ビッコ探知機
診療 - 2022年07月30日 (土)

米国の馬臨床の場では、金属探知機ならぬ“ビッコ探知機”が使われています。
「跛行位置指定装置」(Lameness locator)と呼ばれるこの機械は、原理的には運動学的歩様解析(Kinematic gait analysis)のひとつに分類され、馬体の三箇所(頭部、臀部、右前肢)にセンサーを取り付けた状態で速歩させることで、馬体の異常な動きや非対称な動き(Abnormal/Asymmetric motion)を、ワイヤレスシステムを通して専用のコンピューター(iPadくらいのサイズ)で解析します。
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Lameness Locator. Equinosis (R). 104 E Broadway, Columbia, MO 65203. USA
このビッコ探知機を使うことで、(1)跛行が起きている肢、(2)跛行の重篤度、(3)懸跛および支跛の鑑別、という三つの要素の跛行診断を行うことができ、人間の目による視診よりも高感度に跛行を発見することが可能です。また、センサーを付けたままの状態で、通常の跛行検査(Lameness examination)の過程である屈曲試験(Flexion test)や診断麻酔(Diagnostic anesthesia)も行えるので、これらの手法による跛行の悪化(=屈曲試験における陽性反応)もしくは改善(=診断麻酔における陽性反応)を、より高感度かつ定量的に評価(Sensitive/Quantitative assessment)することができます。さらに、購入前検査(Pre-purchase examination)における歩様検査のように、馬が跛行していないことを客観的に証明(Objective proof)する手段としても有効であると言えます。

これまで馬の歩様解析と言えば、トレッドミル上で運動している馬体の動きを高速カメラで読み込む手法(=運動学的歩様解析)や、設地型もしくは蹄鉄埋め込み型の圧迫センサー(Stationary or in-shoe pressure sensor)によって地面反力(Ground reaction force)を測定する手法(=力学的歩様解析:Kinetic gait analysis)が用いられてきましたが、設備が大型かつ高価で、準備や使用に手間と時間が掛かることから、臨床症例への応用は限られていました。しかし、このビッコ探知機では、大掛かりな設備が必要なく、通常の跛行検査と併行して実施できるという利点があり、今後は多くの馬病院に導入されていくようになるのかもしれません。
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