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馬の跛行検査 その4

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遠位肢の触診(Distal limb palpation)について

蹄部の触診では、背側部蹄冠(Dorsal coronary band)の熱感(Heat)、腫脹(Swelling)、圧痛(Pain on pressure)等の検査が行われ(上図)、蹄葉炎(Laminitis)では背側部蹄冠の温度上昇が触知され、特にシンカー型蹄葉炎の場合には、蹄冠の陥没(Depression)が認められる場合もあります。また、蹄関節炎(Coffin joint arthritis)では背側部蹄冠の軟性膨満と深部圧痛(Pain on deep palpation)が触知され、低繋骨瘤(Low ringbone)では顕著な圧痛を伴わない背側部蹄冠の硬化性腫脹(Firm non-painful swelling)が触知されます。

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内外側部の蹄冠(Lateral/Medial coronary band)の触診では、熱感、腫脹、圧痛等の検査が行われ(上図)、白線膿瘍(White line abscess)では限局性(Focal)の軟性腫脹と圧痛が触知され、蹄冠のすぐ上部からの間欠性化膿性排液(Intermittent purulent discharge)が見られますが、側副軟骨壊死症(“Quittor”)では比較的広汎性(Diffuse)にわたる熱感、腫脹、圧痛が触知され、白線膿瘍の場合よりもやや近位部からの化膿性排液が見られます。また、病態の進行した側副軟骨骨化症(“Sidebone”)では、軽度の圧痛を伴う内外側部蹄冠の硬化性腫脹が触知されます。

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蹄球部(Heel bulb)の触診では、熱感、腫脹、圧痛等の検査が行われ(上図)、白線に波及しない蹄底膿瘍(Subsolar abscess)では、多くの場合に蹄球の熱感と軟性腫脹を示し、病状の進行にともなって蹄球部からの化膿性排液を呈すること多い事が知られています。



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内外側繋部(Lateral/Medial pastern)の触診では、熱感、腫脹、圧痛等の検査が行われ(上図)、高繋骨瘤(High ringbone)では、僅かな熱感と顕著な圧痛を伴わない内外側繋部の硬化性腫脹が触知されます。この場合には、冠関節可動域(Range of joint motion)の減退を確認して、正常範囲内の骨性膨隆との鑑別を行うことが重要です。

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肢を挙上させての掌側繋部(Palmar pastern)の触診では、熱感、腫脹、圧痛等の検査が行われ(上図)、屈筋腱鞘(Digital flexor teondon sheath)内部での深屈腱炎(Deep digital flexor tendinitis)、および種子骨遠位靭帯炎(Distal sesamoidean desmitis)では、掌側繋部の軟性腫脹と軽度の圧痛が触知されます。また、中節骨(Middle phalanx)の掌側隆起骨折(Palmar eminence fracture)では、深部圧痛が認められる場合もあります。



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球節部(Fetlock)の触診では、繋靭帯脚(Suspensory branch)よりも背側部において球節関節の掌側関節嚢(Palmar pouch of fetlock joint)の熱感および腫脹の検査が行われ(上図)、球節破片骨折(Fetlock chip fracture)等に続発する非感染性の球節関節炎(Non-infectious fetlock arthritis)では、熱感を伴わない軽度~中程度の関節膨満(Joint effusion)が触知され、感染性の球節関節炎(Infectious fetlock arthritis)では、熱感を伴う中程度~重度の関節膨満が見られます。また、病態の進行した脚部繋靭帯炎(Suspensory branch desmitis)では、繋靭帯脚の肥大化(Enlargement)が触知されることもあります。

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球節部の触診では、繋靭帯脚よりも掌側部において屈筋腱鞘の熱感および腫脹の検査が行われ(上図)、特発性腱鞘炎(Idiopathic tenosynovitis)(いわゆるWindpuffs)では、圧痛を伴わない腱鞘膨満(Tendon sheath effusion)が触知され、輪状靭帯症候群(Annular ligament syndrome)では、屈筋腱鞘の熱感および軟性腫脹、輪状靭帯の肥厚化(Thickening)、球節掌側輪郭の凹み(Notch appearance on palmar outline of fetlock)等が触知されます。

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肢を挙上させての掌側部球節(Palmar fetlock)の触診では、熱感、腫脹、圧痛等の検査が行われ(上図)、近位種子骨骨折(Proximal sesamoid bone fracture)、種子骨炎(Sesamoiditis)、脚部繋靭帯炎等の病態において、掌側部球節の深部圧痛と軽度の熱感が触知されます。

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肢を挙上させて遠位肢を側方へ圧迫する検査(上図)においては、球節脱臼および亜脱臼(Fetlock luxation/subluxation)では関節不安定性(Joint instability)が触知され、球節の内外側の側副靭帯の断裂(Lateral/medial collateral ligament rupture)では、重度の疼痛反応(Marked pain response)が見られます。また、この操作は遠位肢の全関節に側方負荷を掛ける手技であるため、冠関節の脱臼および亜脱臼(Pastern joint luxation/subluxation)においても同様の所見が認められますが、球節脱臼および亜脱臼に比べて関節動揺は軽度である場合が殆どです。



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背側管部(Dorsal cannon)の触診では、熱感、腫脹、圧痛等の検査が行われ(上図)、管骨骨膜炎(“Bucked shins”)および管骨皮質骨折(Cortical fracture of cannon bone)では、背側管部の硬化性腫脹、軽度の圧痛および熱感が触知されます。

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肢を挙上させた状態での副管骨(Splint bone)(=第二&四中手骨&中足骨:Second/Fourth metacarpal/metatarsal bone)の掌側および軸側面(Palmar and axial surface)の触診では、浅屈腱&深屈腱を反対軸側へ押し出しながら、熱感、腫脹、圧痛等の検査が行われ(上図)、管骨瘤(“Splints”)では圧痛を伴わない硬化性腫脹が触知され、副管骨骨折(Splint bone fracture)では熱感および圧痛にあわせて、副管骨の硬化性膨隆および肥大化が触知されます。

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肢を挙上させた状態での近位掌側管部(Proximal palmar metacarpus/metatarsus)の触診では、浅屈腱&深屈腱を側方へ押し出しながら、熱感、腫脹、圧痛等の検査が行われ(上図)、起始部繋靭帯(Origin of suspensory ligament)の炎症、遠位支持靭帯炎(Distal check ligament desmitis)、近位掌側管骨の裂離骨折(Avulsion fracture)等の病態では、軽度の熱感と深部圧痛が触知されます。しかし、浅屈腱や深屈腱と異なり、繋靭帯は健常時においても僅かな圧痛反応を示すこともあるため、必ず対側肢靭帯との比較を行って、疼痛所見の有意性を慎重に判定することが大切です。

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肢を挙上させた状態での浅屈腱および深屈腱の触診では、二つの腱の緊張度(Tightness)、可動性(Mobility)、熱感、圧痛等の検査が行われ(上図)、屈曲性肢変形症(Flexural limb deformity)では浅屈腱&深屈腱のどちらか、または両方の腱の異常緊張(Excessive tension)が触知され、浅屈腱炎(Superficial digital flexor tendinitis)では羅患部位の熱感と圧痛にあわせて、腱同士の癒着(Adhesion)を併発した場合には二つの腱を個々に動かせない所見(Diminished individual movement of superficial/deep digital flexor tendon)が認められる場合もあります。



触診における異常所見は、いずれも跛行との因果関係を証明するものではないため、必ず診断麻酔(Diagnostic anesthesia)によって跛行が改善&消失する所見を確認して、熱感、腫脹、圧痛などの発生が、一次性疾患(Primary disorder)に起因することを証明することが重要であるという警鐘が鳴らされています。

Photo courtesy of Adam’s Lameness in Horses, 5th edition. Eds: Stashak TS, 2002, Lippincott Williams & Wilkins (ISBN 0-6830-7981-6), and Diagnosis and Management of Lameness in the Horse. Eds: Ross MW and Dyson SJ, 2003, WB Sounders (ISBN 0-7216-8342-8).

馬の跛行検査シリーズ
馬の跛行検査 その1
馬の跛行検査 その2
馬の跛行検査 その3
馬の跛行検査 その4
馬の跛行検査 その5
馬の跛行検査 その6
馬の跛行検査 その7
馬の跛行検査 その8
馬の跛行検査 その9
馬の跛行検査 その10
馬の跛行検査 その11
馬の跛行検査 その12
馬の跛行検査 その13
馬の跛行検査 その14
馬の跛行検査 その15







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