査2:肢勢検査

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肢勢検査(Conformation examination)について

一般的な正常前肢の肢勢では、正面から見た場合に、肩部の隆起点(Point of shoulder)から垂直に下ろした線が、手根(Carpus)、球節(Fetlock)、蹄(Foot)の軸中を通過して、前肢を内外側にほぼ二分し(上図A)、側面から見た場合には、肘関節(Elbow joint)の中心点から垂直に下ろした線が、手根関節(Carpal joint)と球節関節(Fetlock joint)のほぼ中心を通過して、蹄球(Heel bulb)の約5cm掌側に到達することが提唱されています(上図B)。

一般的な正常後肢の肢勢では、後方から見た場合に、臀部の隆起点(Point of rump)から垂直に下ろした線が、飛節(Tarsus)、球節、蹄の軸中を通過して、後肢を内外側にほぼ二分し(上図D)、側面から見た場合には、臀部の隆起点から垂直に下ろした線が、飛節および球節の底側面(Caudal surface)に触れながら、蹄球の8~10cm底側に到達することが提唱されています(上図C)。



一般的な正常遠位肢の肢勢では、蹄軸(Hoof axis)と繋軸(Pastern axis)は一直線を成し、内外側の蹄冠(Coronary band)を結んだ線および内外側の蹄球を結んだ線が地面に平行(Parallel to ground)で、繋部角度(Pastern angle)は前肢で約50度、後肢で約55度であることが提唱されています(下図A)。

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蹄繋軸後方破折(Broken-back hoof-pastern-axis)(蹄角度<繋角度)は、長蹄尖&低蹄踵(Long-toe and low-heel)の蹄形に起因することが多く、浅屈腱炎(Superficial digital flexor tendinitis)や舟状骨症候群(Navicular syndrome)などの素因となり易く、繋角度そのものが過剰な場合には、繋部の圧迫負荷の増加につながることから、繋骨瘤(“Ringbone”)の素因となり易いことが知られています(上図B)。一方、蹄繋軸前方破折(Broken-forward hoof-pastern-axis)(蹄角度>繋角度)は、生まれつき繋部の長い馬や、ペルビアンパソ等の品種の後肢に好発し、遠位肢の掌側面軟部組織の過剰緊張を生じ易いことから、繋靭帯炎(Suspensory desmitis)、球節の骨関節炎(Fetlock osteoarthritis)、基節骨骨折(Proximal phalanx fracture)、種子骨遠位靭帯炎(Distal sesamoidean desmitis)などの素因となり易いことが知られています(上図C)。



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前肢の蹄幅が肩幅よりも広い場合を広踏肢勢(Base-wide conformation)と呼び(上図A)、これに蹄内転肢勢(Toe-in conformation)を併発した場合には内弧歩様(Winging-out limb movement)(いわゆるPaddling)を呈することが多く(上図B)、逆に蹄外転肢勢(Toe-out conformation)を併発した場合には外弧歩様(Winging-in limb movement)を呈し、矯正が不十分であった手根外反症(Carpal valgus deformity)に起因することが多いことが示されています(上図C)。広踏肢勢は子馬に多く見られる正常範囲内の肢勢で、成長による肩幅の広がりで自然に矯正される個体が殆どですが、重度の蹄外転が残存した場合には管部の内側面への圧迫負荷の増加につながる事から、管骨瘤(“Splints”)の素因となり易いことが知られています。

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前肢の蹄幅が肩幅よりも狭い場合を狭踏肢勢(Base-narrow conformation)と呼び(上図A)、これに蹄内転肢勢を併発した場合には内弧歩様を呈することが多く、矯正が不十分であった手根内反症(Carpal varus deformity)に起因することが多いことが示されており(上図B)、逆に蹄外転肢勢を併発した場合には外弧歩様を呈し、上腕部での肢軸と管骨部での肢軸が手根関節でズレを生じる所見(Offset knee:いわゆるBench-knee)を続発して、手根関節の変性関節疾患(Degenerative joint disease)の素因となり易いことが知られています。



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肘関節から下ろした線よりも手根関節が前方に位置する肢勢(Camped-out in front sanding)は、一時的な立ち方による場合が殆どですが、蹄葉炎(Laminitis)などの蹄疾患に起因して、前肢の負荷減少を試みている症例に認められる事もあります(上図A)。肘関節から下ろした線よりも手根関節が後方に位置する肢勢(Camped-under in front sanding)は、手根関節の過伸展(Overextension)を起こした肢勢(いわゆるCalf-knee)に起因する場合が多く、手根骨破片骨折(Carpal chip fracture)や手根変性関節疾患(Carpal degenerative joint disease)などの素因となり易いことが知られています(上図B)。類似の外観で、手根関節の軽度屈曲(Mild flexion)を起こした肢勢(いわゆるBucked-knee)に起因する場合は、矯正が不十分であった手根屈曲性肢変形症(Carpal flexural deformity)に続発することが多いことが示されています。

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臀部端から下ろした線よりも後肢の球節が前方にある場合を鎌状飛節(Sickle-hock)と呼び、飛節底側面の軟部組織の過剰緊張を生じることから、飛節後腫(“Curb”)やサラピン(“Thorough-pin”)などの素因となり易いことが知られています(上図A)。飛節関節の角度が小さい肢勢は、直飛節(Straight-hock)またはPosty-hockと呼ばれ、遠位飛節関節の圧迫負荷が増加することから、飛節内腫(Bone spavin)や飛節盤状骨折(Tarsal slab fracture)などの素因となり易いだけでなく、膝関節(Stifle joint)の角度の減少につながることから、膝蓋骨上方固定(Patella upward fixation)を引き起こし易いことも示されています(上図B)。鎌状飛節と直飛節が併発した肢勢は特に弊害が大きく、多くの飛節疾患の素因となる可能性が示唆されていますが、ハーネスレースのスタンダードブレッドにおいては速度が出易かったり、ウェスタン競技のクォーターホースにおいては、スライディングストップに適していると考えられる場合もあります(上図C)。



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後肢の蹄外転肢勢は、多くの個体において正常範囲内の肢勢と考えられますが(上図A)、後肢蹄の広踏肢勢を伴った場合には牛状飛節(Cow-hock)(いわゆるKnocked-hock)と呼ばれ、矯正が不十分であった飛節外反症(Tarsal valgus deformity)に起因することが多いことが示されています(上図B)。後肢の狭踏肢勢(上図C)および広踏肢勢(上図D)は、前肢よりも弊害が少なく、多くの個体において正常範囲内の肢勢と見なされていますが、狭踏肢勢に蹄内転肢勢を伴った場合は弓状飛節(Bowed-hock)と呼ばれ、矯正が不十分であった飛節内反症(Tarsal varus deformity)に続発することが多く、競走&競技能力に影響を及ぼすことが多いことが示唆されています(上図E)。

肢勢検査における異常所見の評価に際しては、必ずしも跛行との因果関係があるとは限らないこと、および肢勢そのものの矯正が治療指針になるとは限らないこと、の二つを充分に考慮する必要があります。例えば、蹄繋軸後方破折の肢勢はナビキュラー病の素因となり易いことが示唆されていますが、(1)蹄繋軸後方破折を示す殆どの馬はナビキュラー病にならない事、(2)蹄繋軸が正常でもナビキュラー病になる馬は多い事、(3)ナビキュラー病の治療のために蹄繋軸後方破折の矯正を試みることは極めて困難であったり、無理な矯正によって他の蹄部&繋部疾患を併発する危険もある事、などを念頭に置いて、異常所見の有意性を慎重に判断することが重要です。

Photo courtesy of Adam’s Lameness in Horses, 5th edition. Eds: Stashak TS, 2002, Lippincott Williams & Wilkins (ISBN 0-6830-7981-6), and Diagnosis and Management of Lameness in the Horse. Eds: Ross MW and Dyson SJ, 2003, WB Sounders (ISBN 0-7216-8342-8).

馬の跛行検査シリーズ
馬の跛行検査1:歩様検査
馬の跛行検査2:肢勢検査
馬の跛行検査3:蹄鉗子検査
馬の跛行検査4:遠位肢の触診
馬の跛行検査5:近位肢の触診
馬の跛行検査6:前肢の屈曲試験
馬の跛行検査7:後肢の屈曲試験
馬の跛行検査8:診断麻酔指針
馬の跛行検査9:前肢の神経麻酔
馬の跛行検査10:前肢の関節麻酔
馬の跛行検査11:前肢の滑液嚢麻酔
馬の跛行検査12:後肢の神経麻酔
馬の跛行検査13:後肢の関節麻酔
馬の跛行検査14:後肢の滑液嚢麻酔
馬の跛行検査15:歩様解析





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