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馬の跛行検査7:後肢の屈曲試験

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後肢の屈曲試験(Hindlimb flexion test)について

屈曲試験は、患肢のある部位を一定時間強く屈曲させた後、すぐさま直線上を速歩させて(12~15m)、基線グレードからの一時的な跛行の悪化(Temporary lameness exacerbation from baseline grade)を観察する跛行検査法です。屈曲後に跛行が悪化した場合には、屈曲部位に疼痛の原因となる一次性疾患(Primary disorder)が存在する可能性が示唆されます。屈曲試験は侵襲性が少なく(Less invasive)、簡易かつ安価に実施できることから、診断麻酔(Diagnostic anesthesia)の前に、おおまかな疼痛限局化(Pain localization)を行う手法として広く用いられています。

屈曲させる時間は15~90秒と様々で、馬が拒否する直前の強さ(100~150N)で屈曲させます。遠位肢よりも近位肢のほうが、長い時間の屈曲を要することが一般的です。馬の気性によっては、屈曲試験の反応を左右肢で比較することが有用で、その場合、健常肢を先に検査して、各馬における正常範囲内の反応の仕方を見極めて、跛行悪化度合いの有意性を判断することもあります。屈曲後に直線上を速歩させた際に、最初の1~2歩のみ跛行悪化が見られた場合は陰性反応(Negative response)、術者から速歩で遠ざかっていく間のみ跛行悪化が見られた場合は弱陽性反応(Mild positive response)、曳き手助手が患馬を反転させて、速歩で戻ってくる間も跛行悪化が見られた場合は強陽性反応(Strong positive response)とする基準が示されています。屈曲試験によって一時的に跛行悪化が生じるメカニズムとしては、関節組織の圧迫(Articular structure compression)、腱靭帯組織の緊張(Tendon/Ligament structure tension)、骨内圧および関節内圧の上昇(Increased intra-osseous/articular pressure)、痛覚受容体の活性化(Activation of pain receptor)などが挙げられています。



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後肢の遠位肢屈曲試験(Distal limb flexion test)では、片手で背側管部(Dorsal cannon)を保持しながら、もう一方の手で蹄尖を底側方向へ強く屈曲させます(上記写真)。後肢には合同相反装置(Reciprocal apparatus)があるため、球節屈曲によって飛節(Tarsal joint)および膝関節(Stifle joint)が同時に屈曲することは避けられませんが、蹄が出来るだけ地面に近い位置にくるように肢を保持して、他の関節の屈曲を最低限にすることが重要です。この屈曲試験では、遠位指骨間関節(Distal interphalangeal joint)、近位指骨間関節(Proximal interphalangeal joint)、球節関節(Fetlock joint)、屈筋腱鞘(Flexor tendon sheath)、そして球節部よりも遠位に位置する腱靭帯の疾患において陽性反応を示します。



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後肢の近位肢屈曲試験(Upper limb flexion test)では、両手で底側管部を保持して、管部が地面と平行になる高さまで充分に遠位肢を挙上させて、飛節、膝関節、股関節を強く屈曲させます(上記写真)。この手法は、俗に飛節内腫試験(Spavin test)と呼ばれますが、飛節内腫に特異的な検査法ではありません。この屈曲試験では、飛節よりも近位に位置する関節、骨、腱、靭帯の疾患において陽性反応を示します。また、両手で保持している管部の腱や靭帯にも圧迫が掛かるため、これらの組織の疾患においても陽性反応が認められる場合もあります。



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飛節伸展試験(Hock extension test)では、挙上させた後肢を出来るだけ尾側に引いた状態で、踵骨端(Point of calcaneus)に当てた手で飛節底側面から圧迫負荷を掛けることで、飛節関節を強く伸展させます(上記写真)。この手法では、膝関節に負荷を掛けないため、近位肢屈曲試験よりも飛節疾患に特異的な検査法であるとされています。また、第三腓骨筋断裂(Peroneus tertius rupture)では、この試験によって特徴的な膝関節屈曲時の飛節伸展(Tarsal extension with stifle flexion)の所見が認められます。踵骨圧迫と同時に遠位肢を内転もしくは外転させることで、飛節の内外側の軟部組織に緊張を掛ける手法が用いられる事もあります。



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膝関節屈曲試験(Stifle flexion test)では、馬の後ろに立ち、両手で下腿部を保持して、飛節が膝関節と同じ高さになるまで充分に挙上させて、球節および飛節の屈曲を最低限にしながら、膝関節を底側方向へ強く屈曲させます(上記写真)。この際には、後肢を出来るだけ尾側に引いて、股関節の屈曲させ過ぎないように注意します。この試験は、遠位&近位肢屈曲試験よりも膝関節疾患に特異的な検査法で、下腿部よりも近位に位置する関節、骨、腱、靭帯の疾患において陽性反応を示します。しかし、術者の危険を伴う手法であるため、実施に際しては患馬の気質や性格を的確に見極めることが重要です。



屈曲試験は、屈曲させた部位の疾患に対する感度が高く(High sensitivity)、偽陰性(False negative response)を示す危険は少ないことが知られていますが、特異度は低く(Low specificity)、偽陽性(False positive response)を呈する可能性があることが示唆されています。そのため、屈曲試験の結果のみで一次性疾患の疼痛限局化を行うことは困難な場合が多く、診断麻酔による跛行の改善&消失を確認して、疼痛反応と跛行発現の因果関係を証明しなくてはならない場合もあります。

Photo courtesy of Adam’s Lameness in Horses, 5th edition. Eds: Stashak TS, 2002, Lippincott Williams & Wilkins (ISBN 0-6830-7981-6), and Diagnosis and Management of Lameness in the Horse. Eds: Ross MW and Dyson SJ, 2003, WB Sounders (ISBN 0-7216-8342-8).


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